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林野庁

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第1部 第 IV 章 第3節 木材利用の動向(5)

(5)消費者等に対する木材利用の普及

(「木づかい運動」を展開)

林野庁は、平成17(2005)年度から、広く一般消費者を対象に木材利用の意義を広め、木材利用を拡大していくための国民運動として、「木づかい運動」を展開している。同運動では、ポスター・パンフレット等による広報活動や、国産材を使用した製品等に添付し木材利用をPRする「木づかいサイクルマーク」の普及活動等を行っている(*240)。「木づかいサイクルマーク」は、平成29(2017)年3月末現在、393の企業や団体で使用されている。

また、毎年10月の「木づかい推進月間」を中心として、シンポジウムの開催や広報誌等を活用した普及啓発活動を行っており、各都道府県においても地方公共団体や民間団体により様々なイベントが開催されている。

平成27(2015)年度からは、新たな分野における木材利用の普及や消費者の木材利用への関心を高めることを目的として、「ウッドデザイン賞」が開始された。同賞は、木の良さや価値を再発見させる建築物や木製品、木材を利用して地域の活性化につなげている取組等について、特に優れたものを消費者目線で評価、表彰するもので、3回目となる平成29(2017)年度は、250点が受賞した(事例 IV -13)。展示会や百貨店等における受賞作品の展示、コンセプトブックの作成等により同賞の周知が図られている。また、林業・木材産業関係者とインテリア・デザイン関係者など、同賞をきっかけとした新たな連携もみられており、木材利用の拡大につながることが期待されている。

事例 IV -13 地域の活性化につながる木材利用の取組

3回目となる「ウッドデザイン賞」では、東日本旅客鉄道株式会社等による「ノーザンステーションゲート秋田プロジェクト」が農林水産大臣賞(最優秀賞)を受賞した。このプロジェクトは、秋田駅周辺施設のリニューアルプロジェクトであり、民間事業体、大学、行政が地域と連携して、駅と自由通路の一体的な木質化を実施するとともに、内装や家具に県産材をふんだんに用いた待合ラウンジを設置した。県産材を活用して「秋田らしさ」を、デザインにより木の持つ「親しみやすさ」や「心地よさ」をうまく引き出したもので、木に囲まれ、木を楽しみ、木に癒される場づくりを高いレベルで実現して集客効果にも寄与している点が評価された。

秋田県では、「あきた県産材利用推進方針」に基づき、秋田空港施設の木質化や秋田駅バスターミナルの木造化等も行われてきた。他の地域においても、駅や空港、鉄道車両等に地域材を活用する取組が数多くみられる(注)。このような施設等における地域材利用には、国内外の観光客に対する高い訴求効果があるため、木材需要の拡大や観光客誘致を通じた地域経済への貢献に加えて、国産材利用の意義の発信にもつながることが期待される。

なお、このほかの受賞作品では、商業施設や教育施設等における木の特性を引き出した空間づくりや、木造の床遮音技術の開発など、今後の木材利用の拡大につながる技術・研究もみられた。


注:秋田空港の木質化、秋田駅バスターミナルの木造化について詳しくは「平成25年度森林及び林業の動向」の173ページを参照。鉄道車両の内装木質化について詳しくは「平成26年度森林及び林業の動向」の162ページを参照。


駅と自由通路を一体的に木質化
駅と自由通路を一体的に木質化

待合ラウンジの内装や家具にも県産材を多用
待合ラウンジの
内装や家具にも県産材を多用
資料IV-50 《各種施設等での木材利用の事例》

(*240)パンフレット(平成29(2017)年にリニューアル)の内容など、「木づかい運動」に関する情報は、林野庁ホームページ「木づかい運動 ~国産材使って減らそうCO2~」を参照。



(「木育(もくいく)」の取組の広がり)

