地域と連携した諸課題への取り組み
【十勝西部森林管理署】
十勝西部森林管理署では、林業に関する様々な課題解決に向け、地域との連携を大切にしながら取り組んでおり、なかでも森林施業の低コスト化は大きな課題となっています。現在、列状間伐の推進やコンテナ苗を活用した一貫作業など検証し、これらの普及に向けて取り組んでいます。
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管内の概要について
十勝西部森林管理署は帯広市に位置し、10の市町村(帯広市、清水町、芽室町、音更町、中札内村、更別村、大樹町、広尾町、幕別町、豊頃町)が管轄区域となっており、十勝平野の広大な田園風景と雄大な山岳景観のコントラストが特徴的です。
管轄区域の総面積約49万ヘクタールのうち、森林面積は約25万2千ヘクタールで51.5パーセントを占めています。
そのうち国有林は、十勝平野の西部に位置し南北に細長く約13万9千ヘクタールにおよび、そのうち約4万9千ヘクタール(35パーセント)が日高山脈襟裳国定公園に指定され、原生的な天然林を有する日高山脈については、「日高山脈森林生態系保護地域」として約6万9千ヘクタールを指定しており、その保全を図っています。

虹大橋からピョウタンの滝及び森林生態系保護地域を望む
地域の現状
地域における森林・林業に関する課題は、伐採跡地で適切な更新が図られていない箇所の把握、低コストかつ安全に作業できる列状間伐の普及が進まない、防風保安林の施業のあり方、カラマツヤツバキクイムシによる森林被害など様々なものがあります。
森林整備の低コスト化に向けた取り組みは、諸課題の解決にあたり無くてはならないものであり、当署では伐採から地拵、植栽までを一貫して行う作業方法や、高効率な作業システムでの列状間伐、さらにはコンテナ苗の活用などを事業に取り入れて実施してきているところです。

重機にアタッチメント(特注のレーキ)を付け地拵作業
民有林と国有林が連携した地域課題への取り組み
市町村森林整備計画実行管理推進チーム
平成24年度に十勝流域の各市町村で「市町村森林整備計画実行管理推進チーム」(以下、推進チーム)が、十勝総合振興局、各市町村、森林組合、民有林所有者、事業体、森林管理署などの林業関係者をメンバーとして組織されました。
現在、当署は、帯広市、清水町、芽室町、中札内村のそれぞれが単独で組織している推進チームと、更別村・大樹町・広尾町・幕別町の4町村が合同で組織している推進チームに参画しています。

帯広市推進チーム会議の様子
それぞれの推進チームにおいては、防風保安林の伐採方法と伐採後の植栽樹種の考え方や、伐採跡地で適切な更新が図られていない箇所の把握とその箇所の天然更新が完了したと判断するための調査方法、カラマツヤツバキクイムシによる食害による立ち枯れ被害対策、さらには、これらの課題に関する現地での検討や研修会の開催など、多岐にわたる取り組みが行われています。
私も推進チームの一員として市町村行政に参画し、貴重な体験をさせていただいています。

中札内村推進チーム会議(防風保安林の施業方法を現地にて検討)
帯広市有林管理経営審議会
市有林の管理経営に関する事項について審議する帯広市有林管理経営審議会に委員として参画しています。
審議内容は、市有林の林業専用道や植栽箇所などの状況確認、管理経営に関する基本的な考え方、森林計画制度における帯広市森林施業計画の整合性の確認、同計画樹立までのスケジュール管理、同計画の枠組み作成等であり、数度にわたる審議を終え答申に至っています。
平成27年度は、「帯広市森林施業計画 第12次市有林施業概要」と帯広市有林の施業の基本となる帯広市森林施業計画の樹立期であり、帯広市の森林に対する考え方を深く学ぶ機会を与えていただき、大変参考になっております。

