本来であれば、盛岡署管内の特徴とするところですが、共通点が多いことなどから、ここでは岩手県全体のことを説明します。
岩手県の森林・林業・木材産業の特徴として、まず思いつくのは、木質バイオマス資源の利用が盛んなことです。薪や木炭の生産量は全国一となっています。「薪割りスト」を自称する県職員の深澤光氏による「薪割り礼賛」(創森社)シリーズがありますし、私の住んでいる街中にあっても薪炭屋さんがあり、軒下に薪を積んでいる民家もみられます。木炭はクヌギやナラなどの黒炭ですが、特に、断面が菊の花のようなクヌギの黒炭は「菊炭」と称され、茶道などに使われる最高級なものもあります。また、岩手県調べ(平成25年度末)によると、チップボイラーの導入台数は全国1位の30台、ペレットストーブは1,767台、ペレットボイラーは53台と、それぞれ北海道に次いで2番目となっています。紫波町では、「オガールプロジェクト」の一環としてチップボイラーによる熱を公共施設や新たに開発した住宅地に供給する事業を行っています。さらに、木質バイオマス発電所も石炭混焼が1所、木質専焼が1箇所稼働し、加えて平成28年に稼働を予定している一戸町の発電所を含め4箇所の木質専焼の発電所設置計画等があります。

|
紫波町のオガール地区
|
このように、木質バイオマス資源の利用が盛んな理由は、県土面積同様に森林面積が北海道に次で全国2位の約118万ヘクタール(総土地面積の77%)と広いなど、豊かな森林資源を背景とした冷涼な気候によるものだと思われます。
また、林業活動も活発で、平成26年の素材生産量は、1,398千m3で北海道、宮崎県に次いで全国3位です。針葉樹材の主な樹種はスギ、アカマツ、カラマツで、広葉樹材は302千m3と北海道に次いで全国2の生産量です。
特に、アカマツは、「南部アカマツ」といわれ岩手県の木となっています。また、県北の久慈地方の「侍浜松」、北上川上流部岩手町の「御堂松(みどうまつ)」、県南の東磐地方にある「東山松(とうざんまつ)」などのブランドがあり、かつては住宅用の梁などの建築用材や土木用材、さらには寺社仏閣用材として使われていましたが、現在は松くい虫被害が広まっていることに加え、需要が少なくなっていることが課題となっています。なお、アカマツ林が多いことから、マツタケの生産量も長野県に次いで全国2位となっています。
さらに、農林水産省の「木材需給報告書(平成25年)」等で岩手県内の木材加工場をみると、原木処理量が年間おおむね1万m3以上の規模の大きい製材工場、集成材工場、合板工場、チップ工場、製紙工場合わせて40工場ほどが稼働し、県内の素材需要量は、平成21年の1,233千m3に比べ、平成25年1,262千m3、26年1,295千m3と増加傾向にありますから、岩手県の木材産業も充実しつつあるといえます。
|