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鳥海山を借景とした桑ノ木台湿原 (写真提供:「鳥海山の会会長荘司昭夫氏) |
レクリェーションの森秋田県由利本荘市矢島町木境国有林にある桑ノ木台湿原は、平成3年4月に林野庁が「湿原植生自然観察教育林」として、レクリェーションの森(以下、「レク森」。)に指定しており、レク森の指定面積は43.08haで、このうち湿原区域は13.24haとなっている。また、当区域は鳥海国定公園第3種特別地域に指定されている。 地元では桑ノ木台湿原を通称「ムラスギ湿原」と呼称し、近くにあるムラスギ群落保護林(秋田県天然記念物指定)とつながる探勝コースとして、隠れた人気スポットとなっている。
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地形図 |
桑ノ木台湿原の特徴桑ノ木台湿原は鳥海山東麓の泥流堆積地の平坦面に発達した湿原である。ただし、鳥海山に面した西側には地滑りで生じた落差70mの崖があり、独立した台地状の地形になっている。台地面には低い起伏があり、湿原は低地を占めている。平面形は、東西南北に角を置く四角形をしており、その北西辺と南西辺のそれぞれほぼ中央から半島状の突き出しがあって、湿原は北東部と北西部と南部の3部に分かれた枝節量の大きい平面形をして いる。本体から分かれた湿原が南と東と北にもある。泥炭層の厚さは平均で54cmであるが、北西部がとくに厚く、その最大は133cmである。 ミズゴケ類は、多湿の広い部分にはアオモリミズゴケがふつうで、やや乾いたところにオオミズゴケのカーペットが広がる。 泥炭層の厚さや植物群落からみて、本湿原は低層湿原で、一部で高層湿原への発達傾向も窺わせる自然度の高い湿原と捉えることができる。低層湿原は概して人里に近く、水田などに開発されたものが多いなかで、こうした自然度の高い湿原は今や貴重である。 天然記念物の指定基準にある北方系の植物もミズバショウ、ヒオウギアヤメ、ワタスゲ、サギスゲ、サワギキョウ、ヤナギラン、ミズチドリなどと多く見られ、環境省や秋田県のレッドデータリストに含まれる希少種も多い。また、イネ科植物を食べるモリオカツトガ、ヒメギンスジツトガが生息し、地塘にはカラカネトンボ、オビイトトンボが生息しており、湿原植物から始まる豊かな自然生態系の広がりも十分想像できる。 |
桑ノ木台湿原は、近年、インターネット上で風景写真等が広く紹介されたこともあり、入り込み者が急増し、貴重な湿原が踏圧等によって荒廃する現状にあったことから、平成20年7月に由利森林管理署長の諮問機関として、関係行政機関及び地元自然保護団体、山岳関係者、湿原・動植物に関する有識者等を構成メンバーとする「桑ノ木台湿原の保全と保護に関する検討委員会」(以下、「検討委員会」。)を設置し、湿原の保護対策に関する検討を行っている。 このため、植生現況など湿原基礎調査(平成21年5月~9月)を実施するとともに、これをベースとして、平成22年3月に検討委員会において保護と活用を目的とした「施設整備計画」が決定され、今後、計画に基づく施設整備(平成22年秋頃までを想定)を実施する予定であり、完了するまでの間、概ね2年間程度(平成21年~平成22年)桑ノ木台湿原への立ち入り禁止など下記の緊急保護対策を実施している。
1 湿原への立ち入り禁止 2 桑ノ木台湿原へのアクセス道路である鶯川林道の車両通行止 3 緊急保護対策への理解を求める立て看板の設置(6箇所) 4 巡視活動 |
湿原への入り込み状況 |
入り込みによる湿原の踏圧状況 |
鶯川林道の通行止め |
桑ノ木台湿原巡視員発足式(21.5) |
桑ノ木台湿原への入り込み者の増大に伴い、踏圧等によって貴重な湿原植生等が荒廃してきている現状にあることから、保全と保護について恒久的な対策を検討し、由利森林管理署長へ指針を提示する。 |
