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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。  

 

 

地域林業の低コスト化に向けて~列状間伐の推進~

【根釧西部森林管理署

根釧西部森林管理署は、釧路総合振興局林務課等民有林関係者と連携して地域の課題解決に向けた取り組みを行っています。今回は私が国有林フォレスターとなってからの三年間の取り組みをご紹介します。

根釧西部森林管理署管内の概要

根釧西部森林管理署は釧路市に位置し、8つの市町村(釧路市、厚岸町、釧路町、標茶町、白糠町、弟子屈町、浜中町、鶴居村)にまたがる、約18.2万ヘクタールの国有林を管理しています。

また、釧路市の北東約50キロメートル、厚岸湖に注ぎ込む別寒辺牛川の中流にパイロットフォレストと呼ばれる約7,000ヘクタールのカラマツ人工林が存在しています。周囲の別寒辺牛湿原を含めると、面積は約10,800ヘクタールに及びます。

広大な不毛の原野だったこの地に、昭和31年から10年間にわたり苗木約2,500万本の大規模造林が行われ、植栽から50年以上が経った現在では、多くの木が胸高直径24センチメートル以上、樹高18メートル程度まで成長しています。

パイロットフォレスト全体で約97万立方メートルの蓄積を有し、間伐を主体に毎年1万2千立方メートルの木材を生産し、カラマツを主体とした木材の安定供給に努めています。

管内には、阿寒国立公園、釧路湿原国立公園、厚岸道立自然公園等に指定された貴重な自然があり、特別天然記念物であるシマフクロウやタンチョウのために保護林を設定し、事業の制限や巡視など生息域の保全にも努めています。

 

雌阿寒岳からの眺望の写真

                雌阿寒岳から望む阿寒湖と雄阿寒岳

 

市町村等への支援

当署においては、民有林関係者が出席する各種会議に参画する中で民有林への支援に取り組んできています。

「行政連絡会議」については、市町村の林務担当者や森林組合、関係機関等と地域課題の把握や情報発信等を行ってきています。

また、市町村、森林組合、関係機関等で構成される「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」(以下 推進チーム)に参画し、計画の策定や変更を行う際の支援、地域課題の共有とその解決へ向けた取り組みを進めてきています。

各市町村の推進チームごとに、それぞれ問題となっていることの中から、重点的に取り組む地域課題を設定し、釧路総合振興局林務課(以下 振興局)や釧路総合振興局森林室(以下 森林室)と連携して解決に向けて議論を重ねながら取り組んできており、推進チームで開催する現地検討会のための現地調査に同行し、フィールドの提供や技術的助言等、積極的に取り組みを進めています。   

 

市町村森林整備計画実行管理推進チームの会議の写真

     市町村森林整備計画実行管理推進チーム会議

 

 地域課題の把握と解決に向けた取組

釧路地域の課題の把握とその解決に向けた取り組みを、振興局と連携を密にして進めています。

中でも「民有林において列状間伐の普及があまり進んでいない」ことから、森林整備の低コスト化、間伐の採算性の向上や労働安全の確保が期待される「民有林への列状間伐の推進」を重点的な課題として取り組んでいます。

特に、森林整備の低コスト化には路網整備は必要不可欠であることから、「繰り返し利用可能な堅固な森林作業道作設技術の普及」を追加しつつ、列状間伐の必要性や森林作業道作設技術等を民有林に普及する取り組みを進めています。

 

列状間伐の普及

高性能林業機械を活用した低コストで効率的な作業仕組みと列状間伐の普及を図ることを目的に、振興局や市町村の林務担当者に呼びかけて現地検討会を実施しています。

国有林の高性能林業機械による列状間伐の現地において、実際の作業を視察し参加者自らが作業の効率性・安全性を確認するとともに、事業者より高性能林業機械導入に当たっての各種条件等の留意点について説明したほか、意見交換を実施しています。 

意見交換では「列状間伐は振興局・森林室でも推進しており、市町村の林務担当者に浸透してきている」、「山林所有者の中には、定性間伐でなければ良い木にならないと考える方が多い」等の現状認識が話され、今後も引き続き列状間伐の優位性や低コスト化に関する技術的な情報を発信・普及していく必要があると強く感じました。 

 

列状間伐現地検討会の写真1 

 列状間伐現地検討会の写真2

 民有林関係者に向けて、国有林で列状間伐現地検討会を実施

   

林業事業体の森林作業道作設技術の向上

列状間伐の民有林への普及・推進には路網整備が不可欠であり、民有林でも造材作業を行う地域の林業事業体の森林作業道作設技術を向上させると同時に、効果的に路網を配置するための目を養うことで地域林業の低コスト化の実現を後押しすることとしました。

請負事業体を対象として当署で開催した事業説明会において、森林作業道の趣旨と作設基準、また、ハーベスタ等が伐採列内で作業することを想定した場合は森林作業道の作設延長を極力短くするなど、効果的・効率的な路網配置などの検討を行いました。

