津軽森林管理署金木支署(平成30年7月)
十三湖のほとりにて
首席森林官(今泉担当区) |
私が勤務する今泉森林事務所は、津軽半島の中央よりやや北の太平洋側、すぐ傍に、シジミで有名な十三湖を望む、旧中里町(現中泊町)北部に位置しており、南北それぞれに隣接する、標高の高い山と山の間の、ちょうど標高が低くなっている辺りが、管内となっています。
管内は、特に風光明媚な景色、貴重な自然の宝庫というわけでもなく、ましてや、この辺りにしか無い貴重な植物があるというような話も聞いたことが無い、そんなところです。
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十三湖越しに見る管内 |
これだけ聞くと、外れくじを引いたような印象しか残らないかもしれませんが、比較的、平坦な地形が多いせいか、林道が細かく走っており、ほとんどの人工林が林道から近い箇所にあるため、効率的に事業を行うことに適している、そんなところでもあります。
このように、事業箇所が道路から近いため、金木支署管内で実施している森林教室の、屋外の作業箇所として、よく利用されています。
この森林教室は、地元の中学校の一年生を対象として、初夏の頃にヒバの空中取り木苗の作成、秋口にその苗を山に植栽し、二年生になった翌年の夏に、下刈り体験を行うという内容で、一連の作業を通して、青森県の重要な木であるヒバ、山や山の仕事に対して、少しでも興味を持ってもらうことを目的に実施しています。
実際に生徒達と作業をしていると、いつの間にか染みついていた、職場における常識が、あまり一般的なものではないということ、自分も始めは何もできなかった記憶など、改めて思い出され新鮮な気持ちになることができました。
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森林教室 |
始めは表情も堅く、ぎこちなかった生徒達が、作業が進むにつれ、どんどん上達し、笑顔が増えていく様子を見ていると、楽しんでもらえて良かったという気持ちと、山の作業と楽しい記憶を結びつけることで、将来山の仕事に就いてくれるのではないかという気持ちが、半々に心を占めました。
最後に、少し印象に残っていることがあるので、それについて書きたいと思います。
私は、去年の四月に、この事務所に異動してきましたが、着任早々、現場でクマを目撃しました。秋田辺りだと、特に珍しいことではないかもしれませんが、この辺りでは「津軽半島にはクマはいない」ということが定説となっていたようで、山菜採りに訪れる人達も、特にクマ対策はしていなかったそうです。
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クマに注意 |
ところが、ここ数年、目撃情報が相次いで寄せられたことにより、「津軽半島にもクマはいる」という認識の浸透とともに、「実は気配を感じたことがあった。でも、クマはいないから気にしないようにしていたけれど、やっぱりいたんだ。」という内容の話を、地元の方からよく聞くようになりました。
よく、テレビ等から「人は見たいものを見て、信じたいものを信じる」というようなフレーズを聞きますが、まさに、それなのではないかと感じました。同時に、とても怖いことだと感じました。一歩間違えれば、クマに襲われていたかもしれません。事実を、しっかり確認することが大切であると、実感した出来事でした。
これから仕事を続けていく中で、しっかり事実や状況を確認して、思い込みからクマに襲われることのないようにしていきたいと思います。