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北海道森林管理局

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    山を治め生活をまもる

    森林は国土の保全や水源のかん養とともに、気象の緩和や雪崩の防止など生活環境の保全・形成に重要な役割を果たしています。
    これらの機能を高度に発揮することが必要な森林を保安林に指定するとともに、山地災害の未然防止や森林の復旧などを目的とした治山事業を実施しています。

    保安林の整備

    水源のかん養や災害の防備などの働きが求められる森林を「保安林」に指定して、その森林の機能確保に努めています。特に日高南部森林管理署の管理する森林のうち、全体の99%が保安林に指定されています。
    また、かつて「えりも砂漠」と呼ばれていた襟裳岬国有林は、強風下という困難な状況の中で緑化が進められています。森林には豊かな海を育むことが知られていますが、緑化面積の増加とともに、地域の漁獲高が飛躍的に増大してきており、保安林としての働きが十分に発揮されているところです。

    治山事業

    治山事業は、森林の維持造成を通じて山地に起因する災害から国民の生命・財産を保全し、また、水源かん養、生活環境の保全・形成等を図る事業です。
    荒廃山地の復旧整備又は荒廃危険山地の崩壊等の予防等により、山崩れ、土石流等の山地災害や洪水を防止、軽減し、これらの災害から人家、道路・学校等の公共施設、農地等を保護し、生活を守っています。
    ウエンテシカン下右沢災害関連緊急工事
    平成15年台風10号の異常豪雨により、大規模な山腹崩壊が発生しました。大量の土石が流出し下流部に甚大な被害をもたらしました。今後の更なる被害を未然に防ぎ森林保全をはかるために不安定土砂の固定・崩壊地の復旧・土留工や緑化等を行いました。

    施工前

    施工前

    施工後

    施工後

    治山工事における木材利用の推進

    近年、地球温暖化に対する関心の高まりのなか、当署の治山工事においても地球温暖化防止と地域資源の有効活用を目的として積極的に間伐材の利用を進めています。
    一例として、渓床を安定させ不安定土砂を下流へ流出すること等を防止する目的で作られる治山ダム工において、間伐材を利用することで無機質になりがちな治山ダムを周囲の景観とよく馴染んだ治山ダムへと変貌させる効果もあります。
    また、施工面においては間伐材を利用した型枠にすることで、型枠解体手間も省くことができることから工期短縮を図ることができます。

    残存型枠ダム(滝の沢)

    間伐材を全面に利用したコンクリート谷止工(滝の沢)

    えりも国有林治山事業

    事業着手の経緯

    えりも国有林は、えりも岬の東側沿岸に沿って北側に細長く延びる約421ヘクタールの地区で、戦前は内務省所管の国有林として北海道庁が管理していましたが、戦後まもなく林政統一によって農林省所管となりました。
    この地区には昔、アイヌの人々が暮らしていましたが、明治時代から開拓が行われるようになると、燃料材としての森林伐採や、家畜の過放牧、さらにバッタの飛来などによって次第に植生が失われ荒廃が進みました。
    そしていつしか「えりも砂漠」と呼ばれるようになったのです。
    緑化事業開始前

    緑化事業開始前(昭和28年頃)

    キャラバン

    えりも砂漠を行く“キャラバン”

    この結果、砂や泥が飛び交い住宅や飲料水の中に入り込むなど、住民の生活環境を悪化させ、同時に漁業を営む住民の生活基盤である海を汚し、魚や昆布などの海藻類の水揚げ高が激減してしまいました。
    このため地元の町や住民から「えりも国有林」の緑化に対する強い要望が出され、昭和28年に浦河営林署えりも治山事業所を開設し、「はげ山復旧事業」として緑化事業が始まりました。

