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林野庁

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第2部 平成29年度 森林及び林業施策

概説

1 施策の重点(基本的事項)

「森林・林業基本計画」(平成28(2016)年5月閣議決定)のほか、「総合的なTPP等関連政策大綱」(平成29(2017)年11月24日TPP等総合対策本部決定)による施策を始めとする以下の森林・林業施策を積極的に展開した。

また、「未来投資戦略2017」(平成29(2017)年6月9日閣議決定)や「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29(2017)年6月9日閣議決定)等において、林業の成長産業化の実現と森林の適切な管理のための仕組みを検討するとされたことを踏まえ、意欲と能力のある林業経営者に林業の経営を託し、自然的条件が悪く、経済ベースで活用できない森林については、市町村自らが経営又は管理(以下「公的管理」という。)を行う「新たな森林管理システム」を構築するための検討を行った。

加えて、森林環境譲与税(仮称)については、「新たな森林管理システム」の下で市町村が行う公的管理の経費等に一部を充当する方向で検討を行った。


(1)森林の有する多面的機能の発揮に関する施策

森林の有する多面的機能を将来にわたって持続的に発揮させていくため、面的なまとまりをもった森林経営の確立、再造林等による適切な更新の確保、適切な間伐等の実施、路網整備の推進、多様で健全な森林への誘導、地球温暖化防止策及び適応策の推進、国土の保全等の推進、研究・技術開発及びその普及、山村の振興及び地方創生への寄与、国民参加の森林(もり)づくりと森林の多様な利用の推進、国際的な協調及び貢献に関する施策を推進した。

特に、「森林法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第44号)を踏まえ、森林所有者・境界の明確化やICTを活用して効率的に施業集約化を進めるための仕組みづくりを推進した。

また、再造林等による適切な更新の確保のため、市町村による造林の実施状況の把握を推進するなど、伐採及び造林届出制度の適正な運用を図るとともに、市町村の森林・林業行政をサポートする「地域林政アドバイザー制度」を創設し、市町村の体制整備を推進した。

さらに、自然災害に対する山地防災力の強化のため、荒廃山地の復旧整備や予防治山対策による事前防災・減災対策を推進するとともに、平成29(2017)年の九州北部豪雨等による流木災害の発生を受けて実施した緊急点検により選定した緊急的・集中的に流木対策が必要な地区において、流木捕捉式治山ダムの設置や間伐等の森林整備等の総合的な流木対策を推進した。

加えて、「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」(平成28年法律第48号)(クリーンウッド法)の施行及び同法に基づく木材関連事業者の登録開始を踏まえ、合法性確認に資する生産国の関連情報の収集や違法伐採関連の情報提供、登録促進のための取組を実施した。


(2)林業の持続的かつ健全な発展に関する施策

林業の持続的かつ健全な発展を図るため、望ましい林業構造の確立、人材の育成及び確保等、林業災害による損失の補塡に関する施策を推進した。

特に、効率的な作業システムによる生産性の向上のための技能者の育成、高性能林業機械の導入の推進、林業労働力の確保のための林業への就業前の青年に対する給付金の給付、「緑の雇用」事業等による人材の育成及び確保等を推進した。


(3)林産物の供給及び利用の確保に関する施策

林産物の供給及び利用を確保するため、原木の安定供給体制の構築、木材産業の競争力強化、新たな木材需要の創出、消費者等の理解の醸成、林産物の輸入に関する措置に関する施策を推進した。

また、7月の日EU・EPAの大枠合意及び11月のTPP11の大筋合意を踏まえ改訂した「総合的なTPP等関連政策大綱」に掲げられている、木材製品の国際競争力を強化するため、路網整備、高性能林業機械の導入、加工施設の大規模化・高効率化、高付加価値品目への転換、木材製品の消費拡大を推進した。


(4)東日本大震災からの復旧・復興に関する施策

東日本大震災により被災した治山施設や林道施設、地震により発生した崩壊地や被災した海岸防災林等の復旧及び再生を実施するとともに、放射性物質の影響に対応した木材製品等の安全証明体制の構築、安全な特用林産物の供給確保のための支援、被災地域の林業・木材産業の復興を図るための地域で流通する木材等の活用を推進した。


(5)国有林野の管理及び経営に関する施策

国土保全等の公益的機能の高度発揮に重要な役割を果たしている国有林野の特性を踏まえ、公益重視の管理経営を一層推進した。

また、林業の成長産業化を推進するため、森林施業の低コスト化の推進、技術の普及等を実施するとともに、「国民の森林(もり)」としての管理経営と国有林の所在する地域における産業の振興等のための国有林野の活用を推進した。特に、平成28年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」(平成28年3月30日明日の日本を支える観光ビジョン構想会議)を踏まえ、観光資源としての潜在的魅力がある「レクリエーションの森」を「日本美(うつく)しの森お薦め国有林」として選定し、その普及等に努めた。


