私の勤務する三里森林事務所は、秋田県の北部中央に位置する北秋田市合川地区にあり、国有林約1,500haを管理しています。阿仁川と小阿仁川が合流する合川地区は、とてものどかな農山村地域です。
管内には、天然秋田杉の変異株「アオヤジロ(蒼弥白)」があります。推定樹齢約160年、高さ約33m、幹周り約80cmのアオヤジロは、針葉が黄色に近い独特な色をしており、その材は良質で特殊な芳香を放つため、古くは酒樽の材料として珍重されていました。江戸時代後期の紀行家菅江真澄は、その著書の中で芳しい香りのする杉として紹介しています。また、昭和10年秋田営林局発行の「秋田山形の老樹名木」には珍樹として記されています。そのほとんどが伐採され、繁殖力も弱いことから、現存するアオヤジロの報告例は少なく、次世代に残すべき貴重な遺伝子資源として、管理する必要があります。このため北秋田市にある北欧の杜公園には、平成20年の全国植樹祭で数本のアオヤジロが植樹されました。