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北海道森林管理局

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    パイロットフォレスト

    パイロットフォレストは、かつて「不毛の大地」と呼ばれた荒野でしたが、先人達の不断の努力により広大な森林として甦りました。
    当センターでは、パイロットフォレストをフィールドとして、森林環境教育に取組んでいます。

    概    要

    北海道の東部、釧路市から東北に約50km、厚岸湖に注ぎ込む別寒辺牛(べかんべうし)川の上・中流部に位置する国有林のうち、計画的に造成してきた10,778ヘクタールの森林を「パイロットフォレスト」と呼んでいます。
    パイロットフォレスト造成以前は、毎年のように発生した開拓の火入れによる失火等により森林は消滅し、永い年月の間、広大な原野として放置されてきました。
    造成事業には、幾多の困難が待ち受けていましたが、持てる造林技術に創意と工夫を加えて困難を克服し、現在は湿原を除く区域のほぼ全域が、カラマツ人工林を主体とする森林で占められています。

    望楼から眺めた現在のパイロットフォレスト

    位    置

       パイロットフォレストの位置図は、こちらをクリックしてください。

    歴    史


    パイロットフォレスト造成前

    その昔、別寒辺牛川上・中流部には、ミズナラ等の広葉樹やエゾマツ・トドマツ等の針葉樹に覆われた天然林があったと言われています。
    大正時代以降に、開拓の火入れによる失火、釣り人による焚き火やたばこの不始末等により、この地域の森林は繰返し山火事に見舞われました。
    しかし、湿地に囲まれていたため、通行が困難で思うような消火活動ができず、自然鎮火を待つしかありませんでした。
    そのため、この地域は長い間、沢沿い等の一部の場所だけに森林が残り、他は山火事跡の原野が広がるという光景が続きました。
    このような中、昭和29年、洞爺丸台風による甚大な風倒木被害を契機として、林野庁において国有林の生産力増強計画が推進されました。
    昭和31年には、生産力増強計画を背景に、未立木地であったこの地域を森林に甦らせることを目的とした「特別造林実行計画」が樹てられ、大規模な森林造成への第一歩を踏み出すこととなりました。

    造成前の森林の様子


    パイロットフォレスト造成の目的

    国有林が率先して、広大な原野に森林を造成する目的として、
       一  未立木地から森林へと転換する拡大造林による木材生産力の増大を図る。
    ことを主としていましたが、これに加えて根釧地域の厳しい環境の中で(当時の)寒冷地農業を安定させるためには、林業を含めた多角的農業が望ましいとの考えの下に、
       二  この森林造成過程が、農家林造成の意欲を高めることに寄与する。
    ことを目指しました。


    森林造成

    森林造成は昭和31年から始まり、昭和32年には造成10年計画が樹てられ、この先駆的な造成区域の森林は「パイロットフォレスト」と名付けられました。
    しかし、実際に森林を造成するまでには、艱難辛苦を極めました。
    現地調査を実施するにしても、湿原を渡るための道が無かったことから、木材を使って湿原に浮橋を敷設し、四輪駆動車程度が走ることが可能な道を作りました。
    この浮橋は、重量物による沈下、増水時の冠水、盛土から吹出る湧水等により、流出したり泥濘化して、何度も補修を行うこととなりました。

    湿原を渡る浮き橋の敷設


    湿原の向こう岸には、エゾヤマハギとミヤコザサが優先して繁茂した原野が広がっていました。
    特に、ミヤコザサは地下茎の密度が高く、地上部の刈払い後の回復力が大きいことから、再生を抑制するため、全刈りによる地拵作業を進めました。
    また、年間900ヘクタール以上に及ぶ森林造成計画は、従来の人力による作業だけでは処理しきれないことから、地拵作業、植付作業、下刈作業等で、林業機械の導入が促進されました。

       
    人力による地拵作業 ロータリースラッシャーによる地拵作業


    カラマツの植栽

    広大な区域の森林造成を10年で完了させるため、当時の主要植栽樹種だったトドマツ、エゾマツ、カラマツを対象に植栽樹種を検討をしました。
    その結果、
       一  気象害に強いこと
       二  成長が早く生産性が高いこと
       三  養苗が容易なこと
    から、当時、野鼠による被害の防除技術が確立されてきたカラマツを選定しました。

    人力による植付作業 ローターベータによる耕耘作業


    望楼

    望楼は、森林の保全管理や森林火災の監視を行うための施設です。
    現在の望楼は、平成8年に設置されたもので4代目となり、高さ24.4メートルで、設置された展望室からは、パイロットフォレストの一面のカラマツ人工林と遠くは別寒辺牛湿原まで望むことができます。

    初代の望楼(昭和29年建造) 現在の望楼


    森林整備

    パイロットフォレストは、人工林の約9割がカラマツ林となっています。
    カラマツ材の需要の高まりを背景に、道東地域の木材産業への原木提供地として、今後、ますます重要な位置を占めていくことが見込まれます。
    現在、パイロットフォレストでは、間伐作業が主に行われており、ハーベスタ、グラップルソー、フォワーダ等の高性能林業機械により、生産性が高く、低コストな作業システムで進められています。

    植栽後55年を経過したカラマツ林 グラップルによる森林整備作業


    森林生態系の保全

    パイロットフォレストの湿原内に生息する特別天然記念物「タンチョウ」の生息環境を維持するため、平成5年に別寒辺牛(べかんべうし)生物群集保護林」を設定し、同年、この保護林の一部は、ラムサール条約登録湿地となりました。
    (「別寒辺牛タンチョウ生息地保護林」は、平成30年4月1日の保護林再編で、「別寒辺牛生物群集保護林」と設定されました。)

    お問合せ先

    釧路湿原森林ふれあい推進センター
    〒085-0825 釧路市千歳町6番11号
    Tel:0154-44-0533