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東北森林管理局

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    三陸北部森林管理署久慈支署(令和元年12月)

    安家の郷  ただいま復活中

    安家担当区  首席森林官
    野場和恵

     

      私の勤務する安家森林事務所は、岩手県北上山地の東部に位置する本州一広い町である岩泉町の安家地区にあり、同地区内約12,700ha及び隣接する普代村内約280haの国有林を管轄しています。

     
                             春の安家森


      東西に長い安家地区の真ん中を貫くように流れる安家川の流域には、絶滅危惧種であり町の天然記念物に指定されているカワシンジュガイが生息しているほか、希少な動植物が多く生息しています。また、安家地区から町内岩泉地区にかけて延びる石灰岩層には多数の鍾乳洞が知られ、未探査箇所も多く存在するそんな美しく神秘にあふれた自然豊かな地域です。
      安家川に沿って点在する集落を取り囲むように広がる国有林は地域と密接なつながりを持ってきました。林業はもちろんですが、それだけではありません。

                          放牧中の牛たち



      
    安家の地形は急斜地が多く、広い農地が確保できないことから主な産業は畜産業となっています。安家地区の国有林には放牧共用林が多く、かつて林内を放牧された牛たちが自由に行き来していたとか。今でこそ彼らのその姿は見られませんが、現在は管内の最高峰安家森(1,239m)付近も含む高原地帯に大きな放牧地が数か所(貸付地)あり、放牧された牛たちが悠々と草を食んで夏を過ごし、秋には里に下り冬を越します。
      赤く辛みの強い『安家地大根』や、かつては各家で育てた大豆で手作りしたというずっしりとした『岩豆腐』のほか、きのこや山菜などの森の恵みを生かした食文化と神楽や獅子踊りなどの伝承文化などこれらが安家地区を豊かに彩っています。

                             安家地大根



      平成28年の夏、台風10号が猛威を振るい、安家川はかつてない氾濫を起こし、多数の住居が濁流に飲まれ、県道、町道は寸断され、安家川の川端にあった森林事務所もひとたまりもなく流失し、管内の林道もその多くが通行不能となりました。

                        復旧が進む安家川

     

      復旧工事は今も地区全域で続いており、地域は再生しつつあります。災害公営住宅は完成し、新たな役場支所も建設中です。年に一度催される『あっか感謝祭』では緑の中に地域の皆さんの笑顔にそれを感じます。
      国有林だけが止まってはいられません。被災した森林事務所や林道の復旧も一朝一夕とはいかず、事業もままなりませんが、少しずつでも前進しなければなりません。