第2回生物多様性検討委員会の概要
プレスリリース
平成19年6月22日
北海道森林管理局
第2回「生物多様性検討委員会」が開催されましたので、その概要についてお知らせします。 今回は、北海道国有林の生物多様性保全に関する論点整理の検討と、新たに実施を予定している生物多様性に資するプロジェクトの進め方等について検討を行いました。
1.日時、場所
平成19年5月29日(火曜日)午後1時~午後3時08分
北海道森林管理局大会議室
2.出席委員(五十音順敬称略)
高橋 邦秀(北海道大学名誉教授)
座長 辻井 達一((財)北海道環境財団理事長)
中村 太士(北海道大学大学院教授)
藤巻 裕蔵(帯広畜産大学名誉教授)
横山 隆一((財)日本自然保護協会常勤理事)
鷲谷 いづみ(東京大学大学院教授)
3.議題
(1)北海道国有林の生物多様性保全に関する論点整理の検討
(2)生物多様性に資するプロジェクトの進め方等の検討
4.委員からの主な意見
「北海道国有林の生物多様性保全に関する論点整理の検討」(議題(1))について
(保護林等について)
- 関東森林管理局では、平成18年度に約8万ヘクタールの奧会津森林生態系保護地域を新設するとともに、小笠原諸島のいくつかの保護林を統合して小笠原諸島森林生態系保護地域の設定を行っている。関東局で大きめの保護林を設定しようというのは、生物多様性保全の観点で保全対象がよく分からないものまでも含めて将来的に守っていこうという考えであり、北海道局も、今回のこの検討を機会にそういった保護林のスタイルに変えていくべきではないか。
- 林木遺伝資源保存林は、小規模のものが多数設定されているが、1~3ヘクタールの小面積では遺伝的な多様性を守ることができないと考えられるので、植物群落保護林に包括するなど再編成する必要があるのではないか。
- 北海道は、林木の遺伝子を考えるのに重要な場所なので、林木遺伝資源保存林についてはそのあり方をよく検討すべきではないか。
(遺伝子レベルの保全について)
- 遺伝子に関する調査は必要であり、現在、遺伝子について何が明らかでなく、今後、何を明らかにすることが必要なのかを見極めた上で調査することが必要ではないか。
- 遺伝的多様性の保全手法は、遺伝的な多様性が個々の樹木集団の中、地域、北海道全体、全国で、階層的にどのようなパターンを成しているかによって変わってくる。保全遺伝学や生態学の研究者は多いので、森林の遺伝的な階層構造の解明が重要なテーマであるというこちら側のニーズを研究者に伝えるなど、研究対象にしてもらえるような動機づけを行うことが必要ではないか。
(調査等の体制や仕組み等について)
- 生物多様性の保全管理を進めていくためのインフラとして、GIS、遺伝子に関する調査、市民参加といった取組がどこまでできるのか、職員のマンパワーも含めて検討する必要があるのではないか。
- 市民参加の受け入れ体制は整っているが、モニタリングについては、事業にフィードバックさせられるだけのデータの収集ができる体制のあり方について検討することが必要ではないか。
- 今回のようなプロジェクトは、市民にも研究者にも魅力があると思うので、参加者を呼び込むためのプログラムづくりがまず必要ではないか。
- 調査を自ら実行するには訓練された職員の配置が必要であり、そうでなければ、調査を外部に委託し、森林管理局は監督するという役割分担が望ましいのではないか。
- 森林管理局の職員も、調査研究等の監督だけではなく、モニタリング等にも一緒に取り組むことが重要である。現場を歩くことが保全管理のための知識・技術・経験を積み重ねていく機会になる。誰もが調査研究し、誰もが保全管理の主体になるという協働を実践していくというのが今日的なテーマではないか。
「生物多様性に資するプロジェクトの進め方等の検討」(議題(2))について
(モニタリング調査について)
- モニタリングを進めていく上で、生物多様性の指標となる生物を設定することと、将来像を予測することが必要である。予測については、人為の有無ごとにそれぞれの箇所の、例えば10年あるいは30年後の変化を予測する「シナリオ計画法」という手法がある。つまり、これまでの施業記録、観察や専門家の知見を加えて、将来像を予測し、それがどのくらい妥当であったかを確かめるモニタリング手法をとれば、何を指標にするかが明らかになるのでモニタリングを絞って行うことが可能になるのではないか。
- 渓流を調査する場合、魚を指標にすると、ダム等の影響があり、また、森林を整備しても直ぐに魚は戻ってこないことも多いので注意が必要ではないか。
(プロジェクトの進め方について)
- 生物多様性に資するプロジェクトにおいては、まずそれぞれの地域で何が問題なのかをはっきりさせる必要があるのではないか。
- 長期的なモニタリングを通じて保護・保全の効果をチェックしていく場所と、現在問題が起きている場所を仕分け、後者については、事業の展開に伴いその問題点がどうなったかを社会に示していくことが必要ではないか。
- プロジェクトでは、最初に、現地の森林全体についてその中の樹木だけではなく、生物群集や生態系としてしっかり見るということを関係者と協働して行うことが必要ではないか。
- 森林が悪化した原因に応じて、人為的に何をすべきか、又は何もしないでおくべきかを見極めていくことが必要ではないか。
- 枯損木や風倒木を不健全だから全て取り除いてしまうというのは、それを利用して生きている動物・昆虫などがあるので、生物多様性を保全するという考え方とは少し異なる。枯損木などを全て残さなければならないという訳ではないがどう取り扱うかは、その場所に応じて考えていくことが必要ではないか。
- 北限のブナ復元プロジェクトの対象地については、植物の分布上も非常にデリケートな場所だと思うので、人為的な関与に当たっては注意が必要ではないか。
- 北限のブナ復元プロジェクトとにしんの森再生プロジェクトの対象地については、地域の生態系や生物群集の全体を含む範囲を考えることが必要ではないか。
(その他)
- 国有林の森林計画の中に、自然林の再生を助長するための行為を念頭に置いた分類がないように思うが、例えば新たな施業群を設けることなどを検討することも必要ではないか。
次回の生物多様性検討委員会は、平成19年7月17日(火曜日)に開催予定です。
関連資料一覧
1.北海道国有林の生物多様性保全に関する論点整理の検討(案)(PDF:205KB)
2.生物多様性に資するプロジェクト(案)(PDF:5,534KB)