岩手南部森林管理署
「署長が語る!」
平成29年2月
岩手南部森林管理署
署長 池田 敏
1 管内の概要
当署が管轄する国有林は、北上川中流森林計画区のうち、奥州市など4市3町を包括し、岩手県の南西部、北上川流域の中流を占める地域にあり、その大部分は焼石岳、和賀岳、栗駒山等の奥羽山脈を構成しています。奥羽山脈は優れた自然環境を有する地域が多く、栗駒山・栃ヶ森周辺森林生態系保護地域を設定しているほか栗駒国定公園、花巻温泉郷県立自然公園、和賀岳自然環境保全地域等に指定されています。
今回は、当署の取り組みについて紹介します。
2 安心・安全の確保に向けた治山対策の推進
岩手・宮城内陸地震により被害を受けた箇所の復旧および集中豪雨等による自然災害に対する警戒を含め、地域の安心と安全に向けた対策を実施しています。事業実施にあたっては、生態系に配慮した工法を採用するなど、生物多様性の保全にも努め、計画的・効果的に取り組んでいます。
また、内陸地震によって被害を受けた箇所以外の山地荒廃箇所においても、随時対策工を講じ、下流域の安心と安全に努めています。
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内陸地震により発生した 市野々原大規模地すべり(一関市) |
工事完成後の状況 緑が豊かになっている(一関市) |
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内陸地震により発生した 産女川上流の土石流(一関市) |
土石流の発生を受け、建設中の 透過型スリットダム(一関市) |
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土砂が堆積した渓床内の安定を図る 床固工群(北上市) |
内陸地震により崩壊した 山腹工箇所の復旧状況(奥州市) |
磐井川地区民有林直轄地すべり防止事業では、地すべりの誘因となる地下水をトンネル暗渠工と集水井工により排除し、滑動力に抵抗させる杭打工やアンカー工等の対策工を実施しています。
岩手・宮城内陸地震では最大震度6強を記録しましたが、対策工の施工区域内では、大きな被害もなく、地すべり防止事業の効果が十分に発揮されました。
また、ニゴリ沢区域のトンネル暗渠工からは、毎分1.5トン~2.0トンと安定した水量が得られ、一関市の上水道として利用されています。
このように治山事業では、副次的な効果も生み出しながら、地域の安心と安全を図り、適切に事業を推進しています。
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地下水を排除するニゴリ沢区域の トンネル暗渠工 |
トンネル暗渠工入り口に 設置している看板 |
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トンネル暗渠工内のボーリング室 にある集水状況 |
地下水排除のための集水井工 |
3 治山事業のPR
岩手・宮城内陸地震で被害が大きかった一関市厳美地区の本寺小学校では、震災の記憶を次世代に語り継ぎ防災意識を高める活動を行っています。当署では、震災当時の様子を解説し、地すべりの仕組みや復興に向けた治山工事の成果など、自然災害の脅威と地域を守る大切さを伝えました。
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地すべり滑動の仕組みを説明 (平成28年6月14日) |
多数の報道機関の取材 |
4 林産物の安定供給体制の構築
地域材の新たな需要を拡大する木材加工施設や木質バイオマス利用施設の整備等による需要拡大に向けて、間伐等を計画的に実施するとともに、ニーズを踏まえた安定供給システムによる販売など計画的な木材供給に取り組んでいます。また、林業成長産業化という課題の中で国有林の役割の発揮に努めるため、花巻市では葛丸地域森林整備協定を締結し、民有林と連携した森林整備を行っています。
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伐採系森林整備事業による巻立:千厩地区
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共同利用している路網(葛丸共同施業団地) | 民有林と協調した森林整備のための地元説明会 |
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立木販売後、カラマツ(コンテナ苗) の分収造林を実施 |
5 森林病害虫及び鳥獣害対策の徹底
森林病虫害被害防止のため、県や市町村等と情報を共有しながら早期駆除を行っています。特に、ナラ枯れについては、県南広域振興局と「ナラ枯れ被害対策の連携強化に関する協定」を締結し、被害通報協力員(登録78名)とともに監視強化に努めています。![]() |
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松くい被害木燻蒸処理 | ナラ枯れ被害の監視強化地域(一関市) |
6 北上川中流国有林の森林計画に関する住民懇談会の開催
平成29年1月24日に、岩手県南8市町にまたがる北上川中流森林計画区の平成30年度から5ヶ年にわたる次期森林計画の策定に向け、住民懇談会を開催しました。公募による地域住民や森林計画検討委員、県・自治体担当部署と主催者側合わせて47名が出席し、国有林の森林計画と北上川中流森林計画区の取り組み状況を説明するとともに、懇談では地域住民よりナラ枯れ対策や森林の伐採方法、巨木保護、林道整備など様々な視点からの意見要望があり、今後、森林計画の策定にあたり参考とすることとしました。