現地状況確認し、将来構想について意見交換
北海道との連携と検討会の開催
地域の森林・林業に関する課題等について情報共有を図り、連携して解決に向けた取り組みを進めるための十勝地域林政連絡会議に、十勝総合振興局の林務課や森林室、北海道森林管理局の帯広事務所、十勝東部・十勝西部森林管理署、東大雪支署の担当者が参画しており、当署は十勝総合振興局森林室と合同で事務局の運営も行っています。
これら振興局と連携した取り組みは、平成25年6月17日北海道知事と北海道森林管理局長が締結した「北海道の森林づくりに関する覚書」に基づき行っており、平成27年度は、道有林で実施された列状間伐(2回目)箇所において列状間伐を普及するための現地検討会を開催しました。
また、低コスト造林を実現するためのコンテナ苗の活用方法等に関する現地検討会も行っています。

列状間伐現地検討会
コストの縮減、伐倒作業における安全性を確保する目的で、列状間伐を実行した道有林において、十勝総合振興局林務課及び森林室から6名、北海道森林管理局の帯広事務所、十勝東部・十勝西部森林管理署、東大雪支署から9名が参加して現地検討会を開催しました。
現地は、豊頃町長節の道有林214林班、昭和58年に植栽された33年生のトドマツで、面積が13.28ha、平成19年度に1回目の間伐を実施し、平成27年度に2回目間伐を列状で実行した箇所です。
チェンソーによる人力での伐倒作業ではあったものの予定作業日数を下回り低コストになったこと、間伐後に台風が通過しても風倒被害は無かったことなどが報告されました。
意見交換では「間伐を列状で行うと、切らずに成長させれば将来高く売れる可能性のある立木まで切ってしまう」等の意見が根強くあり、私有林への普及の難しさが話されていました。
今後も列状間伐の普及を継続していくこととしましたが、民有林へ普及していくためには、定性間伐と列状間伐の経費の比較など、具体的な説明に耐えられる数値や説得力のある資料が必要ではないかと考えているところです。

列状間伐実施箇所で現地検討
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コンテナ苗現地検討会
森林施業の低コスト化を進め、作業の効率化による作業者の負担軽減を図ることで、担い手の確保と持続的な森林経営を確立することを目的に、平成27年度はコンテナ苗の活用に向けた検討会を2度開催しました。
平成27年6月9日、十勝東部森林管理署螺湾森林事務所部内10林班において、コンテナ苗植栽作業の功程調査を見学しつつ、コンテナ苗用植付器具による植栽の効率性を確認しながら、意見交換を行いました。

さまざまなコンテナ苗用植付器具を見学
平成27年11月6日、コンテナ苗植栽現地研修会として道有林249林班でコンテナ苗植付器具による植栽作業の功程調査を見学しつつ意見交換を行い、その後、コンテナ苗の生産工程・育苗状況を視察し、意見交換を行いました。
これら2つの意見交換では、植付器具の長・短所や植付場所への苗木運搬方法等について、積極的に議論されました。
今後は功程調査の結果分析や、様々な問題点の解決に向けた取り組みを進めていかなければならないと考えますが、伐採から造林地への植栽までを一貫して行う作業方法との組み合わせや、その他の方法などトータルコストを削減していくことを考えながら、進めていく必要があると考えています。
コンテナ苗の植付けを実演
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コンテナ苗の培土の説明
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国有林フォレスターとして
十勝地域には、様々な課題がありますが、現段階で重点的に着手すべき課題は、森林整備にかかるコストの縮減策が重要だと考えています。これらの活動は、森林技術指導官一人ではとても出来るものではありません。いろいろなアイディアを持ち寄り、それらの実行・検証を行いながら地域にあったものを作り上げていかなければならないと考えています。
そのためには、署内での民有林支援への体制を整え、造林事業にコンテナ苗を活用する等の事業実行への取り組みや、これまでの事業実績等を生かしつつ国有林だからこそ取り組めることを、署一丸となって取り組んでいくとともに、推進チームや林政連絡会議などの組織と連携し、地域の林業関係者の皆様と一緒になって活動していきたいと考えていますので、よろしくお願いします。
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国有林フォレスター
十勝西部森林管理署
森林技術指導官
我妻 正寿
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十勝西部森林管理署
北海道帯広市東9条南14丁目2番地2
電話:050-3160-5795
ホームページ:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/introduction/gaiyou_syo/tokatiseibu/index.html
管轄区域:帯広市、清水町、芽室町、音更町、中札内村、更別村、大樹町、広尾町、幕別町、豊頃町
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