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東北森林管理局

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    米代西部森林管理署(令和2年9月)

    「きみまち阪」・「七座山(ななくらやま)」

    首席森林官  佐渡恒幸

     

    私が現在勤務している二ツ井森林事務所(粕毛・二ツ井担当区)は、秋田県の北部に位置しており、能代市と藤里町の国有林・約12,680 haを管理しています。
    皆さんもご承知とは思いますが、管内北部の青森との県境には、1993年にユネスコ世界自然遺産に登録された「白神山地」があります。
    二ツ森自然観察教育林(世界遺産地域の緩衝地域)では、日本海からの季節風を受ける原生的なブナ林を通りダケカンバ・ミヤマナラなどの低木林を抜けると、頂上付近にはチシマザサの群生が見られます。天候にもよりますが、私は運よく山頂から白神岳・向白神岳・小岳・藤駒岳、そして日本海に浮かぶように見える男鹿半島を眺望することができました。
       白神山地が有名となり、当管内には登山客も含め多くの方が入林されるので心配の種が尽きません。小岳登山道入り口までは、国有林に入り20km以上林道を進みますので事故等も気掛かりです。また、ゼンマイ等の山菜採りも多く、昨年・今年と連続して遭難者があり心配です。今はタケノコのシーズンも終わり少し気は休まりますが、ニホンジカがセンサーカメラに映るなど、新たな心配事に気を引き締めているところです。
    さて、白神山地の影に隠れてしまってか、中々知名度が上がらないように感じるスポットをこの手紙で紹介させていただき、当管内に足を運んでいただければと思います。
    一つ目は「きみまち阪」です。能代市二ツ井町にある県立自然公園で、紅葉の名所となっています。何ともロマンチックな名前ですが、明治14年、東北巡幸していた明治天皇が、この地で皇后からの手紙を受け取り読んだと言われています。手紙には「大宮のうちなにありてもあつき日をいかなる山か君はこゆらむ」(皇居の中にいても暑い日ですが、どのような山をあなたは越えていらっしゃるのでしょうか)という歌がしたためられていたといいます。ここの景色にも感動した明治天皇が、翌年に宮内省を通じて「きみまち阪」と命名したものです。
    二つ目は「七座山」(ななくらやま)です。七つの峰が連なる美しい稜線を、大きく蛇行する米代川の対岸の「きみまち阪」から望むことができます。藩政時代には「御直山」(おじきやま)として藩が管理運営する山林として保護され、国有林となった現在では見事な天然秋田杉と広葉樹との
    混交林となっています。当時、御直山として大切に守られてきたのは、すぐ下に川が流れていたからと言われています。幕府から緊急の木材納入の命令があれば、ただちに川を利用し木材を運ぶことができるという地の利があったからです。七座山登山道の貸付の踏査時などは、昔は行者の修行の場だったと言われる「法華の岩屋」や「権現様」等を通りますが、そこの岩肌が蜂の巣状の窪みが無数にある岩となっていて、人知を超えた神秘さを感じずにはいられません。
    「きみまち阪」が恋のパワースポットならば、「七座山」は時空を遡るパワースポットのようにも感じます。
    リフレッシュのためにも、当森林事務所管内「きみまち阪」・「七座山」とも秋田自動車道「二ツ井白神IC」から10分程度ですので、ぜひ一度お立ち寄り下さい。



    二ツ森から見える男鹿半島 七座山の蜂の巣状の岩