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国有林発・フォレスター活動だより

地域課題に取り組む国有林フォレスター 

北海道森林管理局では「民有林と連携した地域の課題解決に向けた取組」を推進しています。

各森林管理署・支署では民有林との連携強化や技術的支援を具体化させるため、北海道の振興局、森林室との打合せを通して地域林業の現状把握と課題の共有を行っています。

そして、その中から各森林管理署・支署ごとに地域に貢献できる課題を絞り込み、テーマを設定しています。

「国有林フォレスター」は各地域において、これらの課題解決に向けた方策の検討を中心となって進め、具体的な施策の実施に結びつくよう取り組んでいます。  

 

地域課題解決に向けた国有林フォレスターの活動

【渡島森林管理署

渡島森林管理署では、低コスト施業の普及・定着に向けた列状間伐の推進及びコンテナ苗への理解の促進をはじめとした地域の課題解決に向けた取り組みを行っているのでその活動を中心にご紹介します。

渡島地域の概要

渡島森林管理署は北海道の南西部に位置し、渡島檜山流域における国有林の管理経営を、檜山森林管理署と行っています。

渡島檜山森林計画区は、北は狩場山地を境に後志胆振森林計画区に接し、渡島半島を囲むように日本海側から噴火湾に至るまで非常に長い海岸線を有しています。

山地は、北縁に渡島半島最高峰の狩場山(1,520メートル)、第2峰の遊楽部岳(1,277メートル)の高峰がありますが、脊梁部は、400メートル~1,000メートル程度の比較的標高の低い山地が位置しています。

また、日本海に注ぐ清流 後志利別川、太平洋側には噴火湾に注ぐ遊楽部川が大きな河川となっています。

国有林面積は、2市15町に広がる約25万8千ヘクタールであり、流域土地総面積の39%、流域森林面積の48%となっています。

このうち、当署では、七飯町、鹿部町、森町、八雲町、長万部町、今金町及びせたな町の7町に広がる約14万3千ヘクタールを管轄しています。

管内の民有林は、道有林、市町村有林、私有林等を含め約10万6千ヘクタールであり、人工林率は約36%となっています。

当地域の民有林も道内の他地域と同様に、造林未済地と間伐未実施林分の解消が課題となっており、課題解決には施業の集約化と効率的な間伐の推進等が必要となっています。

 

手前に大沼、奥に駒ヶ岳が写った写真

                   大沼から望む夏の駒ヶ岳

 

渡島地域の課題 

渡島地域では、渡島総合振興局等の道の機関と当署が連携して地域課題の把握や解決に向けた取り組みを行ってきており、地域の現状を踏まえて、様々な課題の中から以下の4課題の解決に向けて重点的に取り組むこととしています。

 

  1. 低コスト施業の普及・定着に向けた列状間伐の推進及びコンテナ苗への理解の促進
  2. 道南スギをはじめ地域材の需要拡大
  3. 木質バイオマスの利用促進
  4. エゾシカ被害防止対策

 

これらの課題解決のため、渡島・檜山流域を管轄している北海道の出先機関と国有林の出先機関で構成される渡島檜山地域林政連絡会議で十分な議論を行い、着実に取り組みを進めているところです。

今回はこの取り組みのうち、「低コスト施業の普及・定着に向けた列状間伐の推進及びコンテナ苗への理解の促進」、「道南スギをはじめ地域材の需要拡大」の2つの取り組みを中心に紹介します。

 

渡島檜山地域林政連絡会議の写真

          渡島檜山地域林政連絡会議

 

課題解決に向けた取り組み

低コスト施業の普及・定着に向けた列状間伐の推進及びコンテナ苗への理解の促進

低コスト施業の推進は林業の大きな課題のひとつとなっています。

当地域の現状は、民有林に間伐未実施林分が多く造林未済地も存在するため、列状間伐の推進とコンテナ苗への理解促進による低コスト施業の推進が重要となっています。

 

