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北海道森林管理局

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    北空知地域における低コスト造林の推進に向けた取組

    北空知支署管内の現状

    空知森林管理署北空知支署の管轄区域は、空知総合振興局管内の深川市、妹背牛町、秩父別町、雨竜町、北竜町、沼田町、上川総合振興局管内の幌加内町の1市6町におよび、石狩川の支流である雨竜川上流両岸に位置した南北に長い区域です。
    管内の農業を培う農業用水の供給を始めとして地域住民の生活用水等に供するため、管内には、人造湖の中で湛水面積が日本最大である朱鞠内湖や、沼田町の水がめであるホロピリ湖など、数多くの人造湖とそれを形成する多目的ダム等を有しており、今後においても、森林が有する水源涵養機能をはじめとした多面的な機能の発揮が一層期待されているところです。
    管内の森林面積は、民有林7万4千ヘクタール、国有林6万7千ヘクタール、合計で14万ヘクタールであり、うち、人工林の面積は民有林1万5千ヘクタール、国有林1万1千ヘクタールになります。人工林は成熟してきており本格的な利用期を迎え、伐採再造林の増加が予想される中で、低コストな更新や保育などの方法が求められているところです。


    三頭山頂上(国有林)から見た幌加内町

    北空知地域の課題の解決に向けた取組

    当支署では、森林の多面的機能の発揮のための森林の循環利用や公益的機能発揮に向けて、森林施業の低コスト化への取り組みとして、複層林へ誘導する伐採方法(誘導伐)の導入や、コンテナ苗の活用、一貫作業システムの導入などについて取り組みを進めているところです。
    また、管内には、地表処理による天然更新を実施した後に約30年を過ぎようとしてる箇所が多数あることから、これらの実績を踏まえて、天然力を活用した低コスト造林技術の推進に向けた取組を、国有林と隣接する北海道大学雨龍研究林と連携して平成28年度から進めています。
    今回は、これらの取り組みの内、コンテナ苗の活用及び上記の天然力を活用した更新について紹介します。


    北海道大学雨龍研究林との連携

    コンテナ苗の普及に向けた取組

    現地検討会等による民有林への普及

    平成26年度と平成27年度には、コンテナ苗の活用について民有林への普及に向けた現地検討会等を開催しました。
    コンテナ苗の特徴など説明し、事業体による植付状況を見学したほか、コンテナ苗用の植付器具を使った植栽体験を行いました。意見交換では裸苗との成長や活着の違い、植栽器具、植付時期、受給体制、価格などについて活発な意見が出される等、良いPRになったと思います。


    現地検討会(北竜町)

    また、コンテナ苗の植栽功程や生長量の調査を行うなど、コンテナ苗の利点の検証に向けた必要なデータの収集を行ってきており、厳しい環境下でも活着率が高いため、必要な苗木の本数を削減することによるコストを抑えるメリットもあるので、今後も引き続き、民有林へのコンテナ苗普及推進に努めます。


    コンテナ苗植付功程調査

    厳しい環境下におけるコンテナ苗の活用

    幌加内町の北部に位置する朱鞠内湖の周辺部は、厳しい気象条件と土壌条件により無立木地が多いことから、地表処理による天然更新を実施してきたほか、平成14年度からは更新補助としてアカエゾマツの植栽を行っています。


    植栽箇所の写真

    この朱鞠内地域は、湿性鉄型ポドゾルと呼ばれる土壌が20%の面積を占め、通常の植栽による更新が困難な土壌であることから、平成25年9月に当地区においてアカエゾマツのコンテナ苗を植栽し活着率や成長量などの経過調査に取り組んでいます。
    当調査地では、裸苗、コンテナ苗ともに同一条件下で植栽し、苗長、根元径、活着率などについてそれぞれ50本づつ調査しています。





    植栽から1年経過した平均苗長は、裸苗43センチメートルに対してコンテナ苗46センチメートル、活着率については裸苗が42%の活着状況でしたが、コンテナ苗は94%と良好な活着状況でした。
    植栽から3年経過した平均苗長は、裸苗53センチメートルに対してコンテナ苗が58センチメートル、活着率は裸苗が24%、コンテナ苗は88%と前年に比べやや減少していますが、裸苗と比較し優れた活着状況となっています。


    生育を続けるコンテナ苗

    このように、同一条件下でもコンテナ苗は比較的良好な成績であり、根鉢があることにより根系が充実し厳しい土壌条件の下でも生育しているものと考えられます。
    今後は、枯死の原因究明を行うともに、経過を観察とデータ収集を適切に行いながら、コンテナ苗の活用についての試験調査の結果をまとめて行きたいと考えています。