「木育(もくいく)」とは、子どもから大人までを対象に、木材や木製品との触れ合いを通じて木材への親しみや木の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学んでもらうための教育活動であり(*241)、全国で取組が広がっている。木のおもちゃに触れる体験や木工ワークショップ等を通じた木育活動や、それらを支える指導者の養成のほか、関係者間の情報共有やネットワーク構築等を促すイベントの開催など、様々な活動が行政や木材関連団体、NPO、企業等の幅広い連携により実施されている。

林野庁においても、木育(もくいく)の推進に資する各種活動への支援を行っている。これらの支援により、木材に関する授業と森林での間伐体験や木工体験を組み合わせた小中学生向けの「木育(もくいく)プログラム」が開発され、平成28(2016)年度までに、延べ274校で実施されている。また、地域における木育(もくいく)推進のための活動である木育(もくいく)円卓会議が毎年各地で開催され、木育(もくいく)の普及や地域での具体的な取組の促進につながっている。このほか、例年1回開催されている「木育(もくいく)サミット」は平成30(2018)年2月に第5回目を、「木育(もくいく)・森育楽会(もりいくがっかい)」は平成29(2017)年12月に第3回目を迎え、木育(もくいく)の最新の取組に関する意見交換等が行われており、関係者間の情報共有やネットワーク構築につながっている。また、実践的な木育(もくいく)活動の一つとして、木工体験等のきっかけの提供により、木材利用の意義に対する理解を促す取組等も行われている。例えば、日本木材青壮年団体連合会等は、児童・生徒を対象とする木工工作のコンクールを行っており、平成29(2017)年度には約25,000点の応募があった。


(*241)木育に関する情報は「木育ラボ」ホームページ、「木育.jp」ホームページを参照。



コラム 地域材の特性を活かした高付加価値利用に向けた取組

奈良県川上村の高齢級スギ林内の様子
奈良県川上村の高齢級スギ林内の様子
木取りのイメージ
木取りのイメージ
完成した「スギバイオリン」
完成した「スギバイオリン」

奈良県の主に吉野川上流を中心とした地域では、古くから年輪幅が均一で狭く、節の無い木材を生産し(注)、酒樽や和室の内装等に向けた高級材を供給してきた。奈良県森林技術センターでは、県産スギ材の強度と美しい木目を活かした新たな用途として楽器に着目し、その振動特性等を調べるとともに、特性を活かしたバイオリンを開発した。

県産スギ材の利用に向けては、本格的な楽器としての性能を重視し、バイオリンを構成する主な部品のうち、一般的にスプルース(トウヒ)が使われる「表板(おもていた)」、「バスバー」、「魂柱(こんちゅう)」をターゲットとした。樹齢200年生以上、天然乾燥10年以上などの厳しい条件に適った上、バイオリン製作家の選別を経た県産スギ材について、試験を行ったところ、スプルースに劣らない振動特性や接着性能が確認され、このうち最も良い値であった材料を用いてバイオリンが製作された。製作されたバイオリンについて音響試験を行った結果、スプルースのものと同程度の音響特性を有していることが明らかとなった。開発されたバイオリンを使って、これまでに各地で演奏会が開催されている。同センターでは、今後、商品開発に取り組み、新たな需要を開拓していくこととしている。

欧米では楽器用の木材は建材用より高値で取引されており、このような本格的な楽器の製作は地域材の高付加価値利用につながる取組の一つとなっている。

また、国内の他の地域においても、大工の技術の活用や松くい虫被害材の使用など、特色ある楽器製作を通じた地域材利用の取組がみられる。


注:密植や繰り返し行われる間伐等が特徴。吉野林業については「平成28年度森林及び林業の動向」の108ページを参照。

資料:奈良県プレスリリース「約270年生の県産材を用いた「スギバイオリン」を作っています!!!」(平成29(2017)年1月30日付け)、平成29(2017)年3月1日付け産経新聞、平成29(2017)年2月20日付け毎日新聞、平成29(2017)年10月1日付け河北新報、平成29(2017)年12月28日付け読売新聞10面



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