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観察日記 2009

2008年に引き続き、山形県庄内地方のブナハムシ情報をお送りします。    ( 2008年の観察日記   2010年の観察日記  ウエツキブナハムシトップ )

5月26日

飼育下での蛹化は残念ながら失敗でしたが、山ではどんなだろうと思い、昨年の大量発生地「ブナ林施業公園」に行ってきました。

倒木の下には見慣れた蛹室とその主がたくさん見られました。
ハムシっぽくない、ガガンボ類の蛹のようにも見えますが、正体を確かめるため数頭を持ち帰りました。

周囲のブナの若芽にはコルリクワガタがかぶりついていました。
ちなみに、ユキグニコルリクワガタ基産地の弓張平とは約7kmの位置関係です。

 

 7月15日

道の駅「月山」(月山あさひ博物村)の灯火に成虫飛来!と思ったら違いました。

ウリハムシモドキでしょうか?
5月に持ち帰った蛹を見てみたらカビにやられていました。
またも失敗。蛹の正体は未確認に終わりました。

 

7月21日

道の駅「にしかわ」(月山湖)の自動販売機で十数頭の飛来を確認。
月山ダム展望所でも十頭程確認。
今年の成虫初認です。

 

8月7日

8月初めからブナが色づいているとの話を聞き、湯殿山周辺の現地確認に。

広範囲のブナが黄色く色づいています。

雨のせいか虫の姿は見えませんが、ブナハムシの食痕です。
昨年同時期より、広域かつ激甚です。

枝先の食害が顕著ですが、既に全木やられたものも見られます。
孵化前からこれではと、幼虫の先行きを案じると同時に、終息への道筋を垣間見た気がしました。
案外シンプルな食い尽くし=世代間競争が終息の決定的要因かも知れません。

ところで、当地のブナは豊作年ですが、熟すことはないでしょう。もったいない。

 

8月8日

朝、月山ダム展望所の自動販売機に4頭確認。前夜の雨・ガスで少なかったようです。

 

8月9日

インターンシップの学生たちと朝日山地の巡視に。

古寺山頂上から小朝日岳小朝日岳頂上(1647m)にも風に乗って飛んできたのか、ブナハムシ成虫が見られました。

N大ユニフォームのこの色が好きなようです。
 帰路、国道112号線からの外観では、大越峠より庄内側で黄葉?が顕著。 西川町側はまだ若干色づいた程度です。

 

 8月10日

鳥海山南麓(蓬莱山)も一面の黄葉。
湯殿山周辺と同様、昨年より広域かつ激甚のようです。

 

8月18日

国道112号沿いの自動販売機に多数の飛来が見られました。

月山第一トンネルの公衆電話ボックスの中には大量の死骸が・・・。誘因捕殺器状態です。

湯殿山周辺一帯ではすでに「黄葉」を過ぎて「紅葉」に。
被害が昨年より大幅に早いのは、虫の数が多いためでしょうか。それとも虫の発生自体が早かったのでしょうか?

谷地幅のモルゲンロート?

 

灯火採集の成虫を飼育開始。セット直後から食べ始める奴もいます。

  

8月19日

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動画をアップしました(あまり動きはありませんが)
食べ続ける成虫です。時々休んだり触角の手入れもしましたが、午前8時から午後3時まで黙々と食べ続けていました。午前7時間の食痕は約2(1.84:後日図測)平方cm。葉上のものはこの食痕分の糞です。
夜食べて昼休むのが普通の様ですが、昨日の葉が乾燥して空腹だったのでしょう。朝入れた新しい葉にかぶりついていました。

  

8月20日

湯殿山トンネル付近と遠景。
朝靄で写りが悪いですが、見渡す限りの紅葉。

 

ですが、

昨年の大量発生地「ブナ林施業公園」は、成虫の食痕が少しある程度で、青々としています。
遠景の被害林と対照的です。幼虫も見られません。ブナの防御機構でしょうか?

 

一帯で被害が目立つ割に、幼虫は昨年より明らかに少なく、丹念に探してやっと見つかるくらい。

まとまっているところでも、この程度です。黄色の矢印の先にいるのが見えますか?

