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平成23年度     年頭のご挨拶 

 

    あけましておめでとうございます。

 

国際森林年ロゴ    本年は、国連の定める「国際森林年」(International Year of Forests)、昨年の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の名古屋開催に引き続き、国内外で、森林や自然環境の保全に対する意識の高まりは増しています。

    国際森林年は、国連総会決議により、国際森林年では、現在・未来の世代のため、全てのタイプの森林の持続可能な森林経営、保全、持続可能な開発を強化することについて、あらゆるレベルでの認識を高めるよう努力すべきとされています。

    また、国連は加盟国が国際森林年に関連した活動を促進することを奨励しており、我が国でも各地で様々な取組みが行われることが期待されています。

    しかしながら、昨今の国内の森林・林業を取り巻く現実には厳しいものがあります。

    ひとつには、林業の採算割れによる造林未済地の発生は深刻な問題です。先般、磨き丸太生産等意欲的経営をしている京都北山にて、しかも林道際が植栽されずボサ山化しているのには唖然としました。確かに平均的な山の場合、1Ha当たり立木価格は100万円、それに対して、新植経費(再投資経費)は150万円と完全に逆ザヤとなっており、再造林せよというのはどうみても酷な話です。磨き丸太も、かつては1本10万円していたものが今では1万円と、これでは意気消沈です。

 

 

外山所長

京都大阪森林管理事務所長

外山    武比古              

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    採算性の向上を図るために徹底的なコストダウンする必要があり、林道、作業道等の基盤整備を図るとともに高性能林業機械の導入による搬出コストの低減を図ってきたところで、森林林業再生プランにおいてもこれらの措置を中核的な施策として位置づけております。しかしながら、現実には採算割れをしており、更なるコストダウンを図るためには、森林・林業全般の作業仕組みいや施業仕組みを含め根本的に改善する必要性があります。

    このような視点から見ると、伐木造材については飛躍的な生産性の向上が図られてきましたが、一方において、植栽については、刈払い機の導入等ごくごく一部について機械化が図られたものの、基本的な作業の仕組みについては、ここ数十年、いや江戸の時代から変わっておりません。植栽の低コスト化を図るために様々な機械、器具や技術が考案されたものの、未だ実用化には至っておりません。

    こうした中にあって、昨今、植栽の低コスト化の切り札として脚光を浴びるようになったものに、東北・関東・九州各森林管理局、森林総合研究所及び全国山林種苗協同組合連合会が中心となって技術開発が進められているコンテナ苗を用いた植栽技術があります。

    コンテナ苗を用いた植栽方法は、既に北欧やアメリカにおいては、植栽のほとんどがそれであるといっても過言でないくらい普及しております。しかしながら、日本においては、ここ数年ようやくスギ、ヒノキ等の苗木が事業規模で生産が行われるようになったばかりで、養苗技術や植栽技術について目下実証試験段階にあり、試行錯誤が繰り返されています。

   コンテナ苗には、従来の植栽方法と比較して、次のような著しい特徴があります。

(ア)   活着もすこぶるよく、このため、植栽時期が春又は秋にとらわれることなく、また、就労時期の年間平準化に寄与し得ること

(イ)    専用の植栽器具を使用することにより500本/人日(従来の方法   250~300本/人日)と効率化が図らること

(ウ)   機械化に対応し得る規格化された苗であること

(エ)   初期成長量が良好で(春40cmの苗を植栽し秋には120cmに成長したとの報告もあり、これは従来の苗の5割以上の成長量))あることから下刈り期間を大幅に短縮(通例5年程度を2年に)する可能性があること

(オ)   伐採と同時に植栽する密着植栽の場合、地拵えの省略が可能となること

(カ)   養苗期間が1年半ないし2年と短期間であること

 

以上から、現在実証試験中ですが、1ha当たり100万円以下に大幅なコストダウンが可能でないかとされており、今後が期待される技術体系かと思います。

    また、コンテナ苗の植栽マシンについても、その試作機の開発が森林総合研究所を中心に進められ、昨年、その植栽試験が行われております。

   更に、森林総合研究所東北育種センターにおいて、5年目には樹高が7mになるというスーパー苗の選抜育種に成功したとの報告も寄せられております。

   このほかに、三重県の速水氏が考案したセラミックス苗もあり、マルチキャビティコンテナの関り代わりに素焼きの筒状の容器の中で養苗する方法です。これについて、近畿中国森林管理局として昨秋初めての植栽試験を行ったところであり、初期成長量がコンテナ苗同様著しく良好であるか等未知数です。

