実施内容(概要)

課題1.布製防水透湿性林業履物

現在、林業作業時に着用されているゴム製長靴やゴム製地下足袋は重く、不快感があり衛生面でも好ましくないことから、布製地下足袋に防水透湿性能を組み入れることを目的として、防水性と透湿性を兼ね備えた軽量な布製地下足袋の開発を実施した
開発した地下足袋については、特殊なフィルムの採用により、透湿性でありながら耐水性に優れており、泥土化、水濡れした作業現場での使用を可能としたことから、足部の衛生確保及び疲労の軽減等が期待される。

課題2.シャフトブレーキ付き刈払機

既存の刈払機には強制的に刈刃の回転を止める機能がなく、アクセルを戻しても刈刃は惰性で回転を続ける。この惰性回転は刈払機作業における非常に危険な要因であることから、ブレーキを用いてシャフトの回転を強制的に止めることを目的として、シャフトブレーキ付き刈払機の開発を実施した。
開発した機械については、アクセルレバーを握らない限り刈刃が回転しない構造としたため、転倒時に刈払機が手から離れても自動的に刈刃が止まり、エンジン起動時や移動時などに不必要に刈刃が回転しなくなる。したがって、刈払機作業における安全性が大きく向上し、不注意等による刈刃接触事故も未然に防ぐことが可能となることから、刈払機作業における労働災害の減少が期待される。                        

課題3.新素材使用によるチェーンソー振動の軽減

手持機械であるチェーンソーのエンジンの小型化・高出力化、機体の軽量化が進められる一方、振動加速度は1〜2Gで推移しており、振動の低減策を見出せない現状にあることから、新たに開発された新素材(制振合金)をチェーンソーの防振機構に使用することにより、手持機械であるチェーンソーの振動を低減することを目的として開発(研究)を実施した。
得られた成果としては、防振パーツを固定するためのボルト・ネジ類、及び防振パーツに埋め込まれている金属部を制振合金化することによって、前・後ハンドルに伝播する振動加速度のピーク値を10〜20%程度低減することが可能となった。
チェーンソーの防振機構の構造・形状は各機種によって異なるため、制振合金化する部品の組み合わせを機種ごとに検討する必要があるが、ボルト・ネジ類の交換により、容易に振動の低減効果を得ることが可能である。
なお、これ以上の振動低減効果を求めるためには、チェーンソーの構造自体を本制振合金の特性に合わせた構成に設計変更する必要があると考えられる。

課題4.荷掛用フック動力横引き装置

タワーヤーダによる間伐材搬出作業では、簡易架線索張りのランニングスカイライン方式が多く用いられており、この方式で行う横取り作業では、材をかける荷掛けフックと材をけん引するホールラインを荷掛け地点まで引き出す必要があり、現在この作業は荷掛け手が行っているため、過大な労働負担となっている。このことから、この作業を動力によって行うことを目的として、索引き出し装置の開発を実施した。
開発した機械については、エンドレスドラムを用いてロープの巻き取り、及び巻き戻し作業を行うことができ、またストレージドラムのロープにたるみを発生させることなく作業を行うことが可能であり、荷掛け用フックの横取り装置として、タワーヤーダによる集材作業時に十分活用できることから、横取り作業における作業者の安全性の向上、労働強度の軽減及び集材作業の効率性の向上が期待される。

課題5.かかり木処理用移動式ウインチ

伐木作業時において発生するかかり木の処理作業について、安全かつ迅速に作業を行うことを目的として、@移動式、A小型化・軽量化、B無線操作が可能な移動式ウインチの開発を実施した。
開発した機械については、無線によるウインチの遠隔操作が可能であり、安全な場所に退避して作業を実施することが可能であることから(※チェーンソーなどの作業  用具の運搬にも使用可能。)、かかり木処理作業における作業者の安全性の向上が期待される。

課題6.プロセッサ運転教育支援システム

プロセッサのオペレータ教育を効率的かつ安全に支援することを目的として、インストラクターに代わり、モニター装置と表示装置によってプロセッサの操作方法をオペレータに指示を行う訓練装置の開発を実施した。
開発した装置については、プロセッサの初期教育においてインストラクターの同乗が不要であるという新しい教育法を可能にしており、コントロールハンドルと連動するソフトウェアを液晶画面に表示することによって、各種プロセッサ操作を行うための各種スイッチの説明は、キャビンのパネルコンピュータに表示され、オペレータは1人でスイッチを確認し、実際にプロセッサの動作を確認することができる。このことにより、無線やインストラクターの同乗による訓練と比べて判断が正確になり、訓練中の誤作動等による災害の防止効果と、その表示機能によるオペレータの安全作業に対する意識の向上が期待される。

課題7.車載タイプ緊急通報機器

山間部での森林伐採等の作業中に、緊急事態(労働災害等)が発生した場合における緊急連絡体制の確保を目的として、衛星通信端末(オーブコム通信)を利用した車載用緊急通報システムの開発を実施した。
開発したシステムについては、被災者もしくは同じ場所で作業を実施している者が、各自携帯しているリモコンもしくは車に搭載されたPDAを操作することにより、衛星通信端末(オーブコム通信)を用いて、現場事務所及び安全管理を管轄する事務所に緊急事態をメール形式で通知(※通報を行った車両の移動経路表示及び通報を行った作業者を特定するためのリモコン固有番号の表示も可能。)すると同時に、車載のサイレンやパトライトにより、周囲の作業者等に対しても緊急事態の発生を知らせることができることから、労働災害発生時等における緊急連絡体制の一層の充実が期待される。                   


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