    天然力を活用した低コスト造林技術の推進に向けた取組

    当支署管内の国有林には、ササの除去などの地表処理によって天然更新を促進させる補助作業を実施した箇所が約200箇所あり、天然更新補助作業の実施から25年~30年経過しています。
    これらの箇所について、天然更新を促進させる地表処理の方法である「表土戻し地拵え」や天然更新箇所の除伐等保育方法について検証を進めており、北海道大学雨龍研究林と連携し、天然更新による低コスト造林技術の確立と普及を目指しています。

    天然更新の手法の検証

    天然更新を促進させる有効な地表処理の方法として「表土戻し地拵え」平成25年より取り組んでいます。
    「表土戻し」とは、大型機械により表土を剥ぎ取り堆積させ、1ヶ月前後乾燥させた後に地表に戻す方法で、ササの根を乾燥させてササの回復を遅らせることと併せて埋土種子の発芽を促す効果があります。
    当署での「表土戻し地拵え」の実施方法は、グラップル等の大型機械により表土をつかみ取ってササを除去すると共に、有機物の土をふるい落として埋土種子の発芽を促す方法で行っており、今年度は地表処理を実施してから4年目となっています。
    今年度より更新状況などを調査する予定で、表土戻し地拵えによって成林が確認できれば、今後は同作業の功程調査など実用化に向けたコストの検証に取り組んで行きたいと考えています。


    表土ふるい落とし


    試験地(平成25年8月)


    試験地(平成28年9月)

    天然更新後の保育作業の検討

    幌加内町の朱鞠内地区には、昭和60年に地表処理とミズナラ種子まき付けを実施し、平成2年に更新が確認され、その後、27年経過している林分があります。この度、今後の保育作業等を検討するため林分調査を実施しました。
    管内の地表処理については、3メートル幅で筋状に下草の刈り払いを行い、隣の筋4メートルは残し幅として下草を刈らない「3m刈4m残」で実施している箇所が多い一方で、3m刈3m残、3m刈5m残等様々な仕様で実施している林分や、地表処理と併せてミズナラの種子をまき付けた林分などもあり、様々な取り組みがを進められてきています。


    天然更新箇所

    上記林分の調査の結果、ヘクタール当たりの立木の本数は2750本、材積は67立方メートル、平均胸高直径は7.6センチメートル、平均樹高は8.4メートルであり、林床にはササが繁茂し、胸高直径6~12センチメートル程度のカンバ類が主体を占める広葉樹林となっており、かなり混み合っている状況でした。



    これまで、現況調査や林分状況に応じた除伐などの保育作業は実施していませんでしたが、このような林分状況を踏まえ、今後は、除間伐等を実施してミズナラやウダイカンバ等の有用広葉樹を活かす方向へ誘導していく考えです。また、これを通じて、天然更新箇所の除伐の目安となる施業方法を検討・確立し、将来的には天然更新による低コスト造林を民有林にも普及していきたいと考えています。


    相互見学会

    これらの課題について、北海道大学雨龍研究林と相互見学会の実施など連携して取り組んで行くこととしており、林政連絡会議や関係市町村の林務担当者にも参画していただくなど、地域の幅広い意見をいただきながら取り組みを進めていきたいと考えています。

    国有林フォレスターとして

    以上のように、コンテナ苗や低コスト造林など普及推進に向けて、地域と連携しながら取り組みを行ってきました。
    加えて、近年は、木質バイオマスを燃料とする大規模発電施設や小規模ボイラーなどへの供給量不足が懸念されることから、安定的に供給するための仕組みづくりを目的として、局ホームページへの木質バイオマス発生情報の掲載、木質バイオマス資源の安定供給のための立木販売団地の設定、現地検討会などへの参加、管内の市町担当者と木質バイオマス需要動向についての意見交換の実施とうに取り組んできました。輸送コストや安定供給について不安視する意見等を聞き、コストや安定供給の重要性を再認識したところです。


    団地化した立木販売箇所


    大規模な木質バイオマス発電所

    また、地表処理更新箇所での除伐木や間伐木等の利用について検討しましたが、除伐などの作業時期や低コストな集荷の方法、まとまりのある事業量、路網配置など課題が多く、今後も考えていく必要があります。
    私は平成26年から民国連携業務を担当して4年目になり、市町村森林整備計画実行管理推進チームによる支援や、支署フィールドを使用した現地検討会など民有林関係者との関わりながら活動してきました。地域の解決していかなければならない課題は沢山あり、それぞれに様々な地域の実情が重なって解決の糸口の見えない課題もあるので、一つ一つの課題について現状をしっかりと把握する中で、その現状を地域の皆様と共有し、解決に向けて様々な視点での意見交換やアイディアを出し合い、実現に向けた検討を地域全体で進めていくことが重要と考えており、そのためのお手伝いが出来ればと考えております。
    地域に根ざしたフォレスターとして積極的に活動していきたいと考えておりますので、引き続きのご指導、ご支援をお願いいたします。


    空知森林管理署北空知支署
    主任森林整備官 岩館 正宣

    お問合せ先

    空知森林管理署北空知支署

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