 

列状間伐の推進に向けた取り組み

一般の民有林所有者が身近なところで列状間伐のメリットを見ることができるように、平成27年度に民有林に「列状間伐モデル林」を渡島管内2カ所、檜山管内2カ所の計4カ所を設定しました。

この「列状間伐モデル林」の効果的な活用方法や一般の民有林所有者に対する効果的なPR方法を検討するため、渡島檜山地域林政連絡会議の委員をはじめ国有林や道庁の関係者を対象に現地検討会を開催しました。

現地検討会の最後に行われた意見交換では、「モデル林を活用して搬出間伐を進めるきっかけとしたい」、「列状間伐と定性間伐の事業費の違いや作業の安全性など、メリット・デメリットをわかりやすく整理できないか」などの意見が出され、活発な意見交換となりました。

平成28年度は、特に列状間伐の推進が遅れている渡島西部地域にもモデル林を追加し、市町村、森林組合などの林業事業体、森林所有者などを対象に現地検討会を開催して効果的に列状間伐の普及・定着を図る具体的な取組を進めることとしています。

 

 

モデル林現地検討会の写真 列がはっきりとわかるモデル林の写真

 

列状間伐モデル林(一般民有林)の設定に向けた現地検討会

 

コンテナ苗への理解の促進に向けた取り組み

平成27年度に国有林及び民有林のコンテナ苗植栽現場において、普段は苗木出荷時期と重なり植栽現場を訪れることが難しい育苗業者と、造林業者を交えた現地検討会を実施しました。

傾斜のある現地でコンテナ苗専用の植付器具を使った植付作業に立ち会った育苗業者は、自らが生産しているコンテナ苗の植付作業を見学する初めての機会となりました。

育苗業者による「梱包に使用しているビニール袋やラップを作業の際に回収する労力」についての質問に対し、造林業者の作業員は「そこまで気にならない」と回答する等、コンテナ苗の使用感やどのような林地にどのように植栽されているか等について積極的に意見交換を行いました。

その中で、

  1. コンテナ苗の規格の統一による生産コスト削減と量産化
  2. 植栽地での簡易な運搬の方法
  3. 輸送車両の荷台の改良

等について意見やアイデアが多数寄せられ、コンテナ苗の低コストな活用方法について、育苗業者と造林業者が連携し地域で協力を進めていくことなりました。

 

コンテナ苗の植付け器具等を説明している写真 コンテナ苗の植付け作業を見ながら意見交換等をしている写真

育苗業者を交えたコンテナ苗植栽現地検討会(檜山署3199林班)

 

道南スギをはじめとした地域材の需要拡大

近年、北海道の代表港の一つである函館港から木材の輸出・移出量が増加しており、平成26年度は取引量が約4万6千立方メートルと、平成25年度の約3倍に伸びています。

このように木材流通が活発化している函館港を当署は注目しており、函館港からの木材流通の情報収集を行っている北海道森林管理局函館事務所と連携しながら、木材の流通を行っている事業体から講師を招き、函館港からの木材流通の動向と今後の見通しについて勉強会を開催しました。

勉強会では、中国、韓国向けのトドマツ、スギの輸出動向や、需要者側の要望や実情を的確に把握し、日本各地の流通状況などを含めて分析し、トドマツだけでなくスギやカラマツなどの多様な樹種が混在する道南の特色を活かした流通に取り組んでいくことが重要との講義がありました。

需要拡大のためには、需要者のニーズを踏まえた樹種や品質、生産時期、量など安定供給に向けた生産体制の整備や市町村森林整備計画への反映など、川上から川下までをしっかり繋いで行くことが重要と考えており、地域材の需要拡大に向けた更なる取り組みを進めていきたいと考えています。 

 

道南スギで津軽海峡の波を表現したJR木古内駅コンコース(写真提供:JR北海道)

 道南スギで津軽海峡の波を表現したJR木古内駅コンコース(写真提供:JR北海道)

