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東北森林管理局

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    盛岡森林管理署(令和2年3月)

    獣害対策を通じた地域交流

    紫波担当区  森林官
    塚本  愛

     

       私の勤務する紫波森林事務所は、岩手県中部に位置し、主に紫波町と矢巾町の国有林を管轄しています。紫波町には果樹園が多く特にブドウ栽培が盛んで、最近では美味しいワインも多数醸造されています。また、水争いの終結を記念して堰堤にツツジで「平安山王海2001」と文字がかかれた珍しい山王海ダムがあります。矢巾町には宮沢賢治も登った南昌山があり、「頂上が曇れば雨が降る」という言い伝えのある山です。南昌山は付近の赤林山・毒ヶ森・東根山と合わせて登山コースが設定されており、山開きの際には私も含め多くの登山客が訪れます。南昌山頂上での景色を堪能した後、マタギが猟の安全祈願を行ったとされる幣掛けの滝の清涼な空気を感じ、矢巾温泉で登山の疲れをとる、晴れた休日には程よい癒しとなること間違いなしです。

     

     
                            幣掛けの滝


       そんな南昌山の麓で県が設置する「いわて林業アカデミー」は林業事業体の経営の中核となり得る技術者を養成しています。当署でも同アカデミーの要請により、研修生へ事業フィールドを活用した獣害対策の講義を行っています。また、県や市町村を集めた現地視察や高校生への説明会など獣害対策への理解をより深めてもらうため、多くの場面でフィールドを活用しています。

     

     
        獣害対策の講義(いわて林業アカデミー)



     
                   自動撮影されたニホンジカ

       事務所管内の虫壁国有林は、苗木に対する食害がひどく、設置したセンサーカメラにニホンジカが多く写り対策が必要でした。そこで、現在は箇所ごとに斜め張りネット柵・金網柵・PEネット柵の3種類の防鹿柵を設置し、それぞれの比較対照調査を行っています。

       講義では、センサーカメラに写った写真やニホンジカの頭骨を使って生態について知ってもらい、また実際に現地で食害箇所を見て、その被害の深刻さと対策の必要性を肌で感じてもらいます。その後、獣害対策として設置した3種類の防鹿柵の素材の違いによる材料費・人工数・メンテナンスの頻度等、それぞれのメリット・デメリットなど、防鹿柵の有用性に触れてもらいます。

       岩手県の南部や宮城県付近の海岸沿いでは多くみられるニホンジカも、紫波管内ではまだ少なく、現地視察に来たほとんどの人が動物園や観光地で見たシカの印象が強く、山での被害やその生態についてよく知りません。国有林を活用した研修や講義を通じて、今後の獣害対策に少しでも役にたてば大変うれしく思います。