国有林・准フォレスターによる民有林支援活動
我が国の森林・林業を早急に再生していくための指針「森林・林業再生プラン」(平成21年12月)の実現に向けた貢献の1つとして、国有林野事業は、その組織・技術力・資源を活用し、各種森林技術者となる人材の育成や市町村の森林・林業行政への支援を行うことが求められています。
これに応えるため、北海道森林管理局では、平成23年度から「准フォレスター研修」を実施するとともに、准フォレスター等による民有林への支援活動をスタートさせました。
このコラムでは、各地の准フォレスターから届いた民有林支援活動に関する話題を定期的に紹介していきます。
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現地検討会を通じた民有林との連携
~道有林フォレスターと国有林フォレスターとの意見交換、地域現場での技術交流~
空知森林管理署 北空知支署 准フォレスター 根本 治
6月27~28日の両日、北海道庁主催の『路網・作業システム整備方針普及研修会』が開催され、私は国有林の准フォレスターとして参加させていただきました。
研修会においては、新しい知識や技術を得ると共に、多数の道有林や私有林関係者のみなさんと情報交換をさせていただく機会にも恵まれました。
今回はこの研修会をレポートします。
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路網・作業システム整備方針普及研修会とは
この研修会は、林業の収益性の向上のため、高性能林業機械の能力をフルに発揮させる中から、伐採や搬出などの作業の効率化を図るとともに、安価で丈夫な路網を作設・整備し、低コスト森林作業に対応した森林づくりを実践していくため、これらの技術等を普及啓発していくことを目的に開催されました。
約140名の参加者があり、国有林からは北海道森林管理局と近隣の森林管理署及び支署から15名が参加しました。
1日目~学識経験者等による講義

1日目は室内会議が行われ、北海道大学農学研究院の澁谷准教授による「これからの林業に必要な考え方」と、道庁関係者による「丈夫で簡易な路網整備の必要性と高性能林業機械、効率的な施業の実施のための作業システム」等に関する講義を受講しました。
この中では、「人工林を造成し育成する」これまでの施業という意味において、概ね成功してきた反面
- 林業(商い)的側面においては、保育や生産コストが木材販売収入を超えている(つまり赤字)という状況
- 今後も木材価格が劇的に上昇する可能性が低いことから、このままでは将来的にも同じ状況を招く可能性が高い
このような事態を改善するために必要な対策となる路網整備等をどのように進めていけばいいのか等について学びました。
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北海道檜山振興局の竹田検査専門官による林業専用道の開設方法に関する講義
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2日目~現地検討会

プロセッサによる作業の実演
2日目は現地検討会が行われました。
ここでは、高性能林業機械を活用して効率的な間伐作業システムを計画するため、森林作業道の新設ルートの選定と作設、高性能林業機械の性能やその特徴について、各種高性能林業機械の作業実演も交えた説明を受けました。
特に印象的だったのは、今回、作業実演を行っていた高速での木材運搬が可能な国産新型のフォワーダが国内に4台あり、うち2台がレンタル車両として保有されているということでした。
高価な高性能林業機械を事業体が導入するためには資金面でのハードルが高い場合もあることから、レンタルで導入という選択肢があることは、その普及に弾みが付くことにもつながります。

高速での木材運搬ができるフォワーダによる集材作業の実演
一方、事業体等が高性能林業機械を導入し作業システムで活用していくためには、効率的な作業計画の策定や適切な事業量の確保、そしてオペレーターの育成を高いレベルでクリアしていく必要があります。
これらの準備がなく、高価な高性能林業機械を導入しても、逆に経済的な負担となることにもなりかねません。
高性能林業機械を高い次元で活用することは、林業の収益率を改善していく上での重要なツールです。
将来的な普及や利用拡大が図られた場合には、導入に当たって、購入、レンタルという方法に加え、熟練したオペレーターが乗る高性能林業機械のチャーター等ということも可能になり、機械維持経費の低減に貢献することにもつながると考えられます。
このようなことを実現していくため、みなさんと情報共有、意見交換しながら下地を創り上げていくことが必要だと強く感じました。
道有林・准フォレスターや指導林家のみなさんと意見交換
今回の現地検討会では、地域の多数の林業関係者のみなさんと意見交換をさせていただく機会にも恵まれました。
地元の深川市や北竜町の指導林家のみなさんとは、意見交換する中から当支署管内の国有林と私有林の隣接地における効率的な作業の実施に向け、今後も情報交換と検討などを続けていくための関係を築くことができました。
また、日頃から同じ地域で森林行政に携わっている空知総合振興局の准フォレスターとも高性能林業機械の機能や活用についての情報交換を行うとともに、今後も市町村森林整備計画実行管理推進チームにおいて、更なる連携を図っていくことを確認することができました。

指導林家の宮崎氏との意見交換
森林・林業の再生に向けて
今回の研修会では、現在の林業が抱える問題点の解決手法として、高性能林業機械を活用した作業システムの構築と林業作業コストの縮減方策など、沢山の新たな知識、情報を得ることができました。
これからも林業作業コストの低減、国産材の有効活用、持続可能な森林経営など等・・・様々な問題点はありますが、森林・林業の再生に向けて、国有林の准フォレスターとして、積極的に、自信を持って活動していくことができるよう研鑽に努めていきたいと考えています。

北海道空知振興局の准フォレスター田中氏との意見交換(手前で真剣な顔?なのが私です)
空知森林管理署 北空知支署
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