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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。

 

 

 

 

国有林フォレスターとして参加~国際森林フォーラム・レポート

 【空知森林管理署 北空知支署

下川宣言をして握手するフォーラム登壇者のみなさん 

空知森林管理署北空知支署では、地域資源である木質バイオマスの活用と普及に向けて、地域の振興局や近隣の森林管理署と連携し、各種会議、現地検討会の場を通じた情報収集と技術の普及などに取り組んでいます。

平成27年2月1~2日、地域資源である木質バイオマスを燃料として活用したエネルギー供給を核に、町づくりを進めている下川町で「第2回国際森林フォーラム」(同町主催)が開催されました。

森林・林業、木材産業の活性化を通じて、地方創生を目指す「国有林フォレスター」として、新たな知見・情報などを勉強するために北海道森林管理局と上川地域の署等の国有林フォレスターとともに参加しましたので、その概要をレポートします。

国際森林フォーラムとは

今回の国際森林フォーラムは、国内外の地域資源を活用した先進的なエネルギー供給の取り組み事例の紹介を通じて、その有効性や課題などについて議論を深め、住民など参加者と広く情報を共有し、地域資源を活用したエネルギーによる地方創生の意義と有効性を国内外へ向けて発信することを目的に開催されたものです。

当日は、報道番組の著名なコメンテーターである古賀茂明政策ラボ代表がコーディネーターを務め、再生可能エネルギーの活用を戦略的に進めているドイツ連邦共和国アシャ村と国内4自治体の首長から事例報告が行われました。  

ドイツ連邦共和国 アシャ村からの報告~自治体によるエネルギー転換の具体化 

  • アシャ村はドイツ連邦共和国の南部に位置する人口1,583人の村です。
  • 1990年代前半までは、いわゆる過疎の村だったそうですが、1998年に村が住民参加により組織した「アシャ村未来フォーラム」において、エネルギーの自給自足を柱としたビジョンを確立し、村の再生を進め、再生可能エネルギーを活用する先進的自治体となりました。
  • 村も出資する有限会社を設立し、木質バイオマスによる熱電併給等に取り組み、村内の電気需要量を上回る約250%、同じく熱の約70%を再生可能エネルギーで供給しています。
  • 電気は固定価格買取制度で売電、熱は総延長4kmの小範囲の熱供給網により85棟の民間建築物や工業団地、すべての公共施設へ供給しています。
  • この波及効果で、雇用と人口は1990~2014年の25年間で3割も増加。また、これまでは村内から地域外のエネルギー供給事業者に流出していた資金を、地域内に利益として還元させることも実現しました。
  • 再生可能エネルギーの生産を続ける一方、村全体での徹底したエネルギーの節約を行い、2001年比で44%の削減を達成、このことにより、村内でのエネルギー必要量の92%以上はバイオマスと太陽エネルギーでまかなえるようになりました。
  • 現在は地域熱供給の拡大、バイオガスエネルギーの活用、電力による交通機関の導入により「5年で灯油のない村」の実現に向けて、さらなる取組を進めています。

 

この報告を聞いて最初に感じたのは、地域資源を活用し「エネルギーの自給自足」を柱とした大きな取組を、強力な住民参加の下で進めたことが、成功へつながった大きな理由の1つであり、大いに学ぶべき点であるということです。

木質バイオマスを活用した地域熱電供給に始まり、徹底した省エネ対策、そして将来の「灯油ゼロ」という大きなビジョンを掲げて進んでいくことが、過疎の脱却・地域の活性化にもつながっていくという先進的な取組は、我々が目指している「森林・林業の再生」への大きなヒントともなると感じました。

日本では「木質バイオマス」の活用が始まってからまだ日が浅いですが、これらを今後、普及・拡大していくためには、地域住民の理解と協力が、大切であると再認識させられました。  

山形県最上町からの報告~森林整備のためのエネルギー利用

  • 最上町は山形県北東部に位置する人口約9,500人の内陸の町です。
  • この町では、2020年に町内で使用されるエネルギーの20%を再生可能エネルギーにすることを目標に、住民参加で再生可能エネルギーを核とした町づくり「サスティナブルタウン最上」を進めています。
  • 町の面積の8割以上を森林が占め、このうち人工林率が6割を超える民有林では間伐が急務となっており、この森林を整備する過程で発生する間伐材に燃料としての価値を持たせ、エネルギーとして利用し、エネルギーの地産地消と循環型社会の実現を目指すことになりました。
  • まず町有林において、効率的で安全な間伐方法である「列状間伐」を森林GISと高性能林業機械を活用して実施、これを一般民有林の山主さんにも普及させました。そして、生産されるこの間伐材はチップ化し、熱電供給施設の燃料に 活用し、町内の公共施設、若者の定住促進住宅への熱電供給を実現しました。
  • 林業を熱電供給システムにつなげることで、若者が林業という産業に目を向けてくれるようになり、また、町内の石油燃料店は木質ペレット、農業法人は籾殻ペレットの製造にそれぞれ参入し、バイオマス産業として展開しています。

