昨年の道内木材市況は、円高・ユーロ安などによる輸入材との競合が顕著となり、また製紙工場の原料調達引き締めも加わり例年にないほど厳しいものでした。一方、再生可能エネルギーの固定価格買取制度がスタートし、未利用木材の木質バイオマス利用への期待が高まったほか、公共建築物等への地域材利用促進では国はもとより、道に続き多くの市町村が地域材利用推進方針を策定するなど、今後の木材利用推進への足がかりもありました。
本年は、そうした状況を踏まえ、これまで以上に関係者との連携、即ち「総意」と「創意」を重視し北海道の森林・林業の再生に取り組んで参りたいと考えています。昨年は具体の取り組みを行う森林・林業再生の実証元年と位置づけましたが、今年はその成果を多くの方と共有する「前進の一年」にしたいと思います。需要があってこその供給です。昨年の反転攻勢をすべくまずは木材需要拡大に向けた取り組みが重要です。
国有林は本年4月からこれまでの企業特別会計から一般会計による事業を行います。公益重視の管理経営の一層の推進と森林・林業の再生への貢献という国有林に求められる役割の発揮を念頭に、これまで以上に具体的な事業を展開しその成果を明らかにしつつ、民有林との連携を強化する考えです。
このため、総合振興局・振興局を含めた道や市町村との情報交換の推進、森林共同施業団地の設定に基づく民国一体となった路網整備や森林施業の実施、フォレスターの育成を通じた地域の森林づくりや林業振興に貢献していきます。また、農林業に深刻な被害を与えているエゾシカ対策については、引き続き森林官等による影響調査、林道除雪による捕獲支援、市町村鳥獣被害防止協議会の行う被害対策への資金拠出、道・市町村とも連携した一斉捕獲などに取り組みます。
森林・林業の再生については、これまでの成果や課題を検証し改善・改革を進めます。地域での意見交換会や検討会で出された意見なども参考にし発展的な議論により問題解決や新たな課題・目標に取り組むという現場力を推進します。
木材生産は、列状間伐・高性能林業機械・壊れにくい森林作業道を組み合わせた作業システムを徹底するとともに、森林作業道の作設技術の向上に努めるほか、北海道のなだらかな地形に適応した林業専用道を森林作業道と組み合わせ積極的に作設します。
木材販売は、ニーズに応じた生産・販売を基本に、定時・定量・定価で安定的に供給するシステム販売をさらに改善しつつ推進し、山元から工場まで一環する流れを拡充するとともに、引き続き企画提案の公表など透明性の向上や木質バイオマスをはじめとする新たな需要先への供給にも力を入れます。
造林関係では植栽2年目となるコンテナ苗の生育状況などを公表するとともに、全署での植栽に向け、今年も植栽箇所、本数を増やします。さらに複層林型への誘導を図る中で確実な更新を目指す誘導伐を進め、誘導伐跡地への更新にはコンテナ苗を積極的に活用することで、環境への負荷が小さく低コストで確実に更新が図られる森林作業体系の確立に取り組みます。また、森林資源の把握にあたっては、航空レーザー計測を活用した先導的な技術の実証も進めていく考えです。これらを通じ、山元への利益還元を進め、本来の「伐ったら植える林業」の確立を目指します。
公益重視の一層の推進については、地域管理経営計画の策定に当たっての地元意見交換会や事業の事前説明を実施し、意見や関心事項をしっかりと把握することやチェックシートを活用して濁水防止に配慮した森林施業や土木工事を行うなど、地域の要望や期待に応える国有林野の管理経営を推進します。また、天然林をはじめとする森林の施業や管理にあたっては、生物多様性の保全に向けた取り組みを更に進めるとともに、研究機関と連携した実証的な取り組みにもチャレンジします。これらを通じ地域の中での国有林の役割を十全に発揮し地域から評価され、支持される国有林を目指します。
昨年は、春先に中山峠の230号や霧立峠の239号の主要国道における地滑り災害の発生をはじめ道内各地で自然災害に見舞われました。道民の安全・安心を確保するため、関係機関や市町村と連携し、被害地の早期復旧や新たな災害発生の予防、自然災害に強い森林の造成等を図る治山事業を本年も確実に実施して参ります。
国民の皆様からお預かりしている国有林野を元気な姿で次世代に引き継ぐべく、公益重視の管理経営を一層推進するとともに、組織・技術力・資源を活用して、林業技術の開発普及、人材育成をはじめとした民有林への指導やサポートなど我が国の森林・林業の再生に貢献し、国民の皆様から信頼される国有林となるべく全力で取り組んで参る考えですので、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
皆様方の益々のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げまして、年頭のご挨拶といたします。