また、各林業事業体が自社自慢の森林作業道を作設し、そこで現地検討会を開催することを提案し、協力を得ることができたことから、今後開催する現地検討会では、各林業事業体が作設する自慢の森林作業道において、路網配置の考え方や工夫した点等について比較検討することにより、互いに切磋琢磨して技術の向上を目指すきっかけとなることを狙いとして、各林業事業体の現場7箇所を設定しました。

今後は、森林作業道モデル地を活用していく予定で、地域の関係者を対象に現地検討会を開催するなど、国有林が蓄積してきた技術を活かし、引き続き地域の課題解決に繋げていきたいと考えています。 

 

森林作業道モデル地写真1 

森林作業道モデル地の写真2

森林作業道モデル地の現状 

 

民有林との連携に向けて

地域課題の解決に向けた取り組みのほか、民有林と密接に連携していくために次のような取り組みを行っています。

国有林の活用

振興局が森林・林業や木育に関心を持つ北海道教育大学釧路校の学生を対象に開催した「釧路森づくり意見交換会」において、国有林内のトドマツ人工林の伐採作業を見学しました。

学生たちは高性能林業機械を使用した伐倒、枝払い、造材を歓声を上げながら見学し、会場を移して意見交換会を行いましたが、「教科書の知識だけでなく、現場に行くことが本当に勉強になった」等の意見が出されました。

今後も振興局と連携し、国有林のフィールドを提供する等協力していきたいと考えています。

また、毎年JICA(国際協力機構)からの研修生を受け入れ、パイロットフォレストにおいて森林の復元と複層林施業について講義と見学を行っています。

海外への林業の技術の普及と振興に少しでも寄与できればと考えています。

 

 JICA研修生へ講義している写真

         森林再生について各国のJICA研修生への講義

 

 イベント開催

当署と民有林との連携は地域の林業関係者に対する取り組みだけでなく、地域住民の方々を対象としたイベントも行っています。

釧路市との間で締結している「阿寒湖のマリモと水源林の保全に関する森林整備協定」に基づいた春の「植樹祭」と秋の「美しい森林づくり体験」の共催や、NPO「くしろ森林サポーターの会」との間で締結している「社会貢献の森」の協定に基づいた「地域の里山の維持・保全活動等の活動及び啓発活動」での連携した取り組み、釧路町村会が取り組んでいる「地域作り広域プロジェクト」に協力して開催している「木育・森づくりフェア」など各種のイベントに地域の方々と連携して取り組んでいます。

また、地域住民向けに、パイロットフォレストに設置されている望楼(管理用展望施設)の一般開放を実施しました。

町の広報誌への掲載やチラシの配布、小学校への訪問など幅広い広報により、多数の住民に参加いただき、先人が造り上げた広大なカラマツ林を体感していただきながら、造成の歴史や森林の役割など地域の方々に森林林業に対する関心もってもらうよう取り組みました。

こうした取り組みの中から、幅広い分野の方々や市町村等との密接な関係を継続していくことが重要と考えています。

 

地域住民にパイロットフォレストを説明している写真

望楼の前で地域住民にパイロットフォレスト造成の歴史について説明

 

職員のスキルアップ

民有林との連携を進めていくために、振興局や事業体等のご協力をいただきながら、当署の職員のスキルアップにも取り組んでいます。

振興局、森林室、林業事業体等に講師を担当していただき、若手職員を対象として補助金や民有林で行われている作業方法等についての勉強会や、製材工場や製紙工場の見学会を実施して地元で生産された材がどのように流通・加工されているかということを学びました。

このような勉強会は国有林職員のスキルアップだけでなく、民有林との連携について考えるきっかけとなり、行政連絡会議等で共有されている地域課題を解決していくために、署内の担当者と連携して円滑に進めるための下地作りとなっています。

 

国有林フォレスターとして

平成25年、新たに「民有林連携・支援」という業務が始まり、その担当である国有林フォレスターとして着任しましたが、何からどのように取り組んでいいのか手探りでひとつひとつ進めてきました。

このような中、振興局や市町村等の担当者と会議やイベント等の機会に、良い人間関係が築けるよう心がけてきました。

今では、振興局や市町村等と気軽に話ができるようになったため、地域の課題やイベントの協力要請等を把握しやすくなるなど、少しずつ信頼と連携が深まってきているなど、「民有林連携・支援」の業務が軌道に乗り始めており、これまでの努力が実りつつあるのではないかと感じています。

このような取り組みを続けて、地域の森林・林業に関する様々な課題解決に向けて振興局や森林室をはじめとする民有林関係機関と連携し、地域から評価されるような取り組みを進めていきたいと考えています。

根釧西部署国有林フォレスターの写真

国有林フォレスター    

   根釧西部森林管理署

       森林技術指導官

            岩上 浩之

 


 

根釧西部森林管理署

北海道釧路市千歳町6番11号

電話:050-3160-5785

ホームページ:http://http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/konsenseibu/index.html

管轄区域:釧路市、厚岸町、釧路町、標茶町、白糠町、弟子屈町、浜中町、鶴居村


 

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お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:050-3160-6285
FAX:011-622-5235