   今年、当所としてもコンテナ苗やセラミックス苗の比較植栽試験を実施するとともに、民有林関係者に対する普及等するために技術開発に着手したいと考えており、このため、関係者との調整を図る考えです。

 

【参考】コンテナ苗とは?

http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/21hakusyo_h/all/h05.html

http://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/zoki/planting/sfmp.html

http://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/pdf/midogiju46.pdf

http://cerasasiki.jp/ceramicnae-tirasi-part3.pdf

 

   更には、昨年の「大文字山の送り火」の際に、広く市民が承知することとなった「ナラ枯れ」です。これは、里山の森林に対する人の関わり方について考えさせられるものがあります。

   ナラ枯れは、菌(カビ)による伝染性の萎凋病(感染木が急激に枯死する病気)で、松枯れとは異なり、日本古来より存在した樹病です。文献上は昭和5年頃鹿児島・宮崎両県で確認され、昭和55年以降北陸各県や新潟県、山形県等の日本海沿岸の各県から被害が拡大しました。京都市内においては、平成17年、清水寺の裏山で最初に発見されました。

   その発症メカニズムは、萎凋を引き起こす病原菌を養菌性のカシノナガキクイムシが媒介し、感染枯死木から健全木へ伝播させております。カシノナガキクイムシの繁殖には、大径木ほど材積があることから繁殖効率がよく、翌年の被害拡大につながっております。このため、高齢級のナラ、特にミズナラでの被害が激しくなっております。東山のようにコナラのほか、カシ、シイ類等の常緑広葉樹にも被害を及ぼしております。

   ではなぜ最近になって、ナラ枯れが全国各地に爆発的に被害を及ぼすようになったかといいますと、昨今の地球温暖化による影響というよりも、燃料革命により里山の樹木の薪炭利用がなくなり、ナラ枯れ被害の温床となる老齢過熟木が増大したということによるとしてされております。近畿地方の里山においては、薪炭生産の場として所によっては、7・8年で伐採が繰り替えされており、萱場となっている場合もありました。特に京都三山においては、錦絵では樹木がかなり省略されて描かれていますが、実は、省略されているのではなく、ほとんどが柴山で写実的に描かれている訳です。このため、カシナガキクイムシの繁殖に適する大径木が存在せず、爆発的な発生が抑えられてきました。

   それとともに、近年、自然環境の保全の観点から、広葉樹を伐採し利用することについて、トラウマになっていたことも否定することはできません。京都三山にあっては、明治初期の上地に際し裸山となったこともあり国有林へ編入されて以来、景観保全や山腹保全を図る観点から原則的には伐採利用をしてきませんでした。このことがナラ枯れの温床となったことは皮肉なことです。

   昨秋、これらの反省を踏まえ、里山の保全・管理に関するシンポジュウムが開催され、里山を賢く利用しようとする動きが見られるようになったことは、大いに評価されてよいことかと思います。

   また、ナラ枯れ被害木についても、薪として有効利用しようとする市民運動が展開されるようになり、木材業界においても製紙用チップとして、バイオマス燃料として利用しようとする社会的なシステムが構築されつつあります。

 

【参考】ナラ枯れとは?

http://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/naragare.html

http://www.fsm.affrc.go.jp/Nenpou/other/nara-fsm_201003.pdf

http://cse.ffpri.affrc.go.jp/keiko/hp/kuroda/Kuroda.K-top.html

 

    以上、昨今の森林・林業を取り巻く状況には厳しいものがあることについて述べさせていただきましたが、一方において一寸の光明も見えつつあります。京都大阪森林管理事務所においては、一つ一つの課題に対しまして、例えば、①低コスト林業の実現につきましては、コンテナ苗木の植栽試験の実施、②ナラ枯れ対策につきましては、被害木の有効活用を図るための社会的システムの構築等に職員一丸となって取り組んでまいりたいと考えておりますので、叱咤激励の程よろしくお願いいたします。

 

 

 

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