「平蔵沢ヒバ人工林施業展示林」が林業遺産に認定されました
当署管内、岩手県滝沢市の影添(かげぞえ)国有林に所在する「平蔵沢(へいぞうざわ)ヒバ人工林施業展示林」が(一社)日本森林学会が選定する「林業遺産」に認定・登録されました。
この林分は、江戸期天保14年(西暦1843年)ごろ現在の青森県五戸から移り住んだ牧田(ひらた)平馬という人物が、平蔵沢がマツ、スギ、ヒバの適地と見込んで農業の傍ら造林を始めたと伝えられています。牧田氏は農業用水の灌漑事業を手掛けるなど地域の有力者であったようです。
平蔵沢の造林地は、明治期になると大林区署の官林に変入され、現在まで国有林として管理されています。
現在の林況は、植栽されたヒバが現存し、大径木が主体の鬱蒼とした天然林の様相を呈するとともに、下層ではヒバ特有の伏条更新や実生による天然更新が観察されます。
森林内の様子 | ヒバの稚樹 |
ヒバの産地とされる青森県においても、ヒバの人工造林が開始されたのは明治以降であり藩政期の人工林は稀少であることから、青森営林局(現東北森林管理局)では管内最古のヒバ人工林として昭和30年に「学術参考林」に指定、平成元年の「保護林の再編・拡充」の中で「施業技術の開発とその定着及びPR、教育等の場として活用する」ことを目的として「展示林」に再編・設定され、現在の国有林野施業実施計画においても展示林に指定されています。また、岩手県が実施した「岩手県自然環境保全調査」では、この森林を「特定植物群落(高齢人工林)」としています。
当署では、北上川上流森林計画区地域管理経営計画及び国有林野施業実施計画に基づき当該森林を適切に保全・管理し、展示林として展示・保存を図り、森林観察、研修、森林教室、学術研究等の場に活用しています。
この森林の植生、林分状況の変化、ヒバ高齢人工林の生長解析等の調査・研究が東北森林管理局職員、森林総合研究所等の研究者等により行われてきています。
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ドローンからの空撮(赤破線内がヒバ人工林) |
ヒバによる人工造林の先駆けとして地域の林業の歴史を後世に伝える貴重な森林であり、今後とも各種調査を継続することにより、ヒバ人工林施業技術の指標や体系化に資することが期待されます。
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林内への入り口 | 案内図 |
盛岡市中心部から近く、滝沢市役所から3キロメートルほどとアクセスが容易ななだらかな森林ですので、手軽に森林環境や郷土の林業史について学習できる場所としても貴重です。駐車場・案内板もありますので散策してみてはいかがでしょうか。
【注意事項】
*蜂やヘビ、クマなどの危険な生物がいる場合がありますので、ご注意ください。
*林内では転倒や落枝の恐れがあります。足元、頭上などにご注意ください。
お問合せ先
盛岡森林管理署
ダイヤルイン:019-663-8001
FAX番号:019-663-8172