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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。

 

 

 

 

森林共同施業団地の設定に向けて

【日高南部森林管理署】 

日高南部森林管理署では、民有林と国有林が連携することによって、今までは個々に行ってきた森林整備を集約化し、スケールメリットを活かす「森林共同施業団地」を設定した森林整備を地域に普及させるための取組を行っています。

日高地域の概要

高見ダムと日高山脈

高見ダムと日高山脈 

当署は、北海道の日高振興局管内のほぼ中心に位置する新ひだか町にあり、日高地域の南部流域に広がる約13万ヘクタールの国有林を守り育てています。

当地域は、南は太平洋に面し、北は非常に急峻で険しい日高山脈が連なっています。

山中にはこの地形を利用した多くの水力発電用ダムが立地しており、国有林はその水源として重要な役割を担っています。

また、豊かな山岳とその自然景観は全国から多くの登山愛好家をひきつけ、その中でも幌尻岳は特に人気があり、山脈の南端となる太平洋に突き出した襟裳岬も全国的に有名な観光地となっています。

道内としては温暖な気候条件であることから、国内有数の軽種馬の産地であり、国有林の裾野には牧歌的な風景が広がっています。

一方、沿岸部では昆布等の水産業が盛んであり、河川の水質保全に対する要望が高い地域であり、その源流である国有林は細心の注意をもって森林整備を進めています。 

効率的な森林施業の必要性 

国有林野事業はこれまで国の「企業特別会計」で事業を行ってきましたが、平成25年度から「一般会計」に移行し、事業を行っていくことになりました。

当署では今まで以上に公益重視の管理経営を推進するとともに、地域の関係者と連携し、地域の課題や要望の把握に努め、国有林の組織・技術・資源を活用して民有林の支援等の積極的な取組を進めています。

この様な中、地域の森林・林業の再生を進めるためには、その採算性を向上することが必要であり、森林整備の効率化が急務となっています。

この効率化の処方箋の1つは、民有林と国有林が連携(以下=民国連携)することによって、今までは個々で行ってきた森林整備を集約化し、スケールメリットなどを活かせる「森林共同施業団地」を設定した森林整備があげられます。

当署では、森林共同施業団地の設定を推進するために、市町村等の民有林関係機関との各種会議において、森林施業のコスト縮減につながる集約化の意義、日高流域の集約化の状況、森林共同施業団地設定におけるメリット等について機会あるごとに説明を行ってきました。

しかし、これまでこの地域では、なかなかその気運が高まりませんでした。

国有林と民有林の分布図

上流域に国有林(緑)、その下流域に民有林(白)が分布する日高地域 

それは、この地域の民有林と国有林の配置が、「民有林と国有林がモザイク状に存在し、それらを路網で連結することによって様々な面で効率化を図る」という森林共同施業団地の”モデル”として示されているようなものとは違い、「海岸線から中流域までが民有林、そしてそれより上流部が国有林というように、民有林と国有林の区域がきれいに分かれている」という状況から、団地化のメリットがわかりにくかったという背景があると思われます。  

市町村へ共同施業団地化を呼びかけ

このような地域に森林共同施業団地を設定し、効率的な森林整備を普及させるため、民有林と国有林のフォレスターが連携して地域の現状と課題を分析し、その解決に向けた検討を進めた結果、次のような取組につながっていきました。

フォレスターによる打合せ

民・国のフォレスターによる団地化の必要性の検討

 

意見交換の場~団地化推進のための打合せ会議を設置

担当者レベルで森林共同施業団地の設定に関する意見交換を行い、森林施業の集約化を民有林と連携し進めるために次の2つの団地化推進打合せ会議を設置しました。 

  • 新ひだか町団地化推進打合せ会議(新ひだか町・日高東部森林組合・当署)
  • 浦河町団地化推進打合せ会議(浦河町・日高東部森林組合・北海道日高振興局・当署)  

会議では集約化や列状間伐などの施業の低コスト化を目指した取組について室内討議、説明を行って、団地化推進への理解を得ることができました。  

 

現地検討会の実施~さらなる理解に向けて

これらの森林施業についてさらに理解を深めてもらうために、国有林の間伐現場において新ひだか町・浦河町の議員、林務担当者と当署による現地検討会を実施しました。

この検討会では、高性能林業機械を活用した森林整備の現場において、

  • 間伐の推進と林地未利用材の活用
  • 集約化のための路網の重要性
  • 列状間伐と高性能林業機械による低コスト化
  • 小規模の民有林をまとめることの必要性
  • 林業経営の安定、雇用拡大の促進、地域の林業の活性化

などについて活発な意見交換を行い、効率的かつ低コストな森林施業とその必要性について理解を深めてもらうことができました。  

国有林の間伐現地検討会

国有林での間伐現地検討会

盛り上がる団地化の機運

民有林との連携が進む日高地域

日高管内の位置図

森林共同施業団地の設定に向けて、民国のフォレスターが中心となって、現地検討会等の連携した取組を進める事により、各町で団地化の機運が高まり、要望も出されるようになってきました。

 

新ひだか町と国有林の連携

新ひだか町では、町有林と国有林の配置状況、連携使用が可能な路網の位置がわかる図面を作成し、町有林と国有林が隣接し、集約化が可能な箇所を選定した結果 、 

  • 三石地区(旧三石町)

