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東北森林管理局

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    由利森林管理署(平成30年5月)

    鳥海地域名物「松皮餅」について

    森林官(笹子担当区)
    藤原  哲生


     


     

      私は現在、由利森林管理署笹子(じねご)森林事務所に勤務しています。秋田県由利本荘市鳥海町の東部に位置し西に鳥海山、南は山形県の県境に接していて冬になると積雪が2m~3mあり除雪が大変ではありますが、冬以外の季節は気候も穏やかで大変のどかなところです。

                          桑の木台湿原から望む初夏の鳥海山

     

      そんな秋田県由利本荘市鳥海町地域にのみ古から伝わる「松皮餅」を紹介したいと思います。
      松皮餅の由来は、天明の大飢饉の際に救荒食として用いた説と矢島藩主の生駒氏が改易前の四国で兵糧攻めの際に作り出したという説があるようです。

                                       松皮餅

     

      作り方は、アカマツの樹皮を数日間煮込みアクを取ります。次に樹皮の内側の繊維をはぎ取り、その繊維を細かくなるまで棒で叩き、それを餅に混ぜ込み餡子を包んで完成。と、かなり手間暇をかけたお菓子です。
      見た目は、うすい小豆色で餅に混ざったアカマツの樹皮の細い繊維がうっすらと見える大福餅です。味は甘さ控えめ、普通の大福餅とほぼ一緒で繊維が味や食感を損なうことはありません。松の木は縁起物であるため、お祝いでお供え物として、雛祭りでは白餅、蓬餅、松皮餅の三色の菱餅として作られるそうです。
      私が知りうる限り、樹木の食材としての利用は、果実(柿、栗等)、葉(桜餅、モミジの天ぷら等)、樹液(メイプルシロップ等)があり、漢方薬としてはキハダの樹皮がありましたが、食材としての使用は初耳でした。
      林業に携わるものとして、樹皮を食材として活用していることがとても新鮮に思うとともに樹木の可能性は奥深いと感じました。松皮餅は、鳥海地域の道の駅や産直等で三個入り一パック三百円で購入できます。もし、鳥海地域にお越しの際は、歴史と伝統と樹木の可能性を味わってみてはいかがでしょうか。

                                     葉桜と筆者