 

森林整備の現場では人工林の成長過程で必要となる「間伐」作業をいかに低コストで進めていくかが重要な課題となっています。国有林ではこの作業を効率的かつ安全に行うことができる「列状間伐」を積極的に進めています。

列状間伐は、選木の手間が省け、伐採・集材が容易になるとともに、高性能林業機械を用いた作業システムの導入により、生産性を高めやすいという利点があることから、管内の民有林へも普及、推進していきたいと考えています。

最上町では列状間伐を普及するために、まず町有林で取り入れ、GISも活用しながらその作業と成果を一般民有林の山主さんたちに実際に見てもらい、「なるほど!、これはいい方法だ!」と納得してもらい、その普及につなげており、我々の取組にもぜひ参考にさせてもらいたいと感じました。  

熊本県小国町からの報告~地熱を利用した林産業の可能性

  • 小国町は九州のほぼ中央、熊本県の最北端に位置する人口約8,000人の内陸の町です。
  • この町では、町の面積の約8割を占める森林資源をもとに「小国杉」としてブランド化を図るとともに、大型の木造ドームを建築するなど先駆的な木材利用を展開してきています。
  • 阿蘇火山帯に位置するため地熱が豊富で、近年では温泉蒸気を利用した木材乾燥システムや地熱バイナリー発電が導入されています。
  • 地元の温泉には木質バイオマスボイラーを導入し、木質バイオマスエネルギーの活用にも力を入れています。
  • 町では木質バイオマス燃料を集める方法の1つとして、小規模自伐林家が山に放置されている林地残材を搬出するのを支援するため、「木の駅」に出荷された林地残材を地域通貨「モリ券」と交換し、地域の活性化につなげる「木の駅プロジェクト」にも参画しています。
  • また、事業活動などによる温室効果ガス排出量の全部又は一部を、森林の吸収量を購入する事で埋め合わせる仕組みである「カーボンオフセット・クレジット制度」を活用し、企業にこのクレジットを販売しています。その収益を地域の森林資源の有効利用と植林活動の推進に活かす取組も行われています。 

 

道内では発電用の熱源としての地熱活用について調査などが進められていますが、小国町はその熱源で木材乾燥施設を稼働させ、林業の振興にも活かしている点に非常に興味を持ちました。

また、カーボンオフセット・クレジットの収益を活用した、地域の森林・林業の再生をめざした取組が行われており、ハード面だけではなくソフト面からも参考となる報告でした。 

北海道音威子府村からの報告~草本系バイオマスによる発電事業を目指して

  • 音威子府村(おといねっぷむら)は北海道北部(下川町から北へ約60km)に位置する人口約800人の内陸の村です。
  • 地域エネルギーの活用により、雇用と所得を生み出し、また循環型社会を構築するため、平成26年2月に公共の温泉「天塩川温泉」に木質バイオマスボイラーを導入しました。
  • 現在、牧草を中心とした草本系バイオマス発電設備の導入可能性調査を実施し、休耕地で栽培するエネルギー作物と家畜糞尿、間伐材など村内で調達可能な資源を利用し、村内でエネルギーの消費を目指しています。

 

地域資源から得られる再生可能エネルギーを利用した取組であり、熱電利用の構想はドイツのアシャ村の取組にも通じるところがあります。

道内ではこれから大規模な木質バイオマス発電施設が稼働する予定ですが、地域の規模に見合った大きさで、地元自ら運営していこうとしている音威子府村の姿勢と取組に今後も注目し、参考にさせてもらいたいと感じました。  

北海道下川町からの報告~森林バイオマス熱電供給によるエネルギー自給を目指す

  • 下川町は北海道北部に位置する人口約3,500人の内陸の町です。
  • 町の面積の約9割を占める豊富な森林資源の利活用と林業・林産業の活性化のため、平成16年度から先駆的に木質バイオマスボイラーを導入し始め、今年度末までに公共施設の熱需要量の約6割を木質バイオマスボイラーで賄う予定です。
  • 燃料となる木質チップの製造は、町内の石油販売事業者による協同組合に委託。エネルギーの町内自給率を高めることで、これまでエネルギーを購入するために町外に流出していた資金を町内で循環させ、その節減効果を「子育て支援の充実」などに活かしています。
  • 国内初となる森林バイオマス地域熱電併給システムモデルの構築へ向けた取組は、町内の富の循環、林業・林産業の活性化にもつながり、これに伴って、人口の減少も鈍化、近年は転入者数が転出者数を上回るなど、社会動態も好転してきています。

 

