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林野庁

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第1部 第3章 第3節 木材産業の動向(2)

(2)需要者ニーズへの対応に向けた木材産業の取組

(品質・性能の確かな製品の供給)

近年、木造建築物の品質・性能に対する消費者ニーズが高まっており、品質・性能の確かな木材製品の供給が求められるようになっている。

建築現場においては、柱やはり継手つぎて仕口しぐち(*145)などを工場で機械加工した「プレカット材」が普及している。プレカット材は、部材の寸法が安定し、狂いがないことを前提に加工するため、含水率の管理された人工乾燥材(*146)や集成材が使用される。

また、木材の品質・性能については、「日本農林規格等に関する法律(*147)」に基づく「日本農林規格(JAS)」として、製材、集成材、合板、フローリング、CLT(直交集成板)、接着重ね材、接着合せ材等の12品目(*148)の規格が定められている。JAS制度では、登録認証機関(*149)から製造施設や品質管理及び製品検査の体制等が十分であると認証された者(認証事業者)が、自らの製品にJASマークを付けることができる(*150)。

木材の新たな需要先として非住宅分野等の大規模な建築物の木造化が期待されているが、このような建築物には、設計時に構造計算が求められる。近年高まっている住宅の品質・性能に対する消費者ニーズに加えて、非住宅分野等への木材利用の拡大を図るためにも、このような品質・性能の確かな部材としてのJAS製品等の供給体制の整備を着実に進めていくことが必要である。林野庁では、JAS構造材の積極的な活用を促進するため、平成29(2017)年度から「JAS構造材活用拡大宣言」を行う建築事業者等の登録及び公表による事業者の見える化及びJAS構造材の実証支援を実施している。


(*145)「継手」とは、2つの部材を継ぎ足して長くするために接合する場合の接合部分で、「仕口」とは、2つ以上の部材を角度をもたせて接合する場合の接合部分をいう。

(*146)建築用材等として使用する前に、あらかじめ人工乾燥装置を用いて乾燥させた木材。乾燥させることにより、寸法の狂いやひび割れ等を防止し、強度を向上させる効果がある。

(*147)「日本農林規格等に関する法律」(昭和25年法律第175号)

(*148)製材、枠組壁工法構造用製材及び枠組壁工法構造用たて継ぎ材、集成材、直交集成板、単板積層材、構造用パネル、合板、フローリング、素材、接着重ね材、接着合せ材、接着たて継ぎ材。CLT(直交集成板)については、第3節(3)202-204ページを参照。

(*149)ISO/IECが定めた製品の認証を行う機関に関する基準等に適合する法人として、農林水産大臣の登録を受けた法人(ISOは「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」、IECは「国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)」)。

(*150)「日本農林規格等に関する法律」第13条第1項



(需要者のニーズに応じた製品の安定供給)

大手住宅メーカー等においても国産材を積極的に利用する動きが見られる中、実需者(住宅メーカーや工務店)のニーズに応じた製品を安定的に供給する体制の構築が求められている。そのためには、実需者の求める需要規模に応じた木材加工・流通体制の整備を進めることが重要であり、製材業者等はそれぞれの規模ごとの強みを活かして、(ア)大型工場単独での規模拡大、(イ)複数の工場との連携による生産の効率化、(ウ)地域ごとに木材生産者、製材工場、工務店等が連携して、特色のある家づくりを行う取組(*151)等を進めている。

林野庁では、木材製品の安定的・効率的な供給体制構築に資する加工・流通施設の整備、地域の林業・木材生産者から工務店等の関係者までが連携し地域で流通する材を利用した家づくり(「顔の見える木材での家づくり」)や付加価値の高い内装材、家具、建具等の利用拡大に向けた取組に対して支援を行っている。


(*151)第2節(2)176-177ページを参照。



(原木の安定供給体制の構築に向けた取組)

このような中で、国産材を主な原料とする、年間素材消費量が数万m3から10万m3を超える規模の大型の製材・合板工場等の整備が進み(資料3-39)、また、木質バイオマスエネルギー利用が拡大の傾向をみせている。木材産業においては安定的かつ効率的な原木調達が更に重要となっており、原木の安定供給体制の構築に向けて、林野庁では、川上側である素材生産業者や森林組合による原木供給力の増大を進める取組と併せて、原木流通の効率化や需給情報の共有を推進するための取組を行っている。

