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北海道森林管理局

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    寿都地域における森林共同施業団地の取組

    後志地域のあらまし

      後志森林管理署は、北海道後志総合振興局管内中南部と胆振総合振興局管内西部の3市12町5村(島牧村、寿都町、黒松内町、蘭越町、ニセコ町、真狩村、倶知安町、京極町、喜茂別町、留寿都村、岩内町、共和町、泊村、神恵内村、室蘭市、登別市、伊達市、洞爺湖町、豊浦町、壮瞥町)を管轄区域とし、約13万haの国有林を管理しています。
      管内の国有林は、地域の水源として、また沿岸漁業が盛んな日本海及び内浦湾の漁場の保全等に資する観点からも重要な役割を担っているほか、火山を有し急峻な地形が多いことから、山地災害防止機能の発揮も求められています。


    寿都森林整備推進協定締結の背景

      当署では、平成25年度より寿都地域において民有林・国有林の連携の下、漁業関係者も参加して森林整備推進協定を締結、森林共同施業団地を設定し森林整備を行ってきました。
      背景には急峻な地形が多いため必要な路網の整備が実施できず、森林整備が進んでいない状況がありました。またニシン漁の最盛期に燃料の薪炭材として使用するため伐採された後、植栽されていない林分も多数存在していました。
      加えて、山脚が短く整備の必要な森林と海の距離が近いという特徴もあることから、森林所有者間だけでなく漁業者とも連携して海や川とのつながりを考えた一体感のある森林整備を実施していく必要がありました。
     
    そこで、
    ・所有者ごとの森林の情報及び森林施業に関する情報の共有を図ること
    ・民有林と国有林又は民有林同士が連携し、計画的かつ効率的な森林整備を推進すること
    ・森と海の密接な関係から、漁業者との情報共有及び意見交換等を行うこと
    を目的として、寿都町、南しりべし森林組合、寿都町漁業協同組合、後志森林管理署、後志総合振興局の五者が、平成25年3月に森林整備推進協定を締結し、これまでの5年間に500haの森林整備と14,000mの路網整備を実施しました。

    山脚が短い地形
    山脚が短い地形


    協定の締結調印式(平成25年)

    森林共同施業団地の設定

      協定の対象地域は、寿都町内の全ての森林(約7,400ha)です。それぞれの位置関係等の条件を考慮し、協定者が連携して森林整備を進めるため、国有林と民有林が連携する「寿都団地」、道有林と民有林が連携する「歌棄(うたすつ)団地」、民有林同士が連携する「磯谷(いそや)団地」の3つの森林共同施業団地を設定しました。



    森林共同施業団地の位置

    寿都団地での取組

      寿都団地では、路網整備、施業の集約化、作業システムの低コスト化を柱として事業を進めてきましたので、その内容を詳しくご紹介します。

    合理的な路網の整備

      寿都団地の国有林の路網は、これまで民有林との境界沿いに整備してきましたが、搬出距離が必要以上に長大となっていました。その分維持・修繕の経費が余計にかかってしまい、これを節減することが課題でした。一方民有林は、比較的急峻な地形のため路網の整備ができず、伐採時期に達した林分の森林整備をどう進めるかという課題がありました。
      そこでこれらの課題を解決するため、国有林と民有林の所管を超えた効率的な路網の整備に向けて取組が始まりました。
      実施に向けては、各協定者の担当職員が集まり平成26年1月に路線選定の検討会を開催し、効率的な森林整備につながる路網を図上で検討しながら整備計画を策定、その計画に基づき、同年2月に整備予定箇所を現地踏査し、地形や地質の現況調査を行って計画を具体化していきました。
      検討会では、保安林での作業行為の手続、支障木の調査、作設後の維持管理など、様々な問題についても協議を重ねながら、効率的な路網計画を作成しました。


    路網の検討


    現地踏査

      また、路網の作設現場に関係者が集まり規格や構造について検討するなど、これまで別々に整備してきた路網に対する考え方を統一するとともに、路網の接続や土場の作設・共用についても意見交換を行いました。


