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北海道森林管理局

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    渡島・檜山地域の課題解決に向けた檜山森林管理署の取組

    檜山森林管理署(平成28年12月)

    檜山森林管理署では、檜山振興局等と連携して地域の森林・林業の課題解決に向けた様々な取り組みを行っているのでご紹介します。

    地域の特徴

    渡島檜山地域は北海道の南西部に位置し、土地総面積は約65万7千ヘクタールとなっています。
    森林総面積は約53万ヘクタールであり、森林率は約81パーセントと北海道内の他の地域と比べても高い割合となっています。
    国有林は約25万8千ヘクタールとなっており、渡島森林管理署とともに国有林の管理経営を行っています。

    位置図

    檜山森林管理署は、このうち南西部に位置するおよそ11万4千ヘクタールの国有林を管理経営しています。
    管内は、半島脊梁部の日本海側と津軽海峡に面した区域にある2市9町(函館市、北斗市、松前町、福島町、知内町、木古内町、江差町、厚沢部町、上ノ国町、乙部町、奥尻町)となっています。

    北海道の中でも寒暖の差が少なく比較的温暖な気候の地域であり、ヒバの北限、トドマツの南限となっています。
    民有林は、道有林、市町村有林、私有林等を含め約16万7千ヘクタール、人工林率は約28%で、主な樹種は、スギ、トドマツ、カラマツとなっています。

    スギ人工林
    スギ人工林

    渡島檜山地域の課題

    渡島檜山地域では、地域を管轄している振興局や森林室と森林管理署で構成する渡島檜山地域林政連絡会議において、地域課題の把握や森林・林業に関する地域課題の解決に向けた取り組みを連携して行っており、地域の現状を踏まえ以下の4課題を重点的に取り組むこととしています。
    1. 低コスト施業の普及・定着
    2. 道南スギをはじめ地域材の需要拡大
    3. 木質バイオマスの利用促進
    4. エゾシカ被害等防止対策
    これら4つの課題解決に向けて、現地検討会や各種勉強会を開催するなど着実に取り組みを進めることとしています。
    また、市町村との連絡会議では、市町村から間伐の実施状況やエゾシカ被害など地域の現状や問題点等について情報をいただき、当署から国有林の様々な取り組みの中で4つの課題に関連する事例等を紹介することで、課題解決に向けた取り組みを進めています。

    渡島檜山地域林政連絡会議
    渡島檜山地域林政連絡会議
    檜山地区市町村との連絡会議檜山地区市町村との連絡会議

    低コスト施業の普及・定着に向けた取組

    低コスト施業の推進は道内各地で森林・林業の大きな課題となっており、渡島・檜山地域でも重点的に取り組む課題として、解決のために様々な取組を行っています。
    今回はそのうち、「列状間伐の普及」と「造林事業の低コスト化」について紹介します。

    列状間伐の普及

    渡島檜山地域の民有林では、小面積な森林所有者が多いことや、初回間伐は小径木が中心となること等から、間伐した木材を山に残す「伐り捨て間伐」が主であり、間伐時に発生した木材を販売する搬出間伐を行っている森林所有者が少ない状況です。
    その背景として、
    1. 搬出コストが、かかり増しになる。
    2. 初回間伐を、搬出間伐で取り組む事業体が少ない。
    3. 間伐材を販売しても採算が合わない。
    4. 路網が整備されていない。
    等が考えられます。
    このような状況の中で搬出間伐を普及するためには、低コストな間伐につながる列状間伐を普及し、少しでも多くの利益を山側へ還元させることが重要であることから、平成27年度に列状間伐モデル林を設定しました。

    列状間伐モデル林は、振興局・森林室・市町村等関係機関の協力を得て、当署管内では厚沢部町(私有林:トドマツ)、乙部町(町有林:スギ)の2箇所に列状間伐のモデル林を設定することが出来ました。

    厚沢部町(私有林:トドマツ)
    厚沢部町(私有林:トドマツ)
    乙部町(町有林:スギ)
    乙部町(町有林:スギ)
    渡島檜山地域への列状間伐の普及に向けて、この「列状間伐モデル林」を活用した民有林所有者に対する列状間伐の効果的なPR方法等を検討するための、渡島檜山地域林政連絡会議の委員を対象とした現地検討会を開催しました。
    現地検討会では、「搬出間伐を進めるきっかけとなるようにするため、列状間伐と定性間伐の事業費の違いや作業の安全性など、メリット・デメリットをわかりやすく整理することが重要ではないか」などの意見が出され、今後民有林に列状間伐を普及する上で参考となる意見を多くいただけた貴重な機会となりました。