資料3-39 近年整備された大型木材加工工場及びCLT工場の分布状況

具体的には、製材・合板工場等、素材生産業者、木材流通業者等との原木安定供給のための協定締結の推進、川上(供給側の森林所有者、素材生産業者)、川中(需要側の工場等)及び川下(国産材製品の実需者である木造建築物を建設しようとする工務店・住宅メーカー等)のマッチングや需給情報の共有化の推進により、原木の安定供給体制の構築を図ることとしている(*152)。

このほか、林野庁では、国有林野事業等による立木や素材等の協定取引を進めている(*153)。

また、全国において、持続的な林業や将来にわたる原木の安定供給に向けて、木材の生産、流通、利用等に関わる事業者が、それぞれ協力金を拠出して基金等を造成し、再造林経費を助成する仕組みを創設する動きもみられる。


(*152)安定供給体制の構築に向けた取組の現状と今後の課題については、「平成27年度森林及び林業の動向」第1章第3節18-37ページを参照。

(*153)第4章第2節(2)229-230ページを参照。



(ICTによる流通全体の効率化)

我が国の木材の加工流通コストは、流通の合理化が進んでいないこと等により、海外に比べて割高という状況にある。

流通全体の効率化を図ることが必要であり、マーケットインの発想に基づき木材製品の需要に応じて木材を迅速かつ有利に供給できるように、素材生産事業者等の川上から工務店等の川下までのサプライチェーンを通じた需給情報の共有が求められる。これにより、丸太の採材や在庫管理、木材の運搬等の効率化や、生産・流通の各段階における製品の付加価値の向上が可能となる。また、情報の整理及び集約が図られることにより、サプライチェーンに携わる多様な担い手や消費者が、森林の機能、成長段階、利用状況等を把握することも可能となる(事例3-8)。

事例3-8 オンラインによる原木販売で新たな流通経路を開拓

京都府京丹波町きょうたんばちょうは、令和2(2020)年9月にオンライン原木市場「原木京丹波」を開設し、ICTを活用した原木の直接販売を開始した。京丹波森林組合と連携してシステムを運用し、新たな流通経路の開拓と林業の収益改善を図っている。

「原木京丹波」で販売される京丹波産の原木は、まず森林組合の土場で樹種や品質別に仕分け・管理され、原木市場などの流通価格を参考に価格が決定される。そしてロットごとの写真と共に、材長や径級、品質程度等の情報がインターネット上に公開され、誰もが原木市場を訪れずにパソコンやスマートフォンから原木を確認することが可能となる。会員のみ原木を購入することができるが、購入者が土場まで直接原木を引き取りに行くことで、運送費や市場での椪積はいづみ(注)料、人件費などの中間コストが削減されるシステムである。この販売方法により、原木の品質に合った需給のマッチングや流通の効率化が進むことが期待されている。

京丹波町では、今後、地域内で少量出材するマツや広葉樹も扱うほか、一般ユーザーが住宅を建設する際の原木選定に貢献する等、「原木京丹波」の活用の幅を広げることを計画している。

注:集材した丸太を同じ材積や同じ長さごとに仕分けして積む作業。

資料:令和2(2020)年10月23日付け木材新聞10面


そのためには、情報通信技術(ICT)の利活用による、森林調査及び施業計画の高度化等の森林資源のデータベースの整備やスマート林業を推進するとともに、それを基盤として川上から川下までの事業者が相互に需給情報を共有でき、互いに連携することのできる情報共有プラットフォームの構築を図っていく必要がある(資料3-40)。

資料3-40 ICTを活用したサプライチェーンの構築イメージ

そのようなプラットフォームの構築に向けて、林野庁では、流通の各段階におけるサプライチェーン構築に意欲のある事業者同士のマッチングの推進や需給情報の共有化の取組を支援している。


お問合せ先

林政部企画課

担当者:年次報告班
代表:03-3502-8111(内線6061)
ダイヤルイン:03-6744-2219

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