「森林と水に関する滋賀宣言」の概要

国際森林専門家会議「森林と水」

2002年11月20−22日

背 景

 森林に覆われた河川流域は、家庭、農業、産業及び生態系が必要とする水の多くを供給。また、森林は林産物、国土保全、保健休養、環境、住民生活などに関わる多様な便益を提供。水資源や生態系の機能を損わず、森林の多様な便益を最大化させることが、土地、森林、及び水の管理者が直面する課題。

 国際社会において「水危機」への関心が高まるなか、水問題を考慮に入れつつ森林を管理・経営していくことは、特に優先すべき重要な課題。

 持続可能な森林経営は水資源管理の要。原生林や適切に管理された森林は、一般的に質の高い水を生産し、条件によっては、一定の降水量に対し、洪水時のピーク流量や、土砂流出及びそれに伴う下流域での堆砂を低減。

今後の主な課題

1.幅広い利害関係者や環境からのニーズを取り入れた、各地域・国の開発目標に適合した森林及び水の統合的管理

2.森林と水との生物物理学的関係の理解の向上と、そのための長期的、大面積を対象とした研究

3.森林及び水に関連する政策・管理がもたらす文化的、社会経済的影響に関する理解の向上

4.上下流の関係やその相互作用に関する理解の促進と、流域管理への地域住民その他の利害関係者の参画を確保するための仕組みの開発促進

5.政策決定者、教育者、マスコミ、一般市民等への森林と水に関する科学的知見の普及・啓蒙

提 言

 本専門家会議は、政策等の意思決定者が以下を推進するよう提言。

1.森林と水に関する生物物理学的、社会経済的側面への理解を深め、それらに基づく各地域の状況に応じた分野横断的な取組。

2.森林と水資源の経済的価値、種々の政策・施業の経済面の影響の適切な評価。

3.受益者負担など、森林と水が提供するサービスを持続的に発揮させていくための適切なインセンティブの創出。

4.情報共有や人材育成を推進し、科学的知見に基づいた適切な森林及び水管理政策の策定や、それによる具体的な成果を挙げるため、政府、地域共同体、研究機関、市民社会、民間セクター、森林や水の管理者などの関係者による効果的かつ公平なパートナーシップの形成。

5.森林資源の評価において、森林と水の相互関係も視野に入れること。また、そのために国際社会に対する十分な協力を要請。


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