(6)団体の再編整備に関する施策

森林組合等に対して、国民や組合員の信頼を受けて地域の森林施業や経営の担い手として重要な役割を果たすよう、事業・業務執行体制の強化、体質の改善に向けた指導を行った。


2 財政措置

(1)財政措置

諸施策を実施するため、表のとおり林業関係の一般会計予算及び東日本大震災復興特別会計予算の確保に努めた。


(2)森林・山村に係る地方財政措置

「森林・山村対策」、「国土保全対策」等を引き続き実施し、地方公共団体の取組を促進した。

「森林・山村対策」としては、

(ア) 公有林等における間伐等の促進

(イ) 国が実施する「森林整備地域活動支援交付金」と連携した施業の集約化に必要な活動

(ウ) 国が実施する「緑の雇用」現場技能者育成推進事業等と連携した林業の担い手育成及び確保に必要な研修

(エ) 民有林における長伐期化及び複層林化と林業公社がこれを行う場合の経営の安定化の推進

(オ) 地域で流通する木材の利用のための普及啓発及び木質バイオマスエネルギー利用促進対策

(カ) 市町村の森林所有者情報の整備

等に要する経費等に対して、地方交付税措置を講じた。

「国土保全対策」としては、ソフト事業として、U・Iターン受入対策、森林管理対策等に必要な経費に対する普通交付税措置、上流域の水源維持等のための事業に必要な経費を下流域の団体が負担した場合の特別交付税措置を講じた。また、公の施設として保全及び活用を図る森林の取得及び施設の整備、農山村の景観保全施設の整備等に要する経費を地方債の対象とした。

また、上記のほか、森林吸収源対策等の推進を図るため、林地台帳の整備、森林所有者の確定等、森林整備の実施に必要となる地域の主体的な取組に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じた。


3 税制上の措置

林業に関する税制について、平成29(2017)年度税制改正において、

(ア) 山林に係る相続税の納税猶予制度について、5ha未満の一定の山林の適用対象への追加、身体障害等により計画継続困難となった際の経営委託による継続、災害により経営規模の拡大が困難となった際の取組期間の延長を行うこと(相続税)

(イ) 相続税の財産評価の適正化のため、実態を踏まえ、杉及びひのきの現行評価額を全体的に引き下げ、松を個別評価とすること(相続税)

(ウ) 森林法等の一部改正に伴い、見直し後の認定基準による森林経営計画、国立研究開発法人森林研究・整備機構(旧国立研究開発法人森林総合研究所)等に対し、現行措置を引き続き適用すること(複数税目)

(エ) 森林組合等を含む協同組合等が有する普通出資に係る受取配当等について、益金不算入の特例措置を創設すること(法人税)

(オ) 林業用軽油に係る石油石炭税(地球温暖化対策のための課税の特例による上乗せ分)の還付措置の適用期限を3年延長すること(石油石炭税)

(カ) 輸入・国産林業用A重油に係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を3年延長すること(石油石炭税)

(キ) 中小企業投資促進税制について、対象資産の見直しを行った上、適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

(ク) 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用期限を2年延長すること(所得税・法人税)

(ケ) 森林組合等の貸倒引当金の特例について、割増率の引下げを行った上、適用期限を2年延長すること(法人税)

(コ) 中小企業者等に係る法人税の軽減税率の特例の適用期限を2年延長すること(法人税)

(サ) 独立行政法人農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税率の軽減措置の適用期限を2年延長すること(登録免許税)

等の措置を講じた。


4 金融措置

(1)株式会社日本政策金融公庫資金制度

株式会社日本政策金融公庫資金の林業関係資金については、造林等に必要な長期低利資金について、貸付計画額を162億円とした。沖縄県については、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業関係貸付計画額を60億円とした。

森林の取得や木材の加工及び流通施設等の整備を行う林業者等に対する利子助成を実施した。

東日本大震災により被災した林業者等に対する利子助成を実施するとともに、無担保・無保証人貸付けを実施した。


(2)林業・木材産業改善資金制度

経営改善等を行う林業者・木材産業事業者に対する都道府県からの無利子資金である林業・木材産業改善資金について、貸付計画額を39億円とした。


(3)木材産業等高度化推進資金制度

木材の生産又は流通の合理化を推進するために必要な資金等を低利で融通した。

その貸付枠は、600億円とした。


(4)独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証制度

林業経営の改善等に必要な資金の融通を円滑にするため、独立行政法人農林漁業信用基金による債務保証の活用を促進した。

東日本大震災により被災した林業者・木材産業者に対する保証料等の助成を実施した。


(5)林業就業促進資金制度

新たに林業に就業しようとする者の円滑な就業を促進するため、新規就業者や認定事業主に対する研修受講や就業準備に必要な資金の林業労働力確保支援センターによる貸付制度を通じた支援を行った。

その貸付枠は、5億円とした。


5 政策評価

効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「農林水産省政策評価基本計画」(5年間計画)及び「平成29年度農林水産省政策評価実施計画」により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)や事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を推進した。



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