区 分:都市住民と山村の交流 |
タイトル: 〜日本酪農の発祥の地で体験活動を〜
地域資源を活用した観光・体験農業への転換 |
都道府県名:千葉県 |
市町村名:丸山町 |
1 地域の概要
丸山町は房総半島の南部に位置し、町域は東西約4.2キロメートル、南北約15.3キロメートルの細長い町で、総面積44.11平方キロメートルのうち約半分が森林で占められている。
町の北部嶺岡山系には県内一の高峰愛宕山があり、この山中から流れる丸山川は町内を縦貫して太平洋に注いでおり、周辺住民の生活や農業経営と密接に結び付いている。
また、南房総特有の温暖な気候により、水稲、酪農、花卉栽培等、農林業を基幹産業として発展してきたが、近年の社会・経済環境の影響から青壮年の都市部への流出が続き、昭和30年の町誕生時の人口が9,300人余りであったのに対し、現在の人口は約5,800人であり過疎化が進行している。 |
2 事業(取組)の背景と経緯
(1)取組の背景
当町の北部に位置する大井地区は、日本酪農発祥の地として古くから酪農を中心とする農業地帯として発展してきたが、近年は農業従事者の高齢化や農産物の輸入自由化の進展に伴い、厳しい経営状況に追い込まれる農家が増加していた。そのような中、東京湾横断道路の開通や地元に建設される「千葉県酪農のさと」のオープンにより、観光客の大幅な増加が見込まれていた。
(2)取組の経緯
地元の嶺岡乳牛試験場敷地内に酪農発祥地としての資料館「千葉県酪農のさと」が開園されるにあたり、農業従事者の育成や地元農林産物の復興を図るため、施設の隣に農林業体験施設を建設し、周辺休耕地を利用した農林業体験学習の拠点を持つ「みねおかいきいき塾」が発足する。 |
3 事業(取組)の概要
農林業体験施設の建設は、町の補助事業である「自ら考え自ら行う地域づくり事業」の助成を受けて平成10年11月に建設された。施設では地元で取れる山菜を使ったうどんやアイスクリームの販売を行うほか、竹炭等の特用林産物や農産物を販売している。また、周辺の竹林や休耕地を賃借し、タケノコ狩りや竹炭の炭焼き等の林業体験も行っており、これに加えて地元の酪農・水稲・果樹・工芸等、多方面に渡る業種を集結した「いきいき体験共和国」が結成され、農業や地域に伝わる食品加工など、体験活動の拠点として活動している。
近年では、施設周囲を取り囲む森林資源を活用し、ツリーハウス施設と提携することで宿泊施設を用意するほか、新たに施設を増設し、間伐材を使った木材加工や竹細工等の体験プログラムを整備するなど、体験活動範囲の拡大を図っている。
この「いきいき体験共和国」は都内大手出版社の一組織である「野外教育・体験活動研究会」との提携が結ばれており、同じく提携を結ぶ近隣市町村で体験活動を実施するグループと組み合わされることで、年間を通じて様々な体験活動メニューを提供している。宿泊を含めたこれらの総合学習が、小・中学生の修学旅行の研修等に役立っている。
体験メニューの一例

南房総ならではの様々な体験活動メニューが用意される。 |
4 事業(取組)の成果(効果)
「いきいき体験共和国」では、「大統領」と称する組織の代表者をはじめ、6人の「担当大臣」、5人の「女性名人」からなるスタッフが体験活動の指導にあたっており、地域に雇用の機会をもたらしているほか、地元農家の主婦や高齢者等が空き時間を有効利用して営業に参加するなど、効率的な人材活用が行われている。
また、直売所施設では地元の農林産物が取引きされ収入の契機が増加したほか、休耕地を有効利用して体験活動の場として提供するなど、町内遊休農地の解消にも一役買っている。
更に、「千葉県酪農のさと」や町の第3セクターが運営する「ローズマリー公園」、「シェイクスピア・カントリー・パーク」等へ訪れる観光客を対象に、従来の農業から観光農業へと転換する農家も増えたことから、このような農家と提携を組むなど、地域全体の活性化にも寄与している。

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5 今後の課題
修学旅行受け入れの増加等により、施設周辺の狭隘な道路の拡幅や、観光バス等の駐車スペース確保等の必要性に迫られている。
また、組員の一部を除き、後継者の確保に苦慮しているため、今後の更なる経営の安定や収益の増収が望まれる。 |