留萌産トドマツ販路拡大に向けて~輸出に向けた民有林との連携~
【留萌南部森林管理署】
留萌南部森林管理署では、留萌振興局と地域林業の現状共有を図り、地域と連携して「留萌材販路の拡大」を推進しています。今回はその取り組みのうち「留萌産トドマツの韓国への輸出」を紹介します。
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留萌地域のあらまし
留萌流域は、南が増毛町から北は天塩町までの日本海に面した南北130キロメートルの細長い1市6町1村で構成されている地域です。
この地域の83%を占める森林のうち、留萌南部森林管理署の国有林は1市3町(増毛町、留萌市、小平町、苫前町)に分布し、その61%が国有林でトドマツを主体とした人工林は20%です。
海沿いから眺める暑寒別岳
地域の現状
留萌流域全体の人工林は、トドマツが大半を占め、36年生の間伐適期に達する林分から、55年生の本格的な利用期(主伐)を迎える林分まで存在する資源構成となっており、一層の利用の促進が望まれています。
また、トドマツの年間の素材(丸太)生産量は約3万立方メートルで製紙原料向け等の低質材が半分以上を占め、地元での利用量が少ないことから、そのほとんどが上川・宗谷管内の工場へ輸送費をかけて出荷し消費されている状況にあります。

間伐適期を迎えるトドマツ人工林
地域の課題
留萌地域のトドマツ人工林の森林資源は、5~10年後に伐採適期(収穫時期)を迎え素材供給量の増加が見込まれるものの、長期にわたる木材の価格低迷等により、当署管内の木材工場が3社まで激減していること、さらには、木材需要の低迷・担い手不足が大きな課題とされており、今後、適切な森林整備はもとより、貴重な人工林資源を生かすために、留萌産トドマツのより有効な木材利用と販路を拡大する取り組みが求められています。

高性能林業機械によるトドマツ丸太の椪積(はいづみ)作業
課題解決のために「留萌材販路の拡大」を推進
こうした状況を受け、地域の森林・林業関係団体等で構成されている留萌流域森林・林業活性化協議会で「留萌材販路拡大のための実行計画(平成25年5月策定の5年計画)」が策定され、その中の具体的な取り組みの一つが留萌港からの木材輸出です。
船を使った輸出は、多くの木材を集荷する必要があり、木材の長期間の放置や夏場の集荷は材が傷みやすいため、限られた時期と期間での集荷が必要です。
また、需要者は安定供給を求めており、これに対応するためには、森林組合、道有林、国有林といった山側の連携が必要といえます。
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留萌材販路拡大のための実行計画管理分科会
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具体的取組及び推進方法
留萌港からの販路拡大(トドマツ材輸出)
「留萌港からの販路拡大」では2つの大きな柱として
- 木材の集荷方法や移輸出先の木材需要などの情報収集
- 日本海側拠点化形成促進港である留萌港を活用した木材移輸出
について地域で取り組んでおり、その一つとして留萌港から韓国へのトドマツ材の本格的な輸出を平成26年度からスタートしています。
その輸出に至ったプロセスは、平成25年8月に北海道森林組合連合会と商社の連携によるトドマツ材の輸出の提案があり、同年12月に韓国へトライアル輸出を行った結果、「品質に問題なし」との回答を経て、平成26年6月2日に、留萌港より韓国へトドマツ原木輸出が実現しました。
以後の輸出状況は、下表のとおりで韓国へ約8千立方メートル輸出しています。
留萌南部署の取り組み
当署でも、留萌振興局と地域林業の現状共有を図り、共通認識のもと、地域の課題解決に向けた取り組みの大きな柱として「韓国輸出に向けた国有林の協力」を掲げ、平成26年度から取り組んできています。
具体的には、素材の安定供給システム(安定供給システムの詳細についてはこちらをクリック)や地域の林業事業体への情報発信等、国有林として取り組める対応を行ってきましたが、残念ながら国有林材の輸出には至っていない状況です。
また、平成27年2月に留萌振興局等により「韓国における木材流通実態調査」が行われ、4月の「報告会」に参加してきました。
当署としても、地域に貢献するスタンスでトドマツ材の輸出に向けた取り組みを継続していきます。
また、留萌港の利活用は地域振興の大きなテーマであることから、山側として木材の安定供給体制づくりに取り組むとともに、地域の各種会議や打合せにおいて情報共有を行い、留萌振興局と連携し国有林と道有林の共同出荷に向けた検討も進めるなど、留萌材の新たな販路拡大にも取り組んでいきます。