    事業の経過

    1. 草本緑化
    荒廃した土地を復活させるにはまず草を生やさなければなりません。えりも国有林約421ヘクタールのうち、裸地化した荒廃地約192ヘクタールを早期に覆うため草本緑化の対象としました。
    えりもは日本でも屈指の強風地帯のため、当初はヨシズや木の枝で覆って種を飛ばないようにするなどの工夫されましたが、強風のため覆いごと種子が飛ばされてしまいました。
    試行錯誤が続く中、昭和32年に地元の人の提案で、種子を播いたあとに飛砂と乾燥防止を目的として雑海藻(ゴタ)播く「えりも式緑化工法」が開発されました。この結果、草本緑化の費用はそれまでの4分の1になり、昭和45年には荒廃地約192ヘクタールの草本緑化をほぼ終えることができたのです。
    2. 木本緑化
    草本緑化が終わったら次は木を植える木本緑化に入ります。木本緑化は草本緑化が終了した土地に順次行ってきましたが、当初の生育は思わしくなく、植栽を一時中断するなどここでも試行錯誤が繰り返されました。

    そこで、植栽樹種として何種類もの木本を試植した結果、クロマツが最も生育が良く、現在までクロマツを主体に緑化が進められています。
    平成19年度末で荒廃地約192ヘクタールの約94%にあたる181ヘクタールの木本緑化を終了しています。
    “えりも式緑化工法”
    ゴタを利用したえりも式緑化工法

    草を根付かせるため雑海藻をしきつめる。住民と試行錯誤の末開発したもの。

    事業の成果

    草本緑化の約80%を終えた昭和40年頃から飛砂と土砂の流出が減少し魚介類の水揚げ高も伸び、住民の生活環境が改善されてきました。
    昭和40年度227tに対し、平成19年度は2,476tとなっています。昆布の品質も著しく向上するなど地元産業へ大きく貢献しています。
    現在のえりも国有林の風景

    現在の風景

    広葉樹が侵入したクロマツ林

    現在の林内クロマツの間に自然侵入した広葉樹が見られる
    地元漁業協同組合が国有林内で森林づくりに携わってきた歴史は古く、植樹祭や育樹祭にも参加しています。
    森林と漁業の関係についての理解が深い土地となっていることも、緑化事業の成果と言えるでしょう。

    今後の展開

    1. 植樹から育樹へ
    えりも国有林では、木本緑化の初期は強風に耐えるためヘクタール当たり通常の約5倍にあたる1万5千本という高密度で植栽を行っていました。
    また、ほとんどがクロマツ(針葉樹)の一斉林であるため、万が一病害虫が発生した場合には大きな被害を受ける可能性があります。
    平成2年度から枝落としや本数調整伐を行い、クロマツ自身の肥大成長と在来の広葉樹の侵入を促すことで、病害虫に強い健全な森林の造成を目指しています。

    百人浜国有林植樹事業「フィールド学習(植樹)」(えりも中学校)

    えりも中学校の生徒が、環境教育としてハンノキ(広葉樹)等を、植樹しました。

    2. 環境教育の場として
    地域の特性を活かし、平成18年度からえりも中学校・高校がえりも国有林の緑化事業について学習する機会が設けられています。
    生徒たちは植樹や枝落としなどの森林体験を通して、生活環境の保全の大切さ、困難なことにも挑戦することの大切さを学んでいます。

    えりも中高一貫教育(高校枝落とし)

    えりも高校の生徒が、環境教育として育樹作業でクロマツの枝を切り落としてくれました。

    平成18年9月には、天皇皇后両陛下がえりもの緑化事業地を視察され、長年かけて緑を取り戻した人々にねぎらいの言葉をかけられていました。
    このように、えりも岬の緑化事業の歴史は、失われた緑を回復することの難しさ、緑の恵の大きさを物語っています。

    天皇陛下ご視察

    えりもイキイキ森林づくり育樹祭

    地域の人たちが率先してえりも岬の緑を守っています。

    植林

    多くの人に支えられ、今も緑化事業は続いています。

    緑化事業案内図

    えリも岬国有林治山事業の概要(令和4年4月)(PDF : 2,845KB) NEWアイコン

    お問合せ先

    日高南部森林管理署
    北海道日高郡新ひだか町静内緑町5丁目6番5号
    TEL:0146-42-1615