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ブナの森へようこそブナ林観察ガイド

白神山地森林生態系保護地域(世界自然遺産)

二ツ森からの白神山地

林野庁が全国に設定している森林生態系保護地域は平成25年現在で30箇所ありますが、白神山地森林生態系保護地域は、全国の森林生態系保護地域のなかでも極めて広大な面積のブナ天然林が分布していることが特徴となっています。
この地域は年平均気温が比較的標高の低いところでも9℃以下と低く、また積雪量も250cm以上と厳しい気象状況下にあります。
地質は約5千万年前の先第三期に生成された堆積岩と白亜紀に生成された花崗岩を基調とし、その上に新第三期(5百万年前)の緑色凝灰岩が広く分布しています。
山腹から山頂付近までブナやミズナラ、カエデ類などを中心に構成された冷温帯落葉広葉樹林が広く分布しており、局地的にミヤマナラ、ヒメヤシャブシ、キタゴヨウ、サワグルミなどを主とした森林が見られます。また、稜線部にはハイマツ帯も見られます。ここに生息する動物も種数、個体数ともに極めて豊富であり、青森・秋田両県に生息している哺乳類や鳥類の半数以上が確認されています。特に鳥類は豊富で、天然記念物に指定されているクマゲラの生息が確認されているのをはじめ、イヌワシ・クマタカなどの猛禽類、ヒガラ、コガラなどの森林棲鳥類、キセキレイ、カワガラスなどの渓流棲鳥類、ビンズイなどの高山棲鳥類などが生息するといわれており、極めて多様性に富んでいます。
自然景観もきわめて雄大で、小岳や二ツ森山頂からは森林生態系保護地域の核心部をはじめ、遠く岩木山や鳥海山を望むことができます。
世界遺産委員会第17回通常会議で、原生的なブナ天然林が大面積にわたって純林状態で維持されている世界的にも希少な地域であるとして、世界自然遺産として登録されることが決定されました。
白神山地森林生態系保護地域の区域は、青森県内と秋田県内を合わせて約17,000ha(170平方km)の面積があります。
保護地域内は、利用の対象とせず厳正に森林生態系の保存を図る「保存地区」と緩衝地帯として森林生態系に配慮した利用を図る「保全利用地区」に区分され、それぞれの面積は、保存地区が約10,000ha、保全利用地区が約6,800haとなっています。
保存地区は、原則として入林が禁止されています。学術研究の場合は入林できますが、米代西部森林管理署長の許可が必要です。(秋田県側の保存地区)
二ツ森や小岳山頂部などの保全利用地区は、自然観察の場として教育や森林レクリエーションなどに利用されています。

ブナの天然林

白神山地の中心は、ブナを主体とする天然林です。ブナ林は高い環境保全機能をそなえ、多くの野生動物が生息する豊かな森林です。

(ア)ブナ林の分布

世界のブナ

日本のブナ分布

現在は東北地方の山地帯を中心に、南は鹿児島県の高隈山から北は北海道の黒松内まで広く分布しています。世界のブナは現在8属が知られています。そのうち、南極ブナ属を除いて全て北半球の冷温帯に広く分布しています。我が国ではブナとイヌブナの2種が分布しています。
我が国のブナは晩氷期(1万2000年前)頃を境にして、北緯39~40°以南の多雪地を中心に分布を拡大しました。その後温暖化が進む中で、西南日本の低地からブナ林は徐々に減少し、逆に北緯40°以北にも出現するようになりました。

(イ)ブナ林の植物相

ブナ林内植物

ブナ林は多くの場合、ブナを中心にカエデ類など様々な落葉広葉樹で構成されています。ブナ林の植物層は積雪と深い関わりがあり、日本海側の多雪地帯と太平洋側の少雪地帯で特徴が大きく異なります。
日本海側と太平洋側のブナ林に存在する主要な植物の構成は次のようになっています。
太平洋側のブナ林はモミ・ツガなど針葉樹も交え、植生が多様性をもっている傾向があります。これに対し、日本海側のブナ林は比較的混在する樹木の種数が少なく、全体的に似かよった森林となっていることが 特徴となっています。

