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三八上北森林管理署

「署長が管内を語る!」 問題意識を持って

平成26年9月

三八上北森林管理署

署長 佐藤 直治

三八上北署に赴任して早や2年半が経ちました。これまでの森林管理署や職員の取組、そして将来に向けての課題について、4件ほど紹介します。

1.自発的に取り組む「森林・林業・木材産業体験学習」

この取組は、2年前の出署日において、私から森林官等へ「新年度(一般会計化)に向けた森林事務所と地域との取り組み」という課題を与えたところ、若手森林官から上がってきたものだ。十和田合同(奧瀬・法量・八渓山)森林事務所と地元の法奥小学校(蝦名 裕一校長)が連携し、小学六年生を対象に林業・製材・木材利用といった関連産業を一気通貫で学習するプログラムで、すでに2年実施している。
林野庁一丸となって、林業の成長産業化を図るため「木を伐り・木を使い・伐った後には苗木を植え育てる」取組を推進しているので、私は、林野行政のトピックスとマッチした学習内容と考えている。一方では、これまでの森林環境教育や林業体験を変革させる新たな取組と期待もされる。
当署では、この他にも中学生の職場体験や高校への出前講座を通して、地域の生徒達が森林に関する知識や林業に係る技術を学ぶ機会を設けている。さらに、科学の夢を育む目的で実施する文部科学省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)事業の指定校や大学の生物環境科学など、自然科学の研究フィールドとして国有林を提供している。
私達林業人は、森林・林業・木材産業を核とした地域振興を目指している。そして、次代を担う若い人達には、森林を頂点する裾野の広い産業を知って欲しいと望んでいる。そうした意味で、地域の皆さんと協力し合いながら、これまでの取組を末長く続けて行きたい。欲を言えば、若い人達が将来の職業を考えるに当たって、森林・林業・木材産業を選択肢の一つに加えてもらえると、有難いと考えている。

 

学校の森、子供サミット

8月5~6日、都内で開催された「学校の森・子どもサミット」で発表する法奥小学校の赤坂さんと金澤さん

 

2.トドマツ人工林における天然更新

トドマツ(マツ科モミ属)は、北海道以北に天然分布し極相を形成する。その倒木更新は、北海道に勤務した林業技術者であれば誰もが知っているだろう。現に台風などの風倒木跡地では、林床がササでないかぎり後年大量の稚樹が発生するし、更新完了地においては帯状間伐も実施している。
一方、トドマツは北海道を代表する造林樹種である。が、旧青森営林局管内においても各署で造林された歴史がある。事業統計をみると、北は旧大畑から南は旧大槌まで15署で材積が計上されており、年々増加している。当署では、六ヶ所、七戸、法量、田子管内で昭和17~19年と42~44年の二期にわたって造林されている。森林調査簿上では47haであるが、これ以外にも植栽したトドマツ林が乙供の旧採種園などで確認できる。
話は変わるが、十和田市内にトドマツを販売する木材店がある。興味本位で店主に話を聞いたところ、40年も前から道東方面を回って製材品を仕入れ、青森県内で販売しているという。流通業界の話では、木肌が白いこと(ホワイトウッド系か)が好まれる理由とか。価格も手頃とあってヒバの代替品として着実に地歩を固めていると聞く。
東北局管内では、将来にわたってトドマツが造林樹種として再び採用されることはないと思量する。けれども、耐陰性が高く天然下種更新しやすい樹種で、その利用もツーバイフォー、集成材原板、合板や仕組材など底堅い需要がある。節が抜けやすいなど多少欠点はあるものの、樹幹は通直・完満、そして根曲がりが少ない。こうした理由から、現在あるトドマツ人工林については、是非とも天然下種更新によって後継樹を発育させ、トドマツ資源の維持・増殖を図りたい。
因みに、タイトルの「トドマツ人工林における天然更新」は、道内の森林所有者の伐採後における再造林の意欲低下を憂慮する岩見沢農業高等学校森林科学科の生徒が、「低コストで次世代の森林をつくる技術の確立が必要」との問題意識から、調査・研究に取り組む課題である。

 

トドマツの稚幼樹

トドマツの稚幼樹

 

