岩手南部森林管理署遠野支署
「署長が語る!」
平成29年9月
岩手南部森林管理署遠野支署
支署長 小笠原 孝
〇管内の概要
当支署は、岩手県の南東部に位置し、遠野市、花巻市(旧東和町・旧大迫町)にまたがる約3.6万haの国有林を管理経営しています。
管内の国有林の大部分が北上髙地に位置し、北側にある早池峰山から東西に連なる峰峰が遠野盆地の東西南方向を囲むように配置されています。
平野部では稲作やブドウやリンゴ等の果樹、ホップ等の栽培等が盛んに行われており、その中を早池峰山・薬師岳周辺を源流域として発する稗貫川・猿ヶ石川が大小の河川と順次合流しならがら貫通しており、地域の水がめとして重要な役割を担っています。
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夏の早池峰山 | 冬の薬師岳 |
〇管内の気候
遠野市は、年平均気温が9.5度と岩手県内でも寒冷帯に属し寒暖の差が激しく、厳冬期には氷点下17度に達することもあります、また遠野は盆地で周囲を山々に囲まれているため霧が多く発生します、日が昇ると何事もなかったように消えてしまいますが、水分を多く含んだ霧が森林や農作物等の生長には欠かせません。
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遠野盆地 | 朝霧 |
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ホップ畑 |
〇管内の特徴
早池峰山周辺地域では、ブナ林を主体とする原生的な天然林が残されており、貴重な動植物が生息しているため、森林生態系保護地域として保護管理するとともに、早池峰山周辺地域を核として、北上髙地の分水嶺沿いに幅約2kmで「北上髙地緑の回廊」が設定されています。
また、緑の回廊から山麓部にかけては、スギ・カラマツ・アカマツ等の人工林・天然林からなっており、その中でもアカマツ・カラマツの人工林が全体の55%を占めています。
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ハヤチネウスユキソウ | チングルマ |
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樹種別面積割合 | 安定的な原木の供給 |
〇地域と連携した森林保全管理等の推進
・遠野市・NPO法人遠野エコネットと「遊々の森」の協定を締結し、「水源の森づくりプロジェクト」に参画しています、遠野市立土淵小学校4年生を対象とした森林環境教育を実施し森林の果たす役割等を学ぶと共に、歴代の4年生がドングリから苗木を育て、次年の4年生がその苗木を植樹し、またドングリから苗木を育て次年の4年生にに繋げていく活動を行っています。
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ドングリの種まき | 育てた苗木の植樹 |
・田瀬ダム森林探検隊、「森と湖に親しむ旬間」行事の一環として、一般住民の方々を対象にした森林環境教育活動を実施しています。
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森林探検隊 | 森林探検隊 |
・遠野市からの要請を受け、遠野市立附馬牛小学校において森林教室や現地学習などの森林環境教育活動を行っています。
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森林環境教育 | 森林環境教育 |
・岩手県・遠野市・森林組・ボランティア団体等と連携し、国有林・公有林に係る公道及び林道沿線付近の不法投棄物クリーン活動並びに啓発活動を行っています。
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不法投棄物の運び出し | 不法投棄物の運び出し |
・早池峰地域保全対策推進事業の一環で移入植物駆除活動に参加しています。
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オオハンゴンソウ | セイヨウタンポポ |
〇民有林関係者との連携
・地域林業の各種施策の推進に当たり、関係行政機関等との情報共有・連絡等を密に行うことにより具体的な取組の促進を図ることを目的に遠野地区林政連絡会を各機関の持ち回りで開催しています。
また、昨年度から花巻地区とも連絡会を開催しています。
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遠野地区 | 花巻地区 |
・各種現地検討会の開催
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採材現地検討会 | 鉄鋼スラグ |
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列状間伐及び森林作業道 |
〇ニホンジカ対策
・ニホンジカによる樹木被害が拡大している中で、生息状況や被害状況の把握を行うとともに、囲いワナを設置しての捕獲事業や冬期間のニホンジカ狩猟支援のための林道除雪を行っています。
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囲いワナの設置状況 | 林道除雪の状況 |
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シカの捕獲状況 |
〇遠野物語
「此の話はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり。」で始まるこの文章、言わずと知れた遠野物語の序文です。作者の柳田国男は、友人の紹介で上京していた佐々木喜善のもとを数回にわたり訪ね、遠野に伝わる言い伝えを聞き書きし本をまとめた言われています。
物語は、当時の遠野地方に伝わる言い伝えや、人々の暮らし、山との関わり等々119話が集録されています。しかしながら今から100年以上前の話、当時とは生活様式等すっかり変わってしまいましたが、当時の行事・風習は今でも人々の生活に脈々と引き継がれています。
物語の中では、峠にまつわる話が多々出てきます、特に沿岸部に通じる笛吹峠・仙人峠、界木峠等に係る話が中心になりますが、交通手段が発達していない時代これらの峠道は「塩の道」と呼ばれ、内陸と沿岸を結ぶ交通交流の要衝として重要な役目を果たしていました。
内陸部からは米や炭を、沿岸部からは塩や魚介類を、駄賃付けと言われる人々が馬や牛に荷を担がせこれらの峠道を往来していたと言われています。
・笛吹峠
峠に山男、山女が出没するため、峰伝いに北側に位置する界木峠へ迂回するようになった話等に登場します。現在、峠部分に義経伝説の看板があるだけです。
(現在、昨年の台風10号による被害で笛吹峠に向かう道路は現在通行止めになっています。)
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現在の笛吹峠 |
・界木峠
笛吹峠から迂回し利用されるようになった界木峠も笛吹峠の整備、仙人トンネルの開通等により、寂れてしまいました。
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現在の界木峠 |
・仙人峠
仙人峠の由来は、かつてこの山々に仙人が住んでいたからとも言われていますが、定かではありません。
この峠は、九十九曲の急坂と称されて内陸と海岸を結ぶ結ぶ最短ルートであったにもかかわらず、笛吹峠道が使われることが多かったようです。
JR釜石線や国道283号線の仙人トンネルが開通すると峠越をする人もいなくなり、現在は歩道が往事の人々の往来を偲ばせます。
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現在の仙人峠 | 峠道 |
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仙人トンネル |
物語に登場する山々
・早池峰山・六角牛山・石上山
早池峰山・六角牛山・石上山は、遠野三山として物語の中で紹介されています。
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早池峰山(右) | 六角牛山(界木峠側から) |
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石上山 |
・白見山(白望山・しろみ山)
マヨヒガへ迷い込んだ舞台ともされている白見山ですが、白見山につながる峰には風車も整備され、また山麓は採草地として利用されており、道に迷うような鬱蒼とした森の姿はそこにはありません。
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白見山 | 風車群 |
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荒神神社 |
今回、紹介した場所は国有林に関係する場所ですが、遠野市内にはこのほかにも遠野物語を連想させるような場所や建物など多数残されています。機会があれば訪ねてみてはいかがでしょうか。
お問合せ先
岩手南部森林管理署遠野支署
〒028-0515 岩手県遠野市東舘町7-39
TEL:0198-62-2670
FAX:0198-62-9628