資料1

歴史的木造建造物等修復用資材の供給について
〜「古事の森」づくり構想について〜

1 趣旨

 文化財等に指定されている神社仏閣などの木造建造物は、我が国の「木の文化」の象徴ともいうべきものです。このような歴史的に貴重な木造建造物はこれまで百年単位で修理(修復)が施されてきましたが、そのための資材は、原則として材種・材質・規格等が修復前の部材と同一の、限られた条件を満たしたものである必要があります。
 しかしながら、近年、国内では資源的制約が強まる中で、こうした条件を満たす修復用の木材、特に大径長尺材の供給が困難な状況にあります。このような中、国有林では多様な森林を有するという特性を活かして、こうした材の計画的な供給に努めているほか、森林管理局において神社仏閣等の特殊な規格材等の需要に対応するための取組を進めてきたところです。
 今般、こうした国有林独自の取り組みに加えて、新たに「国民参加の森林づくり」の一環として、歴史的木造建造物の修復用資材の供給に寄与するため、関係機関やNPO等の協力・連携を図りながら、200〜400年というこれまでにない超長期にわたる森林づくりの象徴的な取り組みとして「古事の森」づくりを展開するものです。

2 「国民参加の森林づくり」としての新たな取り組み
 〜「古事の森」づくり構想〜

@ 「古事の森」づくりのめざすもの
 法隆寺等世界文化遺産や国宝・重要文化財に指定されている神社仏閣等の歴史的木造建造物修復用の大径長尺材の供給に寄与することをめざします。

A 「古事の森」づくりとは
 ア 人工林の伐採跡地等に植林し、下刈り、間伐等の保育作業
 イ 抜き伐りを繰り返し行い、下木を植栽することにより複層林型に誘導
 ウ 上層木の最長伐期は200〜400年

B 「古事の森」の設定数
 地域の歴史的木造建築物の賦存状況等を勘案しつつ、全国に当面10カ所程度設定します

C 古事の森育成協議会の設立
 国民参加の森林づくり運動の一環として多様な主体の参画を促進するため、「古事の森」づくりを実施する地域毎に育成協議会(例:「○○古事の森育成協議会」)を設立します

D 協定の締結
 「古事の森」は、伐期まで200〜400年という超長期を想定していることから、協議会が実施する当面(10年程度)の植樹、保育等の活動について、古事の森育成協議会と森林管理局長との間で、協定を締結します

3 平成14年度及びその後の取り組み

@ 平成14年度
・ 京都市内の国有林において、育成協議会と連携して植樹等を実施します(4月21日)。【資料2】
・ 類似の取組として、広島県宮島町内国有林で、地域の団体が厳島神社の大鳥居用材(クスノキ)のための植樹等を検討しています。
・ その他の箇所についても検討しているところです。

A 平成15年度以降
・ 熟度の高い地域から順次育成協議会を立ち上げ、全国に展開します。

4 国有林における取り組み

(民有林からの供給が期待しにくい樹材種の供給)
 神社仏閣等の修復用資材を含め、民有林からの供給が期待しにくい樹種や形態の木材等については、多様な森林を有するという国有林野の特性を活かして、計画的な供給に努めています。

(森林管理局における文化財等修復用資材供給のための取組事例)
○ 天然青森ヒバ一千本ストック調査(東北森林管理局青森分局)
 神社仏閣等の特殊な規格材の需要に対応するため、適木の調査・登録を行いました。
○ 檜皮の試験的採取(中部森林管理局)
 人工林ヒノキ林分を対象に、檜皮の試験的供給を行いました。
○ 世界文化遺産貢献の森の設定(近畿中国森林管理局)
 文化財の修復に必要な材や檜皮の提供及び文化財等と一体となった景観の保全等を図る森林で、京都、奈良、広島の国有林に設定しました。
○ 檜皮採取対象林の設定(近畿中国森林管理局)
 檜皮の安定的供給及び技能者の養成等に資するため、294haを設定しました。
○ 文化財資源備蓄林の設定(四国森林管理局)
 大径長尺材や檜皮の需要に応えるため、スギ、ヒノキの高齢級人工林約84haを設定しました。
 国有林野事業としては、今後ともこうした国有林ならではの取り組みを展開することとしています。


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