森林官からの手紙
岩手南部森林管理署(令和2年5月)
身近な存在へ
森林官(石鳥谷担当区)遠藤 祥五 |
私の勤務する石鳥谷森林事務所は岩手県花巻市の北部に位置しており、花巻市の一部にあたる約6千HAの国有林を管轄しています。
当森林事務所から東側には北上山地、西側には奥羽山脈を眺めることができ、すぐ近くには東北地方で最大の北上川が流れている景色の良い場所です。花巻市といえば宮沢賢治のゆかりの地として有名ですが、その他にも郷土芸能や歴史などの文化財も多く見どころがたくさんあります。
また、石鳥谷町は、日本三大杜氏の一つである南部杜氏の里としても知られています。
さて、当森林事務所管内の国有林についても一部紹介したいと思います。
事務所から北西側にあたる葛丸川山国有林には、山懐から流れだす葛丸川があり、四季を通じて美しい景観をなす「葛丸川渓流」として地域の人々に親しまれています。また、宮沢賢治の童話の舞台でも知られているところです。
葛丸川中流には、国内でも珍しい「親子ダム」と呼ばれる2つのダムの片方があります。この親子ダムの特徴は、葛丸ダムと山王海ダムの2つのダムが導水トンネルと取水トンネルによって繋がっている点です。親子ダムは、下流の広大な農業地帯に安定した水を送るために、昭和19年頃から国営の事業として行われてきました。下流に位置する大瀬川地区はもとより、隣町まで水田が広がっている状況を見ると、ダム建設による恩恵を受けていることがわかります。
新緑の葛丸川 | 葛丸ダムと葛丸川山国有林(ダムの左上側) |
さらに、葛丸ダムから下流に進むと「たろし滝」という名称で知られる、厳冬期に姿を現す珍しい滝があります。
この地方では、「つらら」のことを「たろし(垂氷(たるひ)がなまって)」と言います。沢水が寒さによって山の中腹で
凍りつき、高さ約13m 、太さ数m の巨大な氷柱が形成されます。これが「たろし滝」です。この「たろし滝」の太り具合によって、その年の稲作の作柄を占う習わしがあり、昭和50年から毎年測定しています。氷柱の太さの過去最大は、昭和53年の
8.0mと言われています。今年の2月11日の「たろし滝」の測定会の結果は氷柱が滝つぼまで届かず測定不能となりました。
たろし滝の氷柱 |
一部の紹介となりましたが、地元住民の方々との連携や協力があって森林官業務または国有林の事業が成り立っており、より身近な国有林となるよう気を配りながら今後も業務に努めたいと思います。
最後に、当森林事務所の管内は、川上は自然豊かで川下は文化的ですばらしい場所です。また、市内にはいわて花巻空港や新花巻駅、花巻IC、国道4号線とアクセスも良いですのでぜひ一度お立ち寄りください。