国有林と河川に挟まれた民有林があり、現在は民有林内に路網が未整備なものの、隣接する国有林の既設路網に連絡する民有林道を新設することで民有林・国有林ともに効率的な森林整備が行え、双方のメリットが見いだせることから、その実現に向けた検討が始まりました。

現在は路網整備費用の負担などについて打ち合わせを行っているところですが、同町及び森林組合と連携し、この民有林の所有者からの理解を得られるよう努めていきます。

  • 静内地区(旧静内町)

国有林とダム敷に挟まれた町有林があり、国有林の伐採計画及び路網の配置状況を精査したところ、残念ながら双方のメリットが見いだせなかったものの、町が施業を行う際には当署が技術的協力や国有林の既設路網の活用などで支援を行うことになりました。このようなことも、これまでの取組があっての成果であると考えています。 

  

浦河町と国有林の連携

浦河町は、急峻な地形が多く、路網整備があまり進んでいない現状から民有林と国有林の団地化による路網整備の効率化に関心を寄せています。

この様な中、

  • 積極的な森林整備を進めるために、民有林と国有林の既設路網を相互に連絡させ、民有林~国有林~民有林~公道へとつなげる広域的な路網を整備し、輸送コストの低減を図ること
  • 民有林と、これに挟まれ孤立団地となっている国有林の森林整備を確実なものとするため、民国連携した路網を作設すること

これらについて双方の意見とメリットが合致したことから、この地区で共同施業団地設定に向けた協議を開始しました。

現在、浦河町と国有林の受益区域を大まかに設定した上で、その費用負担などについて同町及び森林組合と検討を進めているところです。  

民有林での間伐現地検討会

連携した路網整備で効率的な施業の実施を目指します

 

日高流域・路網計画の調整チームを設置

平成26年10月に、日高流域内全体の路網整備計画の調整を行うために、日高振興局と日高北部森林管理署及び当署で構成する「日高地域 国・民林道連絡調整チーム」を設置しました。

このチームは、団地の設定に向けて検討が進んでいる浦河町の森林共同施業団地予定箇所の路網計画にも参画しており、平成26年12月には町・日高振興局・当署の3者で現地踏査等を行いました。

当日は、雪が積もった民有林と国有林の林道を両者の接続予定箇所である尾根沿いまで1時間程かけて踏査し、民・国林道の連絡の重要性を双方の担当者で確認しました。

森林共同施業団地の検討箇所

 森林共同施業団地の検討箇所

団地化へ向けた今後の取組

当署では引き続き森林共同施業団地設定に向け、関係機関と連携し、次のような取組を行っていきます。

  • 間伐等の森林施業を効率的に進めるための伐採計画の作成
  • 路網の計画予定線について森林所有者間の調整
  • 林道等整備に向けての予算措置やその負担割合の調整
  • 新設路網を既設路網へ接続させることに伴う規格構造の調整
  • 関係機関と連携し新たな共同施業団地設定に向けた候補地の現地踏査

また、管内の自治体や振興局と連携し、民有林・国有林相互での間伐等森林施業地の現地検討会の実施、あわせて地域住民・学校関係者への森林整備の必要性等についての普及啓発にも取り組んでいきたいと考えています。

地域の信頼を得ながら

地域において様々な取組を進め、森林・林業を再生して行くためには、地域住民の理解と信頼を得ることが大切です。

そこで、地域に根ざす国有林・森林管理署を目指し、新ひだか町において「林業体験イベント」を、同町教育委員会との連携で開催しました。

このイベントは、同町の小学生と保護者を対象として、森林・林業に関心を持ち、理解を深めてもらうために行ったもので、当日は34名が参加しました。

会場である国有林へむかうバスの中で、参加者の皆さんは山の中腹を走る林道の車窓から見下ろす深い沢の景色に「スリル満点!」と盛り上がり、また車中での職員からの「森のお話」にこれから始まる林業体験に期待を膨らませていました。

現場に着くと、木の香が漂う土場において、普段めったに見ることがない、丸太を高く積み上げた「椪(はい)積み」が連なる光景を見学、木材の利用方法などについての説明を行い、昼食を挟んで枝打ち体験を行いました。

枝打ちする子ども

ノコギリで枝打ち体験

 

火起こし

古代の火おこしを体験

子どもたちはノコギリ使って楽しそうに枝を切り落とし、とても喜んでいました。また、古代の火おこしを体験してもらい、起きた火で焼き芋を作りをしました。

うまく焼けるもの、真っ黒になるもの大変盛り上がりました。

このような次代を担う子どもたちに、森林・林業を伝えていく機会も大切にしていきたいと考えています。

国有林フォレスターとして 

地域の民有林・国有林が一体となり、効率的で低コストな森林施業に取り組まなければ、森林整備が進みません。

その中で国有林フォレスターとして、地域の森づくりのマスタープランである「市町村森林整備計画」の作成支援に積極的に関わるとともに、国有林のフィールドを活用し地域のみなさんに森林づくりの取組やその技術をわかりやすく説明・PRし、森林・林業への理解を広め、日高流域の全体の林業の活性化のための牽引力になりたいと思っています。

佐藤森林技術指導官

国有林フォレスター

日高南部森林管理署

森林技術指導官 佐藤 充


日高南部森林管理署

北海道日高郡新ひだか町静内緑町5丁目6 - 5

電話: 050 - 3160 - 1720

ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/hidakananbu/


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森林整備部技術普及課
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