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積極的な意見が交わされた住民懇談会
7 豊かな自然環境の保全管理
今年度から国民の祝日になった「山の日(8月11日)」に一関市観光担当部局や山岳会・NPO等と連携し、山の恩恵に感謝するとともに、豊かな自然に親しみながら登山道やその周辺の清掃作業を行いました。頂上では岩手・秋田・宮城各県からの登山者が多数集まり、報道機関ヘリコプターを歓迎するなど大きな賑わいの一日となりました。![]() |
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名残ケ原から見た栗駒山頂上 | 昭和湖 |
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須川高原温泉より登山開始 | 森林官が先導しました。 |
8 国民参加の森林づくり
CSR(社会的責任)活動に取り組んでいるDCMホーマック株式会社は、未来を担う子供たちに「豊かな自然」を残したい贈りたいとの主旨から、奥州市内の国有林に「社会貢献の森」の協定を締結し、自然再生活動を行っています。今年度も奥州市内の園児を招待し、晴天の中、焼石連峰を眺めながら植樹会を行い、自然にふれあう楽しいひとときを過ごしました。
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現地は、胆沢ダムの近くです。 | カミネッコン(紙製の苗ポット)は 園児が作りました。 |
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園児・保護者・先生ほか60名。 | 約400本植えました。 |
9森林環境教育の取り組み
花巻市笹間第二小学校からの依頼により、毎年、全校児童を対象に出前森林教室を実施しています。高学年と低学年の実施内容を考慮し、植物の種類・樹木の名前・水中生物の採取など、天候に恵まれた自然の中での授業ということで、児童も先生も楽しく学習しました。
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大きな葉 木の名前は何でしょう。 | これは、サクラの皮です。 何に利用されるでしょう。 (樺細工を準備) |
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年輪は、なぜ出来るのでしょう。 | 水中生物を探しています。 |
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笑顔で記念写真。 | トチの実で作った笛を体験。 音が出て不思議そう。 |
平泉町には、世界文化遺産登録された中尊寺など歴史ある神社・仏閣が多く建立されています。
平泉古事の森育成協議会は、歴史的木造建築物の修復に備え大径材を育てる森づくりを通じて、地域の皆様と共に日本の木の文化を支えていく活動を進めています。
当署では同協議会と連携し、次代を担う地元小学生に出前講座や育樹作業・森林教室を実施することで、ふるさとの森林を支えるという意識の醸成を図っています。
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木の実について学習
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体験コーナー(丸太切り) | 地域の4小学校が参加 |
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年々大きくなっているアオモリヒバ |
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出前講座 | 間伐の必要性について学習 |
「森と湖に親しむ旬間」の趣旨に則り、森林の大切さや水資源の重要性を広く市民に知って頂くため、森と湖に親しむイベントが北上市夏油地区で開催されています。
当署では、木工・クラフト体験教室を実施し、親子で楽しみながら簡単に工作体験が出来る内容となっています。夏休みの工作も兼ねて参加する児童もいて人気のコーナーとなっており、夏油高原の大自然の中、心身をリフレッシュするイベントとなっています。
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初めてでも簡単です。 | 子供達の作品 |
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値段を付けて、お土産にするそうです。 | パーツは、早い者勝ち。 |
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大人も楽しんでいます。 | 丸太切り体験に興味津々。 |
おわりに
このような取り組みを行っていますが、これからも地域の声に耳を傾け、市町村、民有林等地域の方々とさらに連携を深め、期待に応えられるよう努めて参ります。お問合せ先
岩手南部森林管理署〒023-0853
岩手県奥州市水沢区東上野町12-17
電話 0197-24-2131
FAX 0197-25-6942