フルサイズまでもう少し。ステージ的にはほぼ昨年並みです。

落葉も目立ってきました。

飼育ケースでは、採集後2日でボーベリア?菌が発症。山から付いてきたのでしょう

  

8月21日

雨の中、大越峠付近の道ばたに、成虫と幼虫が一緒についていました。梢端の葉は既に成虫に食いつくされ、幼虫が付いているのは手の届く低い枝でした。周りには大小様々の幼虫がいました。大きさは3~10mmほど。卵の殻も見られました。

大中小の幼虫を並べて見ました。ついでに卵(殻)も。

縮尺は適当で、多少デフォルメ気味です。
2・3・4齢といった感じでしょうか。


小さいうちは頭も黒いことに気づきました。

 

「落下して仕方なく」なのか、ホツツジの葉を食べている奴もいました。

野生下のボーベリア確認(左:幼虫、右:成虫)飼育下でも昨日以降、続々とボーベリア(たぶん)にやられています。天敵健在!

  

8月24日

庄内側の現況

上2枚とも田麦俣から湯殿山(月山はガスの中)

国道112号から黒森山

枯葉が風に舞い、まるで晩秋のよう。一部には完全に葉を落としたブナも見られる。

ブナでも単木・群状に、激しい被害を受けていないものが見られる。

西川町側の現況

月山南麓

シノマタ沢右岸 868

大井沢若干色づいた程度に見えるが、
一部尾根筋では落葉したものも↓

根子集落付近から

小朝日岳方向

竜門岳方向

障子ヶ岳方向も色づいて見える。

虫の状況(湯殿山周辺)

昨年と比べて、
・成虫の数は明らかに多い。
・幼虫の数は明らかに少ない。
・幼虫の成長はほぼ同様だが、大小ばらつきが大きい。
・幼虫・成虫ともボーベリアによる死亡個体が目に付く。

センターでは

センターから見える湯ノ沢岳の尾根筋のブナも褐色に

飼育ケースは、18日採集の成虫は全滅。すべてこんな状況。

 

8月25日

雄と雌?

道の駅「月山」と米の粉ドライブインの灯火で8頭の成虫を採集。
大小2型を撮影。左が上面、右が下面です。
以前は大が♀で小が♂かなと漠然と思っていましたが、先日採集直後のカップ内で大が上に乗って(交尾しようとして)いるのを見てから、大が♂なのか、単に栄養状態の違いだけで雌雄とは無関係なのか分からなくなっています。ケース内では食べるだけで交尾は見られません。
比較的明瞭に大小が分かれるので雌雄だとは思うのですが。
並べて見ると違うのは体長ではなく体型で、体長はどちらも8mm程度ですね。

そういえば、他のハムシのようにパンパンな腹のブナハムシは見たことがありません。

  

8月26日

久々の快晴だったので、湯ノ沢岳から金峰山にかけての紅葉?を記録しました。

湯ノ沢岳。褐色の尾根筋はブナ。

三ノ俣山。ここから金峰山にかけての変色した樹種は未確認。ブナだとは思いますが。

母狩山

右のピークが金峰山。遠景で被害が見られるのはここまで。
ちなみに、高舘山のブナも一部チェックしましたが、ハムシも被害もみられませんでした。

鶴岡から月山方向。月山には雲がかかってます。

上写真中央部の拡大(カラー補正後)です。黒森あたりでしょうか。

 

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8月28日

25日採集の成虫8頭は27日までに全滅。下のライブ画像は死亡個体。摂食姿勢のまま死亡し、よく見ると節には白く菌が見えます。同じ飼育法で、昨年は1~2週間生存していたのに対して今年は短命です。菌の勢いが強いのか、虫の体力が消耗しているのか?

ライブは終了します。

 

8月31日

成虫の活動期もあとわずかですが、国道112号沿いの自販機や電話boxには、ガス・雨にもかかわらず、数頭ずつ飛来していました。 気温は15℃ (午前5時am)

被害木はほとんど葉を落としています。

 

9月1日

鱒淵周辺の被害状況。ブナハムシと、より赤いナラ枯れが混在。

ハムシが食べた枯葉の上に落ちた未熟果。
樹上の葉に虫は見られず、菌で死亡した幼虫のみが見られた。

 

足下には、落葉に付いたボーベリアの犠牲者がたくさん見られた。

       
       
       
   ←成虫も

 卵の殻→

 

 

9月2日

旧道沿いを田麦俣から大越峠まで巡視。被害木が葉を落とし、冬枯れの風景。

豊作の実を残して落葉。

幼虫は残った葉に少数見られる程度。

ボーベリアによる死亡個体はよく見られる。

ブナ施業公園は健在。

無事実ったブナも。

山形県が被害把握のために飛ばした防災ヘリと大越峠付近で遭遇。

昨年は施業公園より10日ほど遅かった大越峠付近も、今年はほぼ同じステージで幼虫はほとんど葉を離れているが、一部の木には終齢幼虫がまとまって見られる。

終齢幼虫の裏側を撮影。
表の黒とは対照的に、下面は黄色。腹脚は見えません。腹部でもしっかりしがみついていますが、腹を吸盤のように使っているのでしょうか?
葉が少なくて迷惑顔のカシワマイマイ。

