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中部森林管理局

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    御嶽山の災害

    御嶽山は本州中部、長野県木曽郡木曽町・王滝村と岐阜県下呂市・高山市の県境に位置する標高3,067mの成層火山です。古くから、信仰の山として富士山・立山・白山・大山とともに知られています。また、「日本百名山」にも選ばれており、眺望の良い独立峰として知られ、多くの登山客が訪れています。頂上付近には、一ノ池から五ノ池までの5つの高山火口湖があり、特に、二ノ池は日本で最も高い場所にある高山火口湖です。三ノ池は、最も盛んに爆裂を重ねたかつての噴火口の規模を今に伝えています。
    御嶽山の火山活動は約75万年前から開始され、休止期と活動期を繰り返しながら、1979年に再び火山活動が始まったとされています。1984年に発生した長野県西部地震は御嶽山山麓の住民に甚大な被害をもたらし、2014年に発生した噴火は、戦後最悪の火山災害となりました。

    1979年 御嶽山噴火

    昭和54年(1979年)10月28日、有史以来の水蒸気噴火が起こりました。当初は爆発音もなく白い噴煙が小さく出ていただけでしたが、噴火活動の約3時間後から、灰色~暗灰色の噴煙が激しく立ち昇りました。9時間を経過すると、噴火活動は極大期を迎え、火山岩塊が剣ヶ峰周辺に落下し山頂神社や山小屋に甚大な被害を及ぼしました。また、火山灰は火口から北東の旧開田村・三岳村で降灰し、また約100km離れた長野県上田市・軽井沢町や約150km離れた前橋市まで達しました。噴火の前兆としては、同年夏頃から三ノ池の水が濁り、硫黄臭さかったようです。

    1984年 長野県西部地震

    昭和59年(1984年)9月14日、8時48分、長野県王滝村御嶽山の直下2kmの非常に浅いところでM6.8の地震が発生しました。この地震により、死者・行方不明者29名、家屋の損壊604戸など甚大な被害が発生しました。
    国有林内にも、大小様々な山地崩壊が発生し、なかでも、御嶽山山頂付近の南斜面の大崩壊(御岳崩れ)は、3,600万m3もの土砂が一瞬にして土石流となり、時速70kmで山麓を駆け下ったと言われています。この土石流により、約600ha(東京ドーム約130個分)もの荒廃地が発生するとともに、王滝川に天然ダムが出現し、王滝村民約1,700名の生命・財産はもとより、木曽川下流の岐阜県や愛知県の農業・水道・工業用水の主要な供給源となっている牧尾ダムへの被害が懸念されました。
    このため、災害直後から30余年にわたって、治山ダムや緑化工事等の治山事業、多くの方々の参加による植樹などのボランティア活動により、被災地の復旧を行い、多くが森林によみがえってきています。また、森林がよみがえったことで、ニホンカモシカやツキノワグマ、ヤマドリ等の野生動物が戻ってきています。


    御岳崩れと下流の土石流跡


    治山事業施工図

    治山事業の取り組み
    国有林では、濁沢を中心として、震災直後に治山ダム工・航空緑化工を行い、その後の復旧工事で、丸太土留工や丸太筋工、管理道の設置等を行い荒廃地の復旧に努めました。西部地震災害により施工した施設は、治山ダム工137基、護岸工7,743m、山腹工310ha(航空実播工74ha)、保安林管理道3,800mです。


    航空緑化工


    治山ダム工



    丸太土留工等


    工事の様子
    また、王滝村、森林管理署、新聞社などが協力し、木曽川下流の都市部などの住民が参加して植樹等を行う「未来世紀につなぐ緑のバトン」事業が行われ、緑が戻りつつあります。これらの取り組みにより、防災、水源に対する住民意識の醸成や都市部との交流にも役立っています。


    地元住民による
    ボランティア作業

         
    緑のバトン事業による植樹


    長さ約2kmの自然湖

    御嶽崩れにより発生した土石流、岩屑流は伝上川、濁沢、濁川を流下した後、王滝川本流に流入し、崩壊地から約12km下流の氷ヶ瀬付近まで達しました。濁川と王滝川の合流地点では、流砂土砂により王滝川が堰き止められ、上流部に堰止湖が生じました。この堰止湖を「自然湖」と呼び、現在では、カヌーや釣り等のレジャ-に利用されています。


    2014年 御嶽山噴火

    平成26年(2014年)9月27日午前11時52分、山頂南西の地獄谷付近で水蒸気爆発が発生しました。1km程度の範囲に大きな噴石が飛散し、この突然の噴火により、死者58名、行方不明者5名、負傷者61名という戦後最悪の火山災害となりました。1979年の噴火とは別の火口で、最初の噴火では火砕流も発生し火口南西側の地獄谷を約3km程度流下、火口北西側の尺ナンゾ谷にも流れ下ったことがわかりました。

    噴火の様子
    噴火の様子

    治山事業の取り組み
    中部森林管理局では、噴火直後から災害対策本部を設置し、ヘリコプターによる被害状況の調査や国有林内での地上調査を実施しました。その後、噴火により発生した土石流等の流出による二次災害防止対策として、王滝村濁川に設置されている治山ダムに堆積した土砂を取り除く除石工事を開始し、濁川には監視カメラ及び土石流センサーを設置し、監視体制を整えました。


    除石工事前


    除石工事中


    除石工事後


    監視カメラ

     
    土石流センサー

    また、恒久的な土石流対策として、木曽町三岳地内と王滝村濁川地内にコンクリート谷止工を計画し、木曽町三岳地内は、御岳ロープウェイ付近に施工し、平成27年度に完成しました。王滝村濁川地内は、2基を計画し、現在施工中です。
     
    倉本湯川治山工事
    (木曽町三岳地区)

      
      濁川第64号コンクリート     濁川第65号コンクリート
               谷止工                          谷止工
                         (王滝村濁川地区)

    後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~

    林野庁では、治山事業を実施して100年が経過したことを機に、「後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~」として、60箇所の治山事業地を選定しました。
    治山事業は、山地災害から国民の生命・財産を保全するとともに、水源の涵養、生活環境の保全・形成等を図るために、森林の維持・造成を通じ、荒廃地の復旧等を行う事業です。事業完了後は、周囲の森林と同化し、事業の痕跡も目立たなくなるものも少なくないことから、学識経験者からなる「後世に伝えるべき治山」選定委員会を設置して、これまで治山事業が実施された箇所の中から、技術、事業効果、地域への貢献、人々の記憶という点に加え、国民や関係者の視点を考慮した上で審査を行いました。
    1979年に発生した長野県西部地震からの復旧事業や3,600万m3もの土砂の流出防止と緑化の観点から、長野県西部地震災害復旧工事も、「後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~」に選定されました。
    御岳の土石流跡に緑を甦らせた長野県西部地震災害復旧(PDF : 295KB)

    お問合せ先

    木曽森林管理署

    担当者:総括事務管理官
    ダイヤルイン:0264-52-2083