保護林

「保護林」は、原生的な森林生態系からなる自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、森林施業や管理技術の発展等に資することを目的として、区域を定め、原則として自然の推移に委ねる等の保全・管理を行うことにより、保護を図っている国有林野のことです。 国有林野事業では、学術の研究、貴重な動植物の保護、風致の維持等を目的とする国有林野独自の制度として、自然公園法の前身である国立公園法（昭和6年）や、文化財保護法の前身である史跡名勝天然記念物法（大正8年）の制定に先駆け、北海道国有林においては、大正2年に「原生天然保存林制度」を、北海道以外の国有林では大正4年に「保護林制度」を発足させて以来、保護林の適切な保全・管理に努めてきました。 その後、国民の自然環境の保全に対する要請の高度化に対応するため、有識者からなる「林業と自然保護に関する検討委員会」を設け、その報告を踏まえて、平成元年に保護林の区分体系を一新し、森林生態系保護地域を新設するなど、保護林制度の再編・拡充を図りました。 現在、保護林の種類は、（1)森林生態系保護地域、（2）森林生物遺伝資源保存林、（3）林木遺伝資源保存林、（4）植物群落保護林、（5）特定動物生息地保護林、（6）特定地理等保護林、（7）郷土の森の7種類となっています。このうち、森林生態系保護地域は、我が国の主要な森林帯を考慮して設定されています。

 

森林生態系保護地域

大雪山森林生態系保護地域(36,698ヘクタール）

忠別川源流部

黒岳

緑岳

赤岳から五色平方面

• エゾマツ・トドマツの北方常緑針葉樹をはじめとした多様な森林群落が原生的状態で、大規模なまとまりをもって存する当該地域の森林を保護することによって、森林生態系を中心とした自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存、学術研究などに資することを目的に設定しています。(平成23年4月1日設定）
• この森林生態系保護地域については、平成6年1月に設定した大雪山忠別川源流部森林生態系保護地域を、平成19年3月に北海道森林管理局に設定された生物多様性検討委員会の提言を踏まえて、設定区域等の見直しを行い拡充設定したものです。
• 区域は,黒岳から北海岳、忠別岳を経て化雲岳、トムラウシ岳、十勝岳、富良野岳に至る稜線、化雲岳から沼ノ原、石狩岳、音更岳を経て三国峠に至る稜線とこれらの周辺地域を包含した地域で、上川中部森林管理署の管内のほか、上川南部森林管理署及び十勝西部森林管理署東大雪支署の管内にまたがる広大な区域です。

 

植物群落保護林

大雪山原生林保護林(527ヘクタール）

• 大雪山系石狩川源流部の代表的な原生林で、学術研究に資することを目的に設定しています。この保護林は昭和29年の洞爺丸台風による風倒被害を免れた地域です。(昭和45年10月19日設定）
• 現地は国道39号線を層雲峡から北見方面へ約13キロメートル進んだ  地点の国道を挟んだ両側の森林です。
• トドマツ、エゾマツ、アカエゾマツを主体とした亜寒帯針葉樹林であり、極盛相の森林ばかりでなく林内には枯死木や折損木が多く見られ、倒木更新による稚幼樹や若齢の途中相の森林もあり、モザイク状に色々な形態の森林が見られます。
• エゾマツには胸高直径70センチメートルを超えるものも多く見られます。

 

大雪山系高山帯保護林（1,340ヘクタール）

 

ニセイカウシュッペ山　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ポイント１	ポイント２	エゾヒメクワガタ

• 大雪山系高山帯及びこれに続く亜寒帯林の植物群落を保護し、学術研究に資することを目的に設定しています。 （昭和50年4月1日設定。平成23年4月1日区域変更）
• 北部大雪山に分布するエゾマメヤナギ－エゾオヤマノリンドウ群集等は、多くの希少種からなる大雪山固有の高山群落であり、文化財保護法に基づく特別天然記念物及び自然公園法の特別保護地区に指定されている。

 

十勝岳泥流保護林（257ヘクタール）

十勝岳泥流保護林

• 大正15年の十勝岳爆発による二次泥流跡地に成立した天然樹木等の保護を図り、学術研究に資することを目的に設定しています。 （昭和50年4月1日設定）
• 表層は火山泥流玄武岩が地層を形成しており、カンバ類が広く分布し、アカエゾマツ、エゾマツ、トドマツが標高750メートルから900メートル付近に分布している。
• エゾイソツツジ、シラタマノキ等が標高700から800メートルの低い位置まで分布しており、火山活動に影響された土壌条件の局地的特異性がうかがわれます。

 

小松原植物群落保護林（37ヘクタール）

小松原植物群落保護林 (入口）	小松原植物群落保護林 (林内）	ドロノキ大径木	エゾマツ大径木	コミヤマカタバミ

• 安政4年(1857年)の十勝岳爆発による泥流跡地に成立した天然樹木等の保護を図り、学術研究に資することを目的に設定しています。（昭和50年4月1日設定）
• 現地は白金温泉地区の「国立大雪青少年交流の家」の北東部に位置し、周辺の自然休養林を含め周回の遊歩道を設置しています。
• 安政4年の十勝岳噴火による泥流跡地に成立したドロノキが衰退し、現在はエゾマツ、アカエゾマツ、トドマツの針葉樹を主体に、ドロノキ、ダケカンバ等の広葉樹が混交する天然林です。現存するドロノキには胸高直径100センチメートル程度のものや、エゾマツ、トドマツには70センチメートルを超えるものが見られます。
• 林床にはクマイザサが優占していますが、春にはコミヤマカタバミ、タチツボスミレ、ミヤマエンレイソウ、エンレイソウなどが見られます。

 

 林木遺伝資源保存林（11ヶ所240ヘクタール）

•  主要な林業樹種の林木遺伝資源としてその保存を図っています。対象樹種としては、トドマツ、アカエゾマツ、エゾマツ、シロエゾマツ、ウダイカンバ、ダケカンバ、シラカンバ、カツラ、オニグルミ、シウリザクラ、アズキナシ、チョウセンカラマツ、チョウセンヤマナラシです。