(ウ)ブナ林の動物相

ブナ林の動物

 ブナ林には大型鳥獣から小さな土壌動物まで、多種多様な動物が生息し、食物連鎖を構成しています。
我が国の森林原野で繁殖する鳥類は約150種ですが、そのうちブナ林では79種が確認されています。しかし、単位面積あたりの鳥類の密度、種数を調べてと、ブナ以外の天然林に比べて必ずしも多くはないことも事実です。鳥類にとっては植物種の多様性ということが重要なのでしょう。
クマゲラは天然記念物及び環境省のレッドデータブックの危急種に指定されている我が国最大のキツツキですが、東北地方の生息の確認のほとんどがブナ林又はブナ伐採跡地となっています。ブナ林が東北地方を代表とする天然林であるためと考えられます。
また、我が国では海獣類を除き、約110種の哺乳類が記録されていますが、この内ブナ林に生息が確認されているものは56種に及んでいます。ブナやミズナラの堅果はノウサギ、リス、カモシカなどの草食動物の恰好の餌となりますし、ブナの樹洞はツキノワグマやコウモリのねぐらとなります。

(エ)ブナの生理的特徴

胸高直径とブナ種子の関係

ブナの開花・結実は、40~50年生(胸高直径で15~20cm)程度から始まるといわれています。毎年結実されるとは限らず、年によって豊凶があります。豊作年は通常5~7年間隔でやってきます。上の図はブナ天然林におけるデータですが、胸高直径25~30cmで3千から5千個、40~50cmで1万5千~4万3千個、75cmで6万個の種子が生産されています。
林床に落下した種子は、多くが秋~冬の間に動物によって捕食され、また、一部は腐朽し、残ったものが翌春発芽します。林床に発生したブナ幼樹は数年のうちにほとんど光不足や気象害などにより枯死します。幼樹の成長は、ミズナラ・イタヤカエデなどに比べて著しく遅く、10年ぐらいまでは樹木のなかで最下位クラスにあります。しかし、年を追うごとに成長がよくなり、樹齢25年頃以降では他の樹種を圧倒するようになります。成長のピークは50年から120年ともいわれており、推定樹齢700年のブナも確認されていますが、一般的には300年前後が寿命ではないかといわれています。

(オ)ブナ林の土壌

土壌断面

森林の土壌は、風化した岩石に樹木の腐朽物などが加わって生成されます。生成された土壌は樹木の根や土中の小動物の作用によって大小様々な孔(団粒構造)が形成され、さらに、動物の死骸などの有機物が土中に溶けだし、土壌の成分となります。そのようにして発達した森林の土壌は、樹木や動物の生息に欠かせないものです。
母材である岩石の種類、地形、気温、降水量、さらに生物的要素など様々な条件によってその森林の固有の土壌が形成されます。したがって、同じブナ林の土壌でもその生成条件により多くの種類がありますが、一般にブナなどの落葉広葉樹の落ち葉は分解が速く、また、ナトリウムやマグネシウムなどの成分の含有が多いため、寒冷地であってもそれ程土壌が酸性化しないといわれています。また、大小の根系が土中に発達し、土壌中の小動物も豊富なために土壌理学性も良いといわれています。

(カ)ブナ林の水保全の働き

ブナ林の水の流れ

流出量

森林は洪水や渇水を防ぎ、また、濁水を浄化してきれいなおいしい水をわたしたちに与えてくれます。これは、降水や融雪水が一時的に土壌中に溜まった後、ゆっくりと出てくるために流量が平準化することや、有機物などが森林土壌中のバクテリアなどの微生物によって分解されるためです。このような水保全の働きはブナ林に限らず全ての森林が持っている機能です。
それではなぜ一般に、ブナ林の水保全の機能が大きいといわれているのでしょうか。
我が国のブナ林はその多くが大径木によって構成され、林内には大小の様々な木や草が繁茂しています。このような複層林型の森林では、降った雨が比較的多く樹冠に捉えられ雨水の急激な流出を抑制します。また、ブナの大径林では、長い年月の間に土壌の層が厚くなり、さらに複雑な根系によって土壌の団粒構造が多くなります。そのため、雨水を土壌中に蓄える能力も比較的大きくなっています。また、ブナの生理的特徴として、降水量が多く緩傾斜地で土壌が厚く堆積しているような場所を好むことも保水力が大きいといわれる一因となっています。つまり、保水力の大きい林地にブナ林が形成されている場合が多いということです。白神山地をみても尾根沿いや急傾斜地にはキタゴヨウなどの針葉樹が成立し、比較的緩傾斜の土壌が厚く堆積しているような場所でブナ林が成立しています。

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