留萌港での貨物船への積み込み作業
韓国における木材流通実態調査報告会
留萌流域森林・林業活性化協議会や市町村森林整備計画実行管理推進チームなどと連携する中、留萌振興局の取り組みによる「地域の海外発信力強化事業」として韓国におけるトドマツ材の流通実態調査が行われ、その「報告会」に参加したので、その内容をレポートします。
報告会の内容
- 調査日程:平成27年2月25日~27日
- 調査団メンバー:留萌市副市長や留萌振興局長、業界関係者など
- 原木消費量が年間7万2千立方メートル。
- 原料は、スプルース(ロシア)・ヘムロック(カナダ)・ホワイトウッド(欧州)のほか、トドマツは全体の3%。
- トドマツは、軽くて使いやすいため、ロシアのスプルースの代替として使える。
- トドマツの用途は、今のところは「垂木」
- 節が3センチメートル以上は使えない。径が太いものは節が大きすぎて使えないものが多く、径20~30センチメートルが望ましい丸太。
- 節が少ない良いトドマツがほしい。
- ロシア材は冬場に供給が不足、価格が不安定、トドマツの安定供給を望む。
- ロシア材は、トドマツより1立方メートル当たり製材販売価格で9000ウォンと高い。
- 製材は、建築資材を扱う代理店に全て納品。

- 原木消費量は年間10万m3
- 原料は、スプルース(ロシア)・ヘムロック(カナダ)・ラジアータパイン(ニュージーランド)等を使用。
(2)仕様・用途
- スプルースは、平均径28センチメートルを仕入れている。
- トドマツは、ロシアのスプルースの代替として考えている。
(3)流通・意見
- トドマツは、今後年間1万~1万2千立方メートルの需要がある。
- ロシア材の価格は、冬期に値が高く夏は安くなる。トドマツの価格変動の長期見通しを知りたい。
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3.建築現場
- 建設されている住宅の9割は集合住宅。
- 木造建築は少ないが木材需要は多く、外壁材、デッキとして多く使われている。
- 大型マンションの建設現場では内装材(垂木等)の使用状況を確認した。

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報告会参加者による意見交換
- トドマツの評価について最終消費者の意見は聞けなかったが、現場からは軽くて使いやすいと評価されている。
- トドマツの消費見通しについて、
- 供給が可能なら全量をロシア材からトドマツに変えても良いという工場もある。
- 垂木を2割から3割に増量予定の工場もあり、増量分はトドマツが選択される余地がある。
- 規格や仕様(節は嫌うがアテやヌレは気にしない等)の違いを感じた。
- トドマツ以外の樹種について興味がある工場もあり、トウヒの輸出については、トドマツと同様にトライアル輸出して、使用できるか評価を受ける必要がある。
等の意見交換がなされ閉会となりました。
国有林フォレスターとして
今回、韓国における木材流通実態調査報告会に参加して、トドマツは垂木製品として需要があり、冬期間の供給が少なく供給量・価格の不安定なロシア材(スプルース)と違って、トドマツ材は安定した販路として期待できることがわかりました。
その反面、北海道での素材の仕分け、出荷時期、安定供給と併せて効果的な販売促進活動、需給バランスの見極め等の課題も明確になってきています。
地域林業の発展には、この課題をどのように解決していくかが重要であり、解決のために、国有林フォレスターとして何ができるかを考えていくこと、また、その中心となるべき役割を担っていることを自覚し、民有林関係者との情報交換を行いながら良好な信頼関係を作っていくことが重要と考えています。
今後も、地域の実情を把握し、地域の皆さんの理解と協力を得ながら、地元振興局、市町村、森林組合等の関係機関とさらなる連携を深め、民国連携を進めていく上で重要な木材関連情報や知識の習得について日々、研鑽しながら、今後も地域の課題解決に向けた取り組みを進めていきたいと思います。
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