国有林・准フォレスターによる民有林支援活動
我が国の森林・林業を早急に再生していくための指針「森林・林業再生プラン」(平成21年12月)の実現に向けた貢献の1つとして、国有林野事業は、その組織・技術力・資源を活用し、各種森林技術者となる人材の育成や市町村の森林・林業行政への支援を行うことが求められています。
これに応えるため、北海道森林管理局では、平成23年度から「准フォレスター研修」を実施するとともに、准フォレスター等による民有林への支援活動をスタートさせました。
このコラムでは、各地の准フォレスターから届いた民有林支援活動に関する話題を定期的に紹介していきます。
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~上川南部流域における森林管理署の民有林支援~
民・国の准フォレスターの連携で地域の林業を盛り上げたい
上川南部森林管理署 准フォレスター 安達 弘一

東京大学演習林の桜並木から芦別岳を望む
上川南部森林管理署の管内概要
上川南部森林管理署は南富良野町に位置し、上川南部流域の南側部分を管轄しています。その区域は上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町、占冠村の1市3町1村に及びます。
管内には、石狩山地、夕張山地および日高山脈が接する山岳地帯と、畑作地帯である富良野盆地が広がっています。また、山岳地帯は、日本海に注ぐ石狩川水系空知川と太平洋へ注ぐ鵡川水系鵡川の源流部となっています。

日本有数の人造湖「かなやま湖」
このような北海道らしい風景が広がる管内は、道内屈指の観光地域の1つとなっており、ラベンダー畑、テレビドラマ「北の国から」の主たるロケ地である「麓郷」地区、東京大学北海道演習林の桜並木、絶景が見られる「雲海テラス」など数多くの観光スポットがあります。
国有林は、中富良野町を除く1市2町1村に広がっており、面積は11万5千ヘクタールと、管内面積の約7割を占めています。
その中には十勝岳、芦別岳、夕張岳などの雄大な山々が多く、優れた自然に恵まれていることから、大雪山国立公園や富良野芦別道立自然公園に指定されている地域が多くあります。
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原始ケ原にある「不動の滝」
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また、自然景観に優れ、森林浴や自然観察、野外スポーツに適した森林として林野庁が選定した「レクリエーションの森」(自然休養林、自然観察教育林、森林スポーツ林、野外スポーツ地域、風致探勝林、風景林など)も多数あり、四季折々の景色のなかで森林レクリエーションを楽しむことができます。
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上川南部流域の「准フォレスター」として
私は平成24年度の准フォレスター研修を修了し、国有林の「准フォレスター」として、市町村の森林づくりのマスタープランを確実に実行していくために組織されている「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」に参画させていただくなど、民有林への支援業務を担当しています。
これらの仕事を進めていく上で、民有林での各種森づくりの方法や、地域の森林・林業を取り巻く状況などを知るのは大変重要であることから、地域での森林・林業に関する各種会議等に積極的に参加させていただくなど日々の情報収集を心がけています。

占冠村との行政連絡会議

東京大学演習林の視察
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南富良野町森林整備計画実行管理推進チーム

ウダイカンバの先枯れ被害現地打合せ
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これらに基づき、町内の林業関係者間では、当該事業箇所や規模、作業時期についての情報交換や調整、現地検討等を行っており、国有林の准フォレスターとしても、民国の調整役として連携した取り組みを行っています。

南富良野町との情報交換会
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地域の准フォレスターとの連携で取組のさらなる活性化
地域の森林・林業を盛り立てて行くには、同じ地域で活動する准フォレスターが連携していくことが重要です。
そのため、上川南部地域では、民有林の准フォレスターと連携し、勉強会の企画立案や実施、相互の研修会・検討会への積極的な参加を通じて交流を深め、国有林・道有林・民有林の所管を越え、施業方法やその問題点課題などについて様々な情報交換を行っています。
平成25年には 「木質バイオマス利用に向けた」勉強会を開催し、南富良野町森林組合の取組について説明を受け、各准フォレスターは今後の木質バイオマスエネルギー利用の可能性や、その実現に向け准フォレスターとして「何をしていくべきか?」、「どう連携するか?」、「支援できることは何か?」などについて論議しました。
このような場を持つことは大変有意義であり、これからも継続し、活動をさらに活性化させていきたいと考えています。
「お魚を殖やす森づくり」を通じて「上・下流の連携強化」を図る
毎年9月中旬、上川南部森林管理署・胆振東部森林管理署の共催による「お魚を殖やす森づくり」植樹祭を鵡川源流部である占冠村トマム地区において開催しています。
「お魚を殖やす植樹運動」は、昭和63年に北海道漁協女性部連絡協議会の提唱で始まったもので、当森林管理署では、「豊かな海洋の漁業資源は上流部と水資源造成が重要」との考えに立ち、平成12年から鵡川漁業協同組合女性部のみなさんや上川総合振興局南部森林室、自治体関係者、地元小学生らと共に、植樹活動を行っています。
この活動は、鵡川を介し上流下流の関係となる胆振東部流域の民・国の准フォレスターに留まらず、多くの民有林関係者、そして漁業関係者のみなさんとの連携にもつながっており、このような意味においても重要なものとなっています。
森林の共同施業による効率的な森林整備の推進に向けて
南富良野町と上川南部森林管理署では、町有林と国有林が一体なった森林整備を進めるため、平成24年3月に「南富良野町森林共同施業団地 幾寅・落合地区森林整備推進協定」を締結しました。
本協定は、森林の有する水源かん養、生物多様性の保全、木材生産など多様な機能を十分に発揮させるため、南富良野町と上川南部森林管理署が隣接する森林において森林共同施業団地を設定し、適切な森林整備及びこれに必要な路網、土場の相互利用等の事項を定め、町有林と国有林が一体となって計画的かつ効率的な森林整備を推進することなどを目的とし、協定期間は2年です。

この2年間、両者では運営会議を開催し、町有林と国有林の一体整備を進めるための情報共有や調整を行ってきました。 また、国有林では路網の相互利用のための、林道の開設準備などを行ってきています。
間もなく、協定期間が終了することから、現在、双方の事業箇所精査を行うとともに、事業実施年度の調整、路網作設計画は双方にメリットがある線形を検討しています。また、林地残材のバイオマス資材利用の可能性についても検討し、その更新に向けて準備を進めています。
.次期協定が、さらに発展したステージを実現するようなものにしていきたいと考えているところです。
地域の森づくりへのさらなる貢献を目指して

私は国有林の准フォレスターとなって間もなく2年となります。
この間、民有林との協力・連携を進めていくために、各種取組を進めているところですが民有林と国有林の各種事業体系や制度の違い、国有林にはない補助金制度などについてさらに理解を深めていくことの必要性を痛感しているところです。
また、関係者との一層の情報交換や信頼関係のさらなる構築も同時に進めていかなければならないと考えています。
今後も、微力ではありますが、関係機関と協力・連携をさらに進め、国有林の准フォレスターとして何ができるのか、何をすべきなのかを考え、地域の森づくりに貢献していくことができればと思っています。
上川南部森林管理署 准フォレスター 安達 弘一
北海道空知郡南富良野町字幾寅
電話: 050-3160-5750
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