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東北森林管理局

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    庄内森林管理署(令和2年1月)

    地域の伝統とのコラボ

    温海担当区  森林官
    大石  恭史

     

      私の勤務する温海森林事務所は、山形県沿岸部の最南端に位置し、新潟県村上市と接する鶴岡市温海地区の国有林を管轄しています。東に摩耶山、西に温海温泉や漁港があり山と海に囲まれた自然豊かな山形県の観光スポットになっては、日本海や山々・田畑の四季折々の風景をいる地域です。通勤時や現場への移動中などに楽しみながら運転をしています。また、海産物やお蕎麦・ラーメンなど「食の都庄内」の一端を担うおいしい食べ物にも出会えます。

     
                      摩耶山山頂からの眺望


      さて、庄内地方の代表的な作物と言えばお米ですが、ここ温海地区では「温海かぶ」と呼ばれる赤紫色で平べったい形が特徴のかぶが有名です。昨年、帰省の土産用にと職場の同僚からいただいた「温海かぶ」の漬物は大変美味しく、家族や友人にも大好評でした。
     その栽培方法は400年もの伝統がある焼畑農法で、スギの伐採跡地に火入れした後に種まきをするというものです。連作障害を起こすかぶ栽培の土地探しを補いつつ、伐採跡地の地拵えを省力化できるという農業と林業が結びついた、まさに一石二鳥の農法です。
     そのような先人の知恵に感心していた矢先、前年度スギを伐採した跡地(保安林外)に地元から焼畑敷の貸付要望がありました。伐採跡地とはいえ国有林に火入れすることになるため、話を受けた当初は不安でしたが、貸付のための条件を一つ一つクリアし、7月に契約を交わすこととなりました。お盆前の火入れ当日はうだるような暑さで、まさに炎天下での実施となり、監督員としての立会いとはいえ、流れ出た汗の量は山登り以上のものとなりました。


             温海かぶ                        焼き畑の火入れ



      
    火入れ後すぐに播かれた種は順調に生長し、秋の収穫も豊作で、土地を提供した側としても一安心といったところでした。一方、伐採跡地も火入れのため整理され、将来の地拵え作業も少なくなり、お互いにとって実りのある契約になったように思います。
     今回のような事例は地元の要望があって実現したものですが、森林官として管轄地域の特色や伝統を意識して業務することの大切さをあらためて学びました。今後も国有林だけでなく、地域の産業や生活・風習などにも気を配りながら業務にあたりたいと思っています。
      復旧工事は今も地区全域で続いており、地域は再生しつつあります。災害公営住宅は完成し、新たな役場支所も建設中です。年に一度催される『あっか感謝祭』では緑の中に地域の皆さんの笑顔にそれを感じます。
      国有林だけが止まってはいられません。被災した森林事務所や林道の復旧も一朝一夕とはいかず、事業もままなりませんが、少しずつでも前進しなければなりません。