  

9月3日

鳥による捕食を確認 

/syo/asahi/siryou/img/imgp2589.jpg

エナガを主とする40羽ほどのカラ類の混群が被害木で採餌していました。直接ブナハムシ幼虫の捕食が目撃できたのはヒガラとコガラですが、ほかの連中も食べていると思います。混群には他にセンダイムシクイとコゲラが混じっていました。
好き嫌いは別として、鳥も捕食者であることが確認できました。

  

9月7日

道の駅「にしかわ」(月山湖)から障子ヶ岳方向を臨む。山麓が色づいて見えます。
国道112号沿いの灯火や自販機に成虫の飛来は見られませんでした。 気温は17℃ (午前5時30分am)。
成虫の活動期は終わったようです。

摂食量

ライブ画像から成虫の摂食量を測ってみました。8月19日は6時間半で1.84平方cm、8月25日は2頭、4時間20分で3.58平方cmでした。一頭一時間当たりの摂食は0.3~0.4平方cmとなります。24時間休み無く食べ続けても丸2日で葉1枚程度のスピードです。見渡す限り食いつくされた山にどれほどの数のハムシがいたのか、呆れるばかりです。

食痕の違い

左:成虫

右:幼虫

幼虫は全面舐めるように。成虫は線状に跡が見られ、食べ残しも多いため、より濃い褐色に枯れる。

最上峡にも

スキー場跡地の自然再生に取り組んでいる土湯の森と最上峡にもブナハムシ発生。ナラ枯れと混在。

幼虫のステージは終齢幼虫が若干残っている程度で、湯殿山周辺とほぼ同じ。

成虫の食痕があまり見られない点が湯殿山周辺とは対照的。

周辺の自販機には残骸も。

ps 電話をもらった方から、大鳥から新潟側に抜ける県境付近にも被害が見られると教えていただきました。被害エリアは相当広がっているようです。

 

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9月10日

9日~10日、天狗角力取山・出谷川の巡視に行ってきました。見える範囲のブナ林はほとんど被害を受けているようです。

竜ヶ岳周辺の被害林と虹

障子ヶ岳から続く稜線。ブナはほとんど葉を落としています。

竜ヶ岳付近の落葉は半分程度。登山道にも喰われた枯葉が堆積しています。食痕はほとんど幼虫のもので、ボーベリアで死亡した幼虫もたくさん見られました。
  • 登山口近くのカラマツ林に混交する若いブナには被害は見られません。樹冠が上層に達していないためか、カラマツは嫌いなのか?
  • 1200m以上の登山道(尾根)沿いでも被害はほとんど見られませんでした。風が強すぎる?

天狗角力取山付近の稜線では、矮化したブナに成虫の食痕が若干見られました。風に乗って飛んできた成虫が一時滞在したのでしょう。ほんものの紅葉も始まっていました。

粟畑(1397)から戸立山・茶畑山を望む。明光山をはじめ出谷川流域もひどくやられています。

竜ヶ岳付近にクマ棚がありました。かなり太い枝を折ってブナの実を食べていました。完熟にはもう少しと思うのですが、待ちきれなかったのか、案外柔らかくて美味しいのか?いずれにせよクマにも取り分があって良かったです。ちなみにこの木のハムシ被害は半分ほどでした。

左の写真は爪痕。

 

 9月15日

大頭森から朝日連峰を望む。 

稜線がガスに見え隠れする天候で視界は悪いが、ガスの切れ間に見える山腹のブナはどこも食害で色づいている。

 

大頭森周辺の林道脇にも成虫の食痕。

  9月16日

西川町側の月山の状況

ブナがあるところはすべて被害にあっているようです。

 


左:志津温泉から月山

下:志津キャンプ場から月山

昨年は今頃が幼虫の最盛期だった志津キャンプ場付近も、だいぶ前に活動期を終えたようです。

昨年被害の激しかった辺りには無被害の一角も。

  

9月18日

湯殿山スキー場の中台池から月山方向。わずかに残った葉が色づいてきました。

キイロスズメバチが巣から幼虫を運び出していました。咥えたまま地面に降り(落ち)、苔の上まで運んでから飛び去りました。

幼虫は既に死んでいるのか動きません。

蜂には個体数調整のため「子捨て」の習性があるそうですが、今日見たのは「子捨て」というより、何か厳かなものを感じました。

まわりにも同様の遺骸がたくさんありました。

ハムシの大量発生で増加したボーベリアが、他の昆虫にも影響を与えているのかもしれません。

 

