西紋地域における造林事業量と雇用の見通し~民有林と連携し実態調査
~人工林資源の充実を踏まえた請負事業体の現状と今後の課題~
【網走西部森林管理署 西紋別支署】
網走西部森林管理署 西紋別支署では、管内における人工林資源の充実による伐採量の増加を踏まえ、将来の造林作業を担う民間事業体の現状と見通しを民有林関係者と情報共有し、調査を実施したのでその概要を紹介します。
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渚滑川流域の森林を守り育てる
網走西部森林管理署西紋別支署は北海道の北東部、オホーツク海側にある滝上町と紋別市に存する約8.4万haの国有林野を守り育てています。(管轄する区域は、興部町・雄武町・西興部村を含む1市3町1村)
これらは主に大雪山系天塩岳を源とする渚滑川流域に位置し、地域の生活・環境を支える重要な森林です。


芝桜が咲き誇る滝上町
西紋別支署は、芝桜が咲き誇る「芝ざくら滝上公園」で有名な滝上町にあります。
三方を山に囲まれた滝上町は、天塩岳に源を発した渚滑川がサクルー川、オシラネップ川等の各支流を集め貫流する農耕適地を構成しています。
主産業は小麦、スイートコーンなどの農業、乳牛を中心とした酪農、そして町の面積の90%を占める豊富な森林とその資源を背景とした林業、木材産業です。
このような町で、当支署では22名の職員が国有林野の管理経営にあたっています。
人工林の成熟~間伐から主伐へ
管内国有林の人工林齢級別面積

※齢級(人工林)は林齢を5年の幅でくくった単位。苗木を植栽した年を1年生として、1~5年生を「1齢級」と数える。
※今後、赤丸で囲んだ部分の人工林が利用(伐採)期をむかえます。
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昭和30年代以降に植えられた人工林が多いことから、これまでは間伐(※1)を中心とした森林整備事業に重点が置かれてきました。
このため、主伐(※2)が少なく、その更新作業となる苗木の植付(=再造林)を行う面積が少ない状態で推移してきています。
しかし、今後はこれらの人工林が成熟期をむかえ、その資源の充実に伴い、主伐、そして再造林が増加していくことになります。
一方、苗木の植え付けなどの作業を担っている民間事業体(=造林事業者)は、比較的雇用規模が小さいことが多く、その作業に従事する人たちの高齢化が進んでおり、さらに苗木の植え付けや下草刈りは適した期間が限られることから年間を通じた作業量も確保しづらいため、短期の不安定な雇用も一部にみられる等、造林事業の担い手として非常に厳しい状況となっています。
※1 森林内に生育する林木の密度を調節し、その生育を助けるため、林木の一部を間引きすること
※2 一定の林齢(=木の年齢)に生育した立木を、木材等として販売するために伐採すること(→伐採後の更新作業として苗木の植え付け(=再造林)を行う)
国有林は造林事業量増加の傾向~民有林は?
今後5年間の管内”国有林”の
造林事業量の推移予測

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管内の国有林では今後、人工林の成熟により主伐が増加することから、再造林と下草刈りなどの造林事業量の大幅な増加が見込まれます。
さらに、この地域で造林事業を行っているのは国有林だけではありません。
民有林でも主伐(※2)が行われており、それに伴って相当量の造林事業が行われています。
地域の造林は大丈夫?
しかし、前述のとおり管内の造林事業の担い手は現状でも厳しい状況にあります。
はたして、今後、造林事業量の増加に対応できるのか?という心配があります。
国有林フォレスターが実態調査~地域の全体像把握へ

森林整備計画実行管理推進チーム合同会議
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そこで、当支署では国有林フォレスターが中心となって、「管内の民有林の造林事業量がどのように推移していくのか?」、「民有林の造林事業量が国有林同様に増加した場合、既存の造林事業者が現在の雇用規模から対応できるのか?」などを検証するために、民有林(道有林・市町村有林・私有林)と造林事業者について次のことを聞き取り調査することにしました。
- 民有林でも今後、国有林同様に主伐が増加する見通しなのか?
- 民有林での今後5年間の造林事業量の見通しはどの程度なのか?
- 今後の造林事業量は既存の雇用の受け入れ可能範囲内なのか?
そして、その結果をもって北海道、管内市町村の林務担当者や各地区森林組合等の関係機関と情報を共有した上で、意見交換し解決すべき課題があればその改善に向けた取組を行っていくこととしました。
聞き取りから分かってきたこと
道有林、市町村有林、私有林の所有者等のみなさんに聞き取りを進めていくといろいろなことが分かってきました。
西紋地域の造林事業量(民有林+国有林)の推移

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- 国有林の伐採方法は択伐(※3)が中心であるが、民有林では皆伐(※4)が中心であるため、今後も現在と同規模の安定した造林事業量がある
- 管内の森林において国有林野の占める面積が一番多いが、奥地であったり、天然林が多いため、造林事業量全体に占める国有林の割合は低位
- 国有林の造林事業量が大幅に増えたとしても、事業量全体に及ぼす影響はそれほど大きくない
※3 森林内の樹木を数年から数十年ごとに計画的に繰り返し抜き切りすること(=再造林の規模が皆伐に比べて小さい)
※4 一定のまとまりのある森林の林木を一度に全部伐採すること(=再造林の規模が択抜に比べて大きい)
見えてきた課題~そして行動へ
聞き取り調査から、民有林の安定した事業量に国有林の増加分が加わったとしても現状の作業者数を前提とすれば事業をこなしていくことはできそうです。
しかし、この「現状の作業者数」というのが、はたして維持していけるのかどうか、作業者の高齢化、季節的な労働、新規参入者不足等々、課題が山積しています。
今後、地域の現状と将来の事業の見通しをとりまとめつつ、造林事業者を訪問し、その雇用状況と今後の事業の受け入れ可能量などについて聞き取りを進め、分析していくことにしています。
そして、その上で国有林フォレスターとして、川上・川下を含めた地域全体で協議を行い、新規雇用対策、新技術の普及・啓発などを行うことで課題解決に結びつけ、地域での森づくりを発展させていくことができればと考えています。
人と人のつながりを大切に民国の連携を進めます

国有林フォレスター
西紋別支署 主任森林整備官 原 敏之
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近年、民有林と国有林による連携した取組が盛んになり、民有林の各機関の担当者のみなさんと関わる場面が増え、気軽に情報交換や相談ができる関係を築くことができてきています。
このため、このような取組にも協力を得ることができ、さらに連携を深めていくことにつながってきています。
国有林フォレスターとしてこれからもこのよう関係を大切にしながら、地域の森林・林業の再生と発展に努めていきたいと考えていますので、地域のみなさんのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
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網走西部森林管理署 西紋別支署
紋別郡滝上町字滝ノ上原野3線北1
電話: 050 - 3160 - 5765
ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/nisimonbetu/
管轄区域:滝上町、紋別市、興部町、西興部村、雄武町
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