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東北森林管理局

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    宮城北部森林管理署(令和2年11月)

    「ここは温泉地」

    首席森林官 児玉 俊一

     

    私の勤務する鳴子森林事務所は、宮城県北部の中央付近、東西に細長い大崎市の西部、秋田県や山形県との県境を含む地域に位置しています。
    この地域は、2006年に市町村合併するまでは、鳴子町と呼ばれており、東北有数の温泉地である鳴子温泉郷や、直径15kmのカルデラである、
    鬼首カルデラを有しています。
    カルデラ外壁

    ご存じの方も多いと思いますが、鳴子温泉郷とは、鳴子温泉、東鳴子温泉、川渡温泉、中山平温泉、鬼首温泉の5カ所の温泉地からなっており、
    これらの温泉地が、この地域の町並みや景観に大きな影響を与えています。つまり、いわゆる温泉街というやつです。私はこれまで、いくつかの
    森林事務所に勤務してきましたが、ここまで温泉地のそばにある事務所は初めてです。時折、風に乗ってやってくる硫黄の臭いに不思議な感慨を
    覚えます。
    また、私事ですが、この地に赴任してきた際、引越の荷物が届いたその日に、床下からの水漏れを補修するために、フローリングを剥がす工事
    が始まりました。原因は、温泉に含まれる成分により、水道管が腐食していたから、だそうです。聞いた話によると、自動車も海岸より錆びやす
    いそうです。このせいで、新生活を立ち上げるのに、少し時間がかかってしまいました。温泉の意外な効能を知った瞬間でした。
    さて、町並みの景観に影響しているのが温泉ならば、山の景観に影響を与えているのが、鬼首カルデラです。鬼首カルデラは直径約15kmのカル
    デラで、カルデラ内にも山があります。また、カルデラ外周部と内部の山の間が三日月型の平地になっており、集落や農耕地等が点在しています。
    管内の国有林の大部分が、カルデラ外周部の山地と、内部の山にあるため、管内図を見ると、国有林の真ん中に大きな三日月型の民有地があると
    いう複雑な配置になっています。外周部の山は、場所によっては、かなり急峻な地形になっており、平野部から見上げると、巨大な壁に囲まれてい
    るような錯覚を覚えることもあります。
    先に述べたように、この地域は多数の温泉がある温泉地なのですが、このような地域には、時折、火山性のガスが噴出し、その影響で草木が生え
    ず、地表面がむき出しになっている地獄と呼ばれる場所があります。
    荒雄岳にある地獄 森の中の火山性ガス

    管内にも何カ所か、そのような場所があり、火山性の毒ガスを噴出しているようですが、それとは別に、突如、森林内に毒ガスが噴出している場
    所があります。より正確に言えば、森林内を流れる沢にあるのですが、赴任当初、私はこれに驚かされたことがあります。結論から申しますと、山
    火事と間違えて慌ててしまったのですが、その際、一人だったことと、少し林内に入る必要があったことから、すぐ側までは行きませんでした。
    後ほど聞いたところ、知らずに近づくと死ぬ可能性もあったということでした。それなりに森林官経験も長く、山を知った気でいましたが、まだま
    だ知らないことがあるのだなあと気付かされた経験でした。
    特に安全面では、折に触れ注意喚起がありますが、私たちは、ものごとに慣れてくると、とかく油断しがちです。このときは、特に被害も無く、
    事なきを得ましたが、油断の先には、落とし穴があることを忘れないでいようと思います。