3.旧御料地のアカマツ・クロマツの活用

三八上北署管内の野辺地、東北、横浜町と六ヶ所村の標高100m程度の丘陵地に広がるのは、旧帝室林野局の上北事業区(林政統一時の臨時編成で11,562ha)である。大正時代までは放牧原野の未立木地であったが、大正14年から昭和12年までの間、同局野辺地出張所の手によってアカマツ・クロマツを中心とする臨時造林が行われた。
その多くは、昭和後期に皆伐して樹種転換され、現在はスギ30年生前後の造林地となっている。これを取り囲む保護樹帯や陸奥湾に面する風衝地に残る。近年、スギの列状間伐と平行して、周囲マツ林の間伐を実施している。しかしながら、枝・節・曲りが多く季節によって青カビが入るため、その利用は合板や仕組材、パルプ・チップに止まっている。
こうした状況を打開し、梁や内装材などより付加価値の高い方向へ導こうと、販売担当や森林官が製材所・建築業界に出向いてインタビューするなど情報収集している。その結果、今年度の採材は従前からの直材を中心とし、需要開発として建築材や土木資材としてクロマツ3m材を採材しつつ価格動向等を追求することとした。
元来御料地は、天皇制の経済的基盤の確立という目的で設置されたもの。その後の苦難のマツ林造成といった歴史を顧みるに、木曽ヒノキようにプレミアムを付けて販売したい、と目下努力の最中である。

 

尾駮第三国有林から生産されるアカマツ2m材

尾駮(おぶち)第三国有林から生産されるアカマツ2m材

 

4.採草放牧地の森林化

十和田市街地から八幡岳(1022m)を眺めると、四角に区切られた芝生のようなものがいくつも見える。七戸町と東北町で構成する中部上北広域事業組合(以下「中部上北」という。)が運営する公立八幡岳放牧場である。国や県の支援を得て昭和49~56年まで約12億円をかけてブナ林を切り開き、225haの放牧場を造成した。しかし、国産牛肉の価格低迷から肥育農家が減少し放牧場を利用しなくなったため、国庫に納める貸付料が自治体の負担(無駄)になっている。
この放牧場を、ブナを中心とする広葉樹の森に復元する試みが、平成23年から特定非営利活動法人森の里しちのへ(坪 晃理事長)によって始まった。「源流の森復元プロジェクト」である。シジミやシラウオの生産地である小川原湖へ流れ込む高瀬川の源流域ということもあって、川下の漁業協同組合や緑の少年団も参加するなどボランティアの輪も広がっている。森林管理署は、技術支援という立場で開始当初から参画しており、回数を重ねるたびに(公社)国土緑化推進機構の助成や苗木の寄贈など支援団体も現れた。
当署が広域事業組合や畜産協同組合などに貸付する放牧採草地は1,320ha余り。中部上北のほかにも貸付地の返地を希望する団体は複数ある。そこで、事務組合を構成する町村の議員や担当職員の見識を高めるため、先行して「天然更新を活用した牧草地の森林化」に取り組む岩手北部署に2回程お世話になった。事務組合などでは、森林化のほかにも農地や風力発電などあれこれと跡地利用の方向を検討・摸索しているが、これといった有効な手段は見つからないようだ。
したがって、植樹による現状回復を試みる八幡岳放牧場については、通達の「採草放牧地等の返地に関する取扱い」に基づき、放牧場の造成当初に存置した庇蔭林や広葉樹の植え込みが完了した箇所から、逐次部分返地が可能となって行けば、植樹活動に一層弾みが付くと確信している。

 

利用しなくなった放牧場に植樹するみどりの少年団

利用しなくなった放牧場に植樹する「水喰(みずはみ)みどりの少年団」の児童

 

以上、紹介したほかにも川上での森林施業から木材加工施設、そして川下の大工・工務店や住宅産業、さらには地域が抱える様々な問題まで、署や職員が取り組む課題は数多(あまた)ある。今後とも、地域に根ざした技術・産業・文化を活かした地域振興を進めるために、職員一人ひとりが「問題意識を持って」山を歩き、地域と接し、そして日々の仕事に取り組むことを切望する。

お問い合わせ先

三八上北森林管理署
〒034-0082
青森県十和田市西二番町1-27
電話:0176-23-3551
FAX:0176-24-2020

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