下川町は、林業での先進的な取組を精力的に進め、地域の活性化にもつなげるなど、その取組には常に全国が注目しています。

森づくりから始まり、地域資源を活用した木質バイオマスボイラーの積極的な導入、集落を団地に集約し、地域熱電供給によるエネルギー自給型の集合住宅とした「集住化エリア」の創設、地元雇用の拡大、そして人口増へとつなげていくという明確なビジョンの上になり合っている大変すばらしい取組です。そして、自治体、森林組合、地元企業、地域住民が一体となって「下川町」というブランドを作り上げているのを強く感じました。  

森林のまち・しもかわ見学ツアー(2日目) 

国際森林フォーラムの翌日は、下川町内の木質バイオマス関連施設等の見学ツアーが行われました。

 

ガーデニング用枕木

下川町森林組合 木炭・小径木加工工場

  • 木材の副産物も余すことなく使うゼロ・エミッションの工場です。
  • 木炭および円柱・小径木を主体に生産しています。また、木炭を作るときに発生する煙を利用して木材をいぶす「くん煙処理」や煙に含まれる「木酢液」を回収したり、牛舎敷料などに利用される「オガコ」の生産も行っています。

木酢液に漬け、燻煙処理を行ったガーデニング用枕木→ 

 

トドマツ・エッセンシャル・オイル(株)フプの森 トドマツ精油工場

  • トドマツなどの枝葉から水蒸気蒸留により抽出した精油を使い、エッセンシャルオイル、芳香剤、化粧水、石けんなどを製造しています。

当日は、実際に精製する作業の一部を見学しました。

 

トドマツ等の精油を使用した製品→ 

 

木質原料製造施設

  • 林地残材から木質バイオマスボイラーで利用する燃料用木質チップを製造しています。

木質チップ製造

木質チップの製造・管理は、町が地元の石油販売事業者による協同組合に委託しています。

当日は、グラップルが移動式木材粉砕器(チッパー)に林地残材を投入し、勢いよく木質チップが製造されていく様子を見学しました。

 

地域熱供給システム施設

  • 役場周辺地域熱供給システム施設は、木質バイオマスボイラーからの熱エネルギーを役場庁舎、公民館などに供給しています。
  • 一の橋地区地域熱供給システム施設は、エネルギー自給型の集住化エリア「一の橋バイオビレッジ」に熱エネルギーを供給しています。
  •  一の橋バイオビレッジでは、集住化住宅をはじめ、併設されている住民センターや郵便局、さらには近隣の障がい者支援施設、育苗温室ハウスなどにも地下配管を通じて熱供給を行っています。

一の橋地区・地域熱供給システム

一の橋地区・地域熱供給施設

チップボイラー

木質チップボイラー

地域熱供給を受ける下川バイオビレッジ内の住宅

熱供給を受ける住宅


これらの施設の見学を終えて感じたことは、下川町の取組は単に町内だけの取組としてではなく、これからこのような取組と施設の導入を検討している自治体にとっての「モデル」となることであると改めて感じました。

木質バイオマスの活用を拡大するにあたり、利害が対立することになる石油販売事業者には、木質チップの管理・製造を委託し、WIN-WINの関係を築くなど、地域全体の理解を得ることに努める下川町の姿勢は、大きなビジョンを実現していくためにとても大切なものであると感じました。  

国有林フォレスターとして 

今回のフォーラムや見学ツアーでは、報告いただいた各自治体が持つ「地域資源」を地域住民のみなさん自らが再認識し、地域ビジョンを掲げ、その実現に向けた取組を推進していく姿勢に感銘を受けました。

現在、当支署では、地域資源である木質バイオマスの活用と普及に向けて、地域の振興局や近隣の森林管理署と連携し、各種会議、現地検討会の場を通じた情報収集と技術の普及などに取り組んでいます。

平成26年10月30日に、森林計画樹立に向けた意見交換を図るために開催された現地検討会では、木質バイオマスの安定供給等について研究者も交え、今後の課題や解決策について活発な意見交換を行いました。

当支署の森林整備の構想となる「地域管理経営計画」や「施業実施計画」の策定準備においても、今後需要が増えることが予想されている木質バイオマス資材について、管内の国有林からの供給可能量等について各現場を調査し、その把握を行っているところです。

その中においても、常に、我々国有林がより地域に貢献するにはどうしたら良いか、より良い方法はないかということを意識しながら作業を進めています。

フォレスターの役割は、地域の森林づくりの構想を創り、地域のみなさんの合意形成に務め、そしてその構想を実現していくことだと言われています。

今回の国際森林フォーラム等で学んだことを活かし、今後も地域のみなさんと連携し、森林・林業の再生と、これらを通じ地域の振興に貢献できるよう努めていきたいと考えています。 

平成26年度森林計画樹立に係る現地意見交換会

森林計画樹立に向けた意見交換

(10月30日・日高町)

岩館 主任森林整備官

国有林フォレスター

空知森林管理署 北空知支署

業務グループ 主任森林整備官 岩館 正宣

 


 

 空知森林管理署 北空知支署

北海道雨竜郡幌加内町字清月

電話: 050-3160-5720


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森林整備部技術普及課
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