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京都大阪森林管理事務所

京都大学の学生から高台寺山国有林見学のレポートを受領

2008年11月14日

活動報告

京都大学農学部森林科学科の松下准教授より、10月14日(水曜日)に「森林科学実習4」の一環として高台寺山国有林の視察に訪れた学生51名のレポートが届きました。このレポートは、視察当日、福田所長より、学生に対して、明治時代以降、マツ林からシイ林へと大きく姿を変えてきた高台寺山国有林の森林のあるべき姿について、景観保全や地域振興、木材生産などの様々な観点から論ずるよう課題を出したものです。

レポートはいずれも力作揃いで、清水寺の裏に国有林があること自体知らなかったので、もっと広報に努めるべきである、林内におけるシイの優占は自然の遷移に任せておけば良いのではないか、古都京都の四季を楽しめるよう落葉広葉樹の植栽を行うべきではないか、カシノナガキクイムシ対策がまず重要である、など様々な意見が述べられていました。多くの学生に高台寺山国有林のことをしっかりと考えていただくことができ、改めて有意義な実習であったと感じております。

いずれも甲乙付けがたい出来でしたが、ご本人の承諾を得て、以下に一つだけ学生のレポートを紹介させて頂きます。

高台寺山国有林を今後どのように管理していくか

大久保有理

10月14日に高台寺山国有林を見学し、私はいろいろなことを知ることができました。

見学に行くまでは、清水寺・高台寺・八坂神社、などの有名な社寺の背景に、あのような国有林があるとはまったく知らなかったので、実際に足を踏み入れて、その自然の豊かさに驚きました。高台寺周辺を思い描くと、社寺の後ろに必ず山がそびえているイメージがあるのですが、その場所が国有林となっていることは知らなかったし、社寺と山があるのが当たり前のように感じていたので、特にその場所について考えることもありませんでした。しかし、実際に足を踏み入れることで、「高台寺山国有林は放置されてしまったらこの景観が保たれることはない。しっかりした管理が必要な場所なのだ。」ということを実感しました。

実際に見学をして、私の中で特に印象に残っているのは、カシノナガキクイムシ防除対策についてのお話と、シイ林への急速な遷移の移行についてのお話です。

まず、カシノナガキクイムシについてですが、近年、高台寺山国有林ではナラ枯れの被害が増大しており、それに伴い様々な防除対策がなされているとのことでした。例えば、木々の幹を半面覆うと防除になることや、ビニールによる密封などが行われていること、そしてボランティアの方々の協力がなくてはならないことなどが興味深かったです。多くの木々が枯死していくことは、生態系保全という面からも大きな問題であると思うし、高台寺山国有林を管理・維持していくにあたり、重要な課題であると感じました。このことについて、職員の方から様々なお話を聞くことが出来たのですが、このとき、地面に多くのゴミが落ちていたことがとても気になりました(ペットボトルなど)。車の通れる道が近くにあることで、容易にゴミのポイ捨てが行われてしまっているのかもしれません。しかし、景観を守る、という面からも、このこともまた、どうにかしなければならない問題であると思います。

次に、シイ林への急速な遷移の移行に関して、実際に林内を見学して、確かにシイが多くの場所を占めていました。林内を歩きながら、生長の進んだシイだけではなく、シイの芽生えもまた多数存在することに私は驚きました。シイが光を独占してしまい、他の広葉樹が生長できなくなれば、生態系の豊かさを損なうことにつながります。林内を歩くことで、シイを選択的に伐採していく必要性について実感することができました。

ここで、高台寺山国有林を今後どのように管理していくかについて考えると、この国有林の特徴を大きく生かす管理がなされるべきであると思います。そのように考えると、やはり、京都の主要な景観を成す要素である、という部分が特に大きな特徴であるように私は感じます。旧社寺領であるというだけあって、多くの有名な社寺が山麓に存在するというところが特徴的であり、観光地として有名な場所にあるということを生かすことができれば、管理ももっと多面的に展開することができるのではないかと思いました。

高台寺山国有林はレクリエーションの森に指定されており、ハイキングやバードウォッチング、展望台利用などのできる森となっていますが、観光客がただハイキングをするだけで終わってしまうのではなく、高台寺山国有林の現状について知ることができるように、例えばボランティアの人々によるガイド付きのツアーを展開し、そのツアー料金の一部を森林の整備にまわすことはできないでしょうか。また、森林管理体験ツアーと称して、カシノナガキクイムシ防除対策や、シイ伐採などの作業のうち、一般の人々でも行える作業を体験することのできるツアーを開催するのもよいと思います。子供向けのツアーとしては、ドングリや、あるいはゴミ拾いをしながら、国有林の豊かさや大切さを易しく広めるツアーというのもよいのではないでしょうか。森林での体験の後は、間伐材を用いて、大人向けには雑貨など(簡単に作ることのできるもの)、子供向けにはおもちゃ作りなどの講座を開き、終了後はお土産として持ち帰れる、というのも楽しいと思います。

いずれにしても、京都のまちにとって大切な国有林を、自分たちで守っていく、という意識を一般の人々が持ち、森林を身近に感じることができるようにすることが、高台寺山国有林を今後管理・維持していくにあたって重要なことだと私は思いました。少しでもそのような意識が広がれば、森林の管理・維持に何らかの形で協力しようという人が増えていくだろうし、そのことが、高台寺山国有林の生態系や景観を守っていくことにもつながると思います。

今回、高台寺山国有林を見学し、多くのことを学ぶことができたとともに、知らないことが非常に多いことを痛感しました。これから、様々なことをもっと深く学んでいきたいと思います。最後に、案内して下さった職員の皆さん、本当にありがとうございました。

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