 9月25日

泡滝から大鳥池に向かう登山道から見える範囲の稜線・中腹のブナは大半が葉を落としていますが、不思議なことに道沿い(谷近く)のブナには被害はありませんでした。

ブナ林には秋の主役、ナナスジナミシャクがたくさん舞い、幹にもたくさんとまっていました。

ナナスジナミシャク

この小さなガはブナの実喰いですが、早い時期の食害であるため、ハムシのダメージは受けていないようです。(クリックで拡大(JPG:34KB)

 

9月27日

巡視報告朝日鉱泉-鳥原山-大朝日岳(9/26-27) 

鳥原山から大朝日岳山の上はすっかり紅葉です。

朝日鉱泉から鳥原山へのルートからも広範囲に被害確認。まだ幼虫も見られたそうです。

  

9月29日

巡視報告長井葉山(草岡登山口~葉山~白兎登山口)

葉山にも被害確認

ここにも、まだ幼虫がいます。

食害を受けた落葉には、卵殻やボーベリアが。

食痕は主に幼虫のものだったとのこと。

巡視報告土湯の森(最上川スキー場跡地)

土湯山頂上付近の被害状況。虫はもう見られません。
ナラ枯れも目立ちます。
昨年以前のナラ枯れ被害木にナラタケがビッシリ。
センサーカメラにはクマが写っていました。雨の中、冬ごもりに備えて餌探しでしょうか。9月22日17時12分

  

10月2日

拡大シリーズ 

拾ってきた卵殻を顕微鏡で拡大してみました。
肉眼では平滑に見えていましたが、白い粒でざらついています。どこか梨っぽい?
きれいに丸く開けて孵化していますが、卵殻は全く食べていないようです。

食痕の逆光写真。右上が幼虫、左下が成虫です。

 

10月17日

10月10日と17日に中台池で「森の遊園地」が開かれました。ハムシのせいで葉は大分少なくはなっていますが、ちゃんと黄葉していました。ハムシの気配は早くに落ちた葉の食痕とボーベリア被害者の残骸のみでした。

越冬場所を探すカメムシ

シャチホコガ(幼虫)

天寿を全うしたカミキリ

皆でかけたセンサーカメラにタヌキが写りました。

帰路、田麦俣から月山を望む。夕日に映えて艶やかです。 何か違和感を感じましたが、後に葉のないはずの箇所も赤いことに気付きました。下の写真は、撮影地は違いますが一週間前の同じ箇所。中央のひときわ赤いところには既にほとんど葉がありません。

冬芽や小枝だけでこんな色がでるものなのか、不思議ですが、やはり役者が上ですね。

 

 

11月20日

HPの引っ越しなどで更新が滞っているうちに、山は雪の季節になってしまいました。この日記も冬眠にはいります。

昨年に引き続き多数のアクセスをいただき、ありがとうございました。

今年のまとめ

被害分布

昨年より相当広い範囲で被害が見られました。

 9月2日に被害把握のために飛んだヘリからの映像を山形県からいただいているので、いずれ図面に落としたいと思います。

激害地・六十里山周辺の状況

昨年と比べて、
・成虫の数は明らかに多かった。
・幼虫の成長はほぼ同様だが、大小ばらつきが大きかった。
・幼虫の数は明らかに少なかった。
・幼虫・成虫ともボーベリアによる死亡個体が目に付いた。

被害状況と幼虫確認時期
  • 六十里山周辺では昨年より早くから被害が目立ったが、虫の発生時期はほぼ同じで、発生数が極めて多かったためと思われる。
  • 昨年は被害が確認できなかった障子ヶ岳、出谷川、鳥原山、長井葉山の幼虫確認時期は、障子ヶ岳、出谷川で六十里山と同時期。鳥原山、長井葉山では約二十日遅かった。被害には見えなくても昨年から虫が増えていた所と、今年分散した成虫の子が猛威を奮った所の違いかも知れない。

 

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動画

成虫の摂食行動 貼り付けていた動画を分離しました。どちらもあまり動きはありません(60秒)
幼虫の摂食行動
成虫の摂食行動(1800倍速)

ライブ配信画像から動画を作成。成虫は午前5時間半を10秒に、幼虫は40分を4秒に圧縮。

実際はこんなに早くは食べません。

幼虫の摂食行動(600倍速)

 

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お問い合わせ先

朝日庄内森林環境保全ふれあいセンター
電話:0235-58-1730
FAX:0235-58-1731
〒997-0404 山形県鶴岡市下名川字落合3

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