    平成28年度は、列状間伐モデル林を活用した現地検討会を予定していましたが、降雪の影響もあり、国有林の列状間伐地を活用して現地検討会を開催しました。
    現地検討会は森林組合や市町村を始めとした民有林関係者等を対象に、列状間伐の普及を目的として平成27年度の現地検討会を踏まえた内容で行いました。

    現地検討会では、急傾斜地が多く、列状間伐の利点である高性能林業機械の活用が可能な箇所が少ないため、チェーンソーによる伐採が主となっている地域の現状を踏まえても、
    • 定性間伐と異なり、機械的に伐採列を決められることから、選木作業を省くことができ、省力化できる。
    • 伐採列方向に伐倒や集材を行うため、残存木の損傷を軽減できる。
    • かかり木の発生が少なく、労働安全性が向上する。
    • 効率的な伐採等によって、生産性が向上する。
    等の効果が得られることや、定性間伐・列状間伐の総収穫量や間伐効果について説明し、列状間伐の作業現場も見学しています。

    列状間伐現地検討会
    列状間伐現地検討会

    造林事業の低コスト化

    渡島檜山地域は、今後主伐期を迎える林分が多くあり、再造林箇所の増加が予想されるため、造林事業のコストをいかに低く抑えるかが地域の重要な課題となっています。
    低コスト化に向けた手段としては、伐採と造林の一貫作業やコンテナ苗の利用、大型機械による地拵えや低密度植栽等が考えられます。
    当署は素材生産から地拵え・植付まで行う一貫作業の普及に向けて、現地検討会を民有林関係者等を集め実施しています。

    現地概要と一貫作業について説明している写真
    現地概要と一貫作業について紹介

    現地検討会では、一貫作業のメリットとして
    • 伐採搬出に使用する大型機械を更新作業に転用できる
    • 伐採搬出の時から植付のことを考えて作業を進めるため、末木枝条の処理等作業全体がスムーズに進められる
    • 素材生産実施後草が伸びる前に植栽することで、無地拵えや地拵えコストの縮減に期待ができる
    等があることを紹介しました。

    また、一貫作業を行う際にコンテナ苗を活用することで
    • 裸苗では植栽時期が春と秋に限られるが、コンテナ苗は夏季植栽が可能となるため、夏季でも植栽することが可能になる
    • 活着が良いため植栽本数を決める際に枯死木を少なく見積もることができ、植栽本数を従来より大幅に減らす低密度植栽も可能になるため造林費のコストダウンが期待できる
    等のメリットがあることを紹介しました。

    意見交換では、一貫作業について多くの意見があり、「素材生産業者と造林業者が違うためすぐに取り組むことは難しい」などの意見等が出され、造林事業の低コスト化を進めるに当たって必要な課題を把握することができました。

    大型機械による地拵え
    大型機械による地拵え

    このほか、コンテナ苗の普及に向け、国有林のコンテナ苗植付現場において、育苗業者と造林業者を対象としたコンテナ苗植付現地視察会を実施しました。
    苗木生産コストの削減、植付器具の改良、輸送車両の改良及び梱包の改良等について意見やアイデアが多数寄せられ、発注者・育苗業者・造林業者が連携し、地域でコンテナ苗の低コストな活用方法等を検討していくこととしました。

    20161221_10_育苗業者による現地視察
    育苗業者による現地視察

    森林保護(病虫獣害)に関する地域との連携

    渡島檜山地域では重点的に取り組む4課題の1つとして、エゾシカ等被害防止対策を行っており、エゾシカを始めとした様々な病虫獣害対策に取り組んでいます。

    檜山地域では、オオトラカミキリによる森林被害が見られたことから、檜山振興局森林室が市町村、森林組合、森林所有者等を集め、現地研修会を開催しました。
    オオトラカミキリは道内のトドマツで局所的に発生し、被害発生林分では材質劣化や枯死木の発生など経済的な損害に結びつくことから、防除が必要であるとされていますが、防除技術等は確立されていない状況にあります。

    当署はこの対策として、被害木を伐採し早期に搬出することで被害の拡大を防ぐ試みを行っていることから、現地研修会では、被害木の見分け方や被害木伐採後の状況等を民有林関係者に情報提供しました。
    森林の病虫獣害に対する取組は民国の情報の共有が重要であり、これからも機会を捉え連携・協力していくこととしています。
    また、オオトラカミキリは昆虫採取者等の人気が高いことから、被害木の特徴等の情報収集では昆虫採取者等の情報も有効だと感じました。