委員 | 所属等 |
蒔田明史(座長) | 秋田県立大学教授(生態学) |
高橋寛亮 | 植物研究者 |
荘司昭夫 | 鳥海山の会会長 |
加藤雄悦 | 鳥海山動植物研究グループマンサク会会長 |
佐藤助雄 | 矢島山岳会会長 |
與齋俊雄 | 二科会秋田支部運営委員 |
高橋雅彌 | 秋田県自然保護協会幹事長 |
金澤千昭 | 秋田県生活環境部自然保護課長(H21.4~) |
池田光晴 |
秋田県生活環境部自然保護課長(H20.7~H21.3) |
高橋浩 | 秋田県由利地域振興局総務企画部長(H21.4~) |
三浦久一 | 秋田県由利地域振興局総務企画部長(H20.7~H21.3) |
阿部一夫 | 由利本荘市商工観光部長 |
委嘱専門家 | |
樫村利道 | 福島大学名誉教授(植物生態学) |
湿原専門調査依頼 | |
竹原明秀 | 岩手大学教授(植生群落調査) |
古木達郎 | 千葉県立中央博物館植物学研究科長(蘚苔類調査) |
井上正鉄 | 秋田大学教授(蘚苔類・地衣類調査) |
高橋雅彌 | 秋田県自然保護協会幹事長(昆虫調査) |
湿原基礎調査 | |
(委託) | 社団法人日本森林技術協会 |
事務局(由利森林管理署) | |
市原紅美雄 | 署長(H20.7~H21.3) |
池田正三 | 署長(H21.4~) |
伊藤誠一 | 流域管理調整官 |
伊藤研吾 | 業務課長 |
半田久 | 森林ふれあい係長 |
正木正人 | 管理係長 |
佐藤芳子 | 臨時職員 |
開催年度・回数等 |
審議経過 |
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平成20年度 第1回(H20年7月31日) |
委員会への諮問事項を確認するとともに、年内に「保護か保全利用か」について基本的方向付けを行うことを確認。 |
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第2回(H20年9月17日) | 桑ノ木台湿原の植生現況等に関する基礎調査の実施と専門家の委嘱(樫村利道福島大学名誉教授)を決定。 | ![]() |
第3(H20年12月19日) | 湿原の保護・保全等に関して、「保全・利活用の方向で今後の恒久対策を検討」との基本的方向付けを行う。 | ![]() |
第4回(H21年2月24日) | 桑ノ木台湿原の緊急保護対策(鶯川林道の車両通行止、当面2年間程度湿原への立ち入り禁止、ボランティアによる巡視活動等)を決定。 | ![]() |
平成21年度 第1回(H21年6月18日) |
緊急保護対策及び湿原基礎調査の実施状況を視察するとともに、保全利活用について樫村専門家を交えて現地で意見交換。 | ![]() |
第2回(H21年7月27日~28日) | 福島県内の「赤井谷地」及び「駒止湿原」の保全管理状況について、樫村専門家の案内により視察。 | ![]() |
第3回(H21年10月30日) | 桑ノ木台湿原の植生現況等に関する各種調査結果報告を踏まえ、現地視察及び施設整備等の恒久対策について意見交換。 | ![]() |
第4回(H22年12月18日) | 「桑ノ木台湿原の施設整備案」及び「桑ノ木台湿原保全管理計画書」、「桑ノ木台湿原施設等の維持管理」について審議(継続)。 | ![]() |
第5回(H22.3. 10) | 桑ノ木台湿原の保護対策として、木道等の施設整備計画(構造・ルート)を決定するとともに、平成22年秋頃を目途に策定する「桑ノ木台湿原保全管理計画書」について審議し大枠を確認。 | ![]() |
由利森林管理署
ダイヤルイン:0184-22-1076
FAX:0184-22-2274