区  分:都市と山村の交流
タイトル:〜阿賀野川の上流と下流の交流〜
森林ボランティア活動をきっかけとした山村住民と都市住民との交流促進    
都道府県名:新潟県 市町村名:三川村
1 地域の概要

 三川村は、日本海から福島県会津地方に向かって約30qのところにあり、新潟県北東部の東蒲原郡の西端に位置している。総面積は250平方qで、その94%が森林で占められている。 
 村のほぼ中央を流れる阿賀野川を本流として、支流である綱木川、新谷川、谷沢川、五十母川、中ノ沢川の一級河川沿いに集落が点在している。
 交通網は、阿賀野川沿いにJR磐越西線、国道49号線、磐越自動車道が通過しており、県都新潟市まで車で約1時間の距離にある。
 人口は、昭和35年当時8,434人であったが、高度経済成長を境に都市部への人口流出が顕著となり、平成7年には4,396人にまで減少、現在は人口4,310人となっている。
2 取組の背景と経緯

(1)取組の背景 
 当地域は豊かな森林資源を背景に、県内でも有数な林業地として木材・薪炭を供給してきたが、山村の過疎化、高齢化とともに、木材価格の長期低迷、経営コストの高騰による採算性の悪化等により林業離れが進み、森林が放置され、造林や保育、間伐等の適切な森林整備が進ま ない現状にある。
(2)取組の経緯
 当村細越地区の細越生産森林組合の役員と新潟市内の住民を中心として森林ボランティア活動を行っている「山林ボラン広場」の代表者が知り合いであったことが縁で、「山林ボラン広場」が細越生産森林組合有林の一部を借受け、森づくりを通して都市住民と山村住民の交流の場として『細越の森』づくりを呼びかけることになった。
 村ではその一連の動きを受けて、地元住民と『細越の森』会員との交流を促進することで、森林保全に対する啓発を積極的に進め、地域の活性化を図るため、森林ボランティア活動を推進していくこととなった。

3 取組の概要

 村では森林ボランティア活動に対する支援事業として、平成11年度から「郷土の森林保全活動推進事業」を実施し、森林ボランティア活動の推進を図ることとした。
 1年目の取組として、森林ボランティア活動を進めるうえで必要な約束事「細越の森利用協定書」を森林所有者の細越生産森林組合と森林ボランティア団体の「山林ボラン広場」、村の3者で取り交わした。「森づくりに取組みながら森林が自然サイクルの中に占める意味を体験学習し、森林や林業に対する理解の向上を図る」を趣旨として、@森林所有者の役割=土地の利用、森林整備活動についての承諾 A森林ボランティア団体=森林整備、森林体験等のふれあい活動を通じて、森林や林業に対する関心と理解を深める。B三川村=森林所有者と森林ボランティア団体との調整、ボランティア団体に対する林業機械貸与等の支援という内容である。
 その協定書に基づき、「山林ボラン広場」は『細越の森』づくりと同時に『細越の森』会員の募集により仲間づくりを進め、村では森林施業を効率的に実施するためのチェンソー、刈払い機、ヘルメット等を購入し、ボランティア団体への貸出しを開始した。
 2年目には、『細越の森』だけでなく、放置されている森林もあることから、幅広くボランティア活動の範囲を広げたいというボランティア側の意向で、「森林ボランティア活動に対する意見交換会」を開催し、「山林ボラン広場」の活動紹介やそれに対する地元住民の意見等を発表し合い、下流住民と上流住民の意思疎通を図った。
 この意見交換会を契機として、地元住民との交流機会も増え、公共の場ではあるが、村が管理している「県民の森中ノ沢渓谷森林公園」での草刈り作業もボランティアの協力により実施される等、徐々にではあるが上流と下流の交流の和が地域に広がり始めてきたところである。

ボランティア団体で作成した 間伐材活用の『細越の森』の案内看板

「森林ボランティアに対する意見交換会」

4 取組の成果

「県民の森中ノ沢渓谷森林公園」での草刈り作業後の交流会

5 今後の課題

 地元住民の森林に対する考え方(個人財産)とボランティア側の考え方(森林は水と酸素の供給源である共有財産)での意識の違い、地元住民の外部に対する閉鎖性もあり、地元の受入れ側も大変慎重にならざるを得ないが、今回の経験により、森林ボランティア活動を促進するためには、森林所有者とボランティアを仲立ちする行政側の調整役としての重要性を痛感した。


もどる