    せたな町民有林での現地研修会
    せたな町民有林での現地研修会

    オオトラカミキリの食痕
    オオトラカミキリの食痕(国有林トドマツ人工林)

    オオトラカミキリ(メス)
    オオトラカミキリ(メス)

    道南地域の郷土樹種ヒバの普及に向けた取組

    当署は、渡島檜山地域で重点的に取り組む4課題以外にも、地域の現状に合わせて様々な森林・林業の課題解決に向けた取り組みを行っており、その取り組みの1つとして道南地域の郷土樹種ヒバの普及に向けた取組を行っています。

    檜山という地名は、この「檜葉(ヒバ)の山」が由来という説があります。
    檜山地域ではこの説にちなんで、ヒバの森をつくり地域の活性化を図る、「檜山のヒバの森づくり運動」を檜山振興局が中心となって進めています。
    この運動の一貫として、檜山振興局管内の市町村、森林組合、森林所有者等を集めた、「道南の郷土樹種であるヒバによる山づくり研修会」が開催されています。
    この研修会で、民有林からヒバの森づくりに関する取組状況等が報告されており、当署は「ヒバモデル林」を活用してヒバの特性や国有林でのヒバの育成方法等について紹介しています。
    ヒバモデル林は、地域の方々に「ヒバ」に対する理解を深めていただき、民有林関係者との技術交流の場となるよう、江差町の椴川国有林に設定しています。

    ヒバは、幼時の耐陰性が高い樹種とされ薄暗い林の中でも枯れずに生きることができ、天然生林での成長は極めて遅く直径30~40センチメートルに成長するまで200年以上かかるとも言われています。
    ヒバ材は、木目が緻密で強度がありヒノキと変わらぬ良材とされ、特に、殺菌作用等のあるヒノキチオールが含まれ湿気に強く腐れにくい上シロアリ等虫害に強いなど、耐久性に大変優れています。

    檜山地域におけるヒバの蓄積は約77万5千立方メートルであり、このうち97%を国有林が占めているため、この運動に対する当署への期待度が高いと感じており、地域の活性化に向けて重要な役割を担わせて
    いただいていると考えています。

    ヒバ人工林(江差町有林)
    ヒバ人工林(江差町有林)

    ヒバモデル林
    ヒバモデル林(江差町椴川国有林)

    国有林フォレスターとして

    今までは列状間伐の普及を始めとした山側での取り組みを進めてきましたが、フォレスターは地域の現状を考え、山側だけに限らず様々な森林・林業の課題解決に向けて取り組むことが期待されています。

    渡島檜山地域の川下側である木材流通の現状を見ると、地域には大規模製材工場等が少なく、大規模製材工場等がある苫小牧や移出・輸出を行える函館港に長距離輸送しています。
    一方で、山側では渡島檜山地域の地形等の状況から、トレーラー等大型の運材車が走行できる林道が限られています。
    このような現状を考慮した上で木材販売を考えると、まとまった量の木材を安定的に供給することが重要であり、その仕組みづくりを行う必要があると感じています。
    そこで、民有林材・国有林材問わず山で生産された木材を常時集積する、「中間土場」を交通の便の良い場所に設置できないかと考えています。
    山から「中間土場」までは現在使用している運材車で木材を輸送し、遠方へはトレーラー等大型の運材車で木材を輸送することで、輸送コストが抑えられるとともに、少量のため採算性が合わず切り捨てられていた山からの出材も見込めるようになると考えています。
    また、「中間土場」に材を集めて量をまとめると、木材の安定的な供給につながると考えています。

    これを実現するためには、様々な問題点を洗い出してひとつずつ解決していくことが必要であり、そのためには民国連携して取り組んでいくことが何よりも重要だと考えており、引き続き様々な課題の解決に取り組んでいきたいと思います。

    国有林は、公益重視の管理経営をより一層推進していくとともに、国有林の組織力・資源・技術を活用して森林・林業の再生へ貢献することが求められています。
    国有林野職員の一人として、地域の森林・林業を地域の方と一緒に考え、より良い方向へ進めていけるような取組等を実行していければと思っていますので、皆様のご理解とご協力をお願いします。

    国有林フォレスター写真
    檜山森林管理署 森林技術指導官 梅田 三幸





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