 

その他の課題への取り組み

当地域では、「木質バイオマスの利用促進」に取り組んでおり、木質チップの農業基盤整備(暗渠疎水材)や畜産業(家畜敷料)への利用が進んできました。

近年では、北海道各地でバイオマス発電施設が建設されるなど、木質バイオマスのエネルギー利用が始まっており、道内の大型バイオマス発電施設が全て稼働すると、年間60~70万立方メートルの木質バイオマス原料の需要が見込まれています。

当地域には木質バイオマス発電施設はありませんが、苫小牧市内に建設された大型のバイオマス発電施設では、年間6万トン、材積に換算すると約8万立方メートルの木質バイオマス原料の消費が見込まれています。

この大型のバイオマス発電施設は、木質バイオマス原料集荷拠点の設置や、船舶や鉄道による木原料輸送の実証を行っており、中遠距離からの原料の集荷も考えられるため、地域で木質バイオマス原料の安定供給体制等を整備していく必要があるのではと考えています。 

 

クレーンで船に丸太が積まれている写真

      木質バイオマス発電用原木海上輸送実証事業

 

また、渡島地域でも今後、エゾシカ被害が増えることが懸念されるため、「エゾシカ被害防止対策」として、被害状況及び対策について情報の共有化を図ることが重要となっています。

このため、国有林で行っている天然林エゾシカ簡易影響調査を民有林でも実施することとなり、調査手法や調査結果の評価の技術向上のため民国合同で研修会を七飯町のカリマ国有林で開催しました。

民有林と国有林が調査結果を共有することで、エゾシカ被害防止に向けた有効な情報になることを期待しています。

 

エゾシカ簡易影響調査の民国合同研修会の写真

        エゾシカ簡易影響調査の民国合同研修会

 

国有林フォレスターとして

 これらの取り組みを実行できたのは、渡島檜山地域林政連絡会議を中心に、渡島総合振興局、檜山振興局など道南地域を管轄する関係機関の連携があったからであり、国有林フォレスターとして、道のフォレスター等との連携・調整を密に行った結果だと思います。

また、当署はこれまで「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」に参画し、国有林野事業における先駆的な取り組み事例等の紹介や、「地域の課題解決に向けた取り組み」等を進めてきており、平成28年度からは、民国の路網の連結や土場の共同利用などによる効率的な森林整備や、民国連携したシステム販売などの木材の安定供給等を新たに進めていくため、森林整備推進協定の締結を目指して取組んでいきたいと考えています。

寿都町と後志署の森林整備協定について説明を受けている写真 寿都町の森林整備推進協定締結箇所を現地見学している写真

平成25年4月に国有林野事業が一般会計化され、公益重視の管理経営を一層推進するとともに、その組織力・資源を活用して森林・林業の再生へ貢献することとされ、その一環として、国有林野職員を森林総合監理士(フォレスター)等として育成し、市町村森林整備計画の作成支援等に取り組むこととされたところです。

このことは、国有林として新たに取り組むこととなった重要業務であり、私は国有林フォレスターとして、地域の林業関係者を繋ぐコーディネーターの役割もしっかりと果たしていくとともに、フォレスターに必要な技術力・構想力・実行力及びコミュニケーション力等をさらに高めていきたいと考えています。

地域の構想を地域と一緒になって考え、より良い方向へ向かうよう微力ながら貢献できればと考えておりますので、皆さんのご理解とご協力よろしくお願いします。

渡島署国有林フォレスターの写真

国有林フォレスター    

  渡島森林管理署

    森林技術指導官 本田 誠

 


 

渡島森林管理署

北海道二海郡八雲町出雲町13

電話:050-3160-5815

ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/osima/index.html

管轄区域:今金町、長万部町、鹿部町、せたな町、七飯町、森町、八雲町


 

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お問い合わせ先

森林整備部技術普及課
ダイヤルイン:050-3160-6285
FAX:011-622-5235