    現地検討会

      こうした取組の末、町有林に900m、国有林に3,000mの路網を作設し、国有林と民有林の路網を接続しました。結果として搬出・維持修繕の距離が短縮されたことから、搬出経費が縮減できました。町有林では、それまでなかなか進まなかった伐採時期に達した林分の搬出間伐などの森林整備を行うことが可能となりました。


    整備後の路網図


    新設路網


    町有林路網(左)と国有林路網(右)の接続

      また、国有林路網と町有林路網の接続部分付近に共用土場を設置し相互利用したことにより、さらなる搬出経費の縮減ができました。


    共用土場

      今回整備した路網は、今後の森林整備に大きく役立つことはもちろんですが、国道229号線と並行しているため、緊急時の避難路・迂回路としての活用も可能と考えています。

    子ども達に向けた学習活動

      このほかにも、森・川・海のつながりに対する地域住民の理解の促進や将来を担う子ども達への啓発は不可欠であることから、寿都町、北海道、寿都町漁業協同組合、寿都町応援大使と共同で体験学習を通じて学び実感できる学習プログラム「お魚はぐくむ海と森体験隊」を平成25年から5回にわたり開催しました。
      体験隊には地元地域から多くの子ども達が参加して、
     ・木材チップを活用した海の堆肥工場の見学
    (海の堆肥・・・水産加工残渣、木材チップなどを発酵させたもの。海に投入して藻場の拡大を促進させる。)
     ・海の生き物さがし
     ・森林散策

     ・森林の土の中の生き物さがし
    などを行い、普段はあまり接する機会のない海や森林の一面にも触れてもらいました。
      この活動への参加を通して、子ども達が「森林は海や川を含めた自然環境に対して重要な役割を担っていること」を理解し、「おいしいお魚が食べられるのは豊かな森や川があるからこそ」と思ってくれることを願っています。


    海の堆肥工場の見学


    森林の土の中の生き物さがし

    今後に向けて

      寿都地域森林整備推進協定は、平成30年3月末をもって期間を満了しましたが、引き続き五者が連携・協働し森林整備を推進していくとの合意に達したことから、協定期間をさらに5年間延長したところです。
      平成25年からの5年間では、これまで紹介してきたように地域と連携して課題解決に取り組み、路網整備や学習活動を実施することができました。
      しかし、協定者間で森林への思いや森林施業の考え方に差があるまま事業を進めてしまい、いつまでに何をどこまで進めるかなど、細かい点についての意見交換ができていなかったように思います。この反省を踏まえて平成30年度からの協定期間では、協定者間のコミュニケーションをこれまで以上にしっかりととりながら取り組んでいく所存です。
      さらに今後は民国が連携した木材の販売、一貫作業システムの導入などの新たな取組についても、その可能性を模索していきたいと考えています。
      また、漁業者と連携を図り水産資源の保続に資することで、寿都地域の森林・林業、水産業の将来に好影響を与えることができれば、この取組は周辺地域へも波及していくことでしょう。


    運営会議において今後の取組を協議

    国有林フォレスターとして

      森林技術指導官として後志森林管理署に赴任してから1年が経ちましたが、地域林業の問題点や課題についてまだまだ分からない点が多いことを痛感しています。
      地域の悩みや課題について関係する方々と意見を交換し実情を把握できればおのずと課題解決に向けた道も開けてくるのではないかと思いますし、そのためにできるだけ多くの方々から話を聞き、自分なりにまとめ地域へフィードバックしていきたいと考えています。

      当署では、今回紹介した寿都地域での取組を始めとして、地域における課題の解決に向けて、民有林支援サポートチームを組織し、「モデル地区での森林整備支援」「地域のニーズに合わせた研修会・検討会の開催」「低コスト造林の普及」「低コスト作業システムの構築」などについて、各職員がそれぞれの課題に取り組んでいます。
      今後も、地元振興局、市町村、森林組合等の関係機関との連携をさらに深めていきたいと考えています。



    後志森林管理署 森林技術指導官  小林 薫

    お問合せ先

    後志森林管理署

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