区分:都市住民と山村の交流
タイトル:緑の森の中で多彩な交流体験「魅惑の里」     
都道府県名:広島県 市町村名:吉和村
1 地域の概要

 吉和村は、広島県の西北部に位置し、西は山口県錦町、北は島根県匹見町に接し、「水源の森百選」にも選ばれた県内第二位の高さを誇る冠山(1,399m)のふところに抱かれた緑豊かな村である。総面積は145平方キロメートルで、その94%が森林で占められており、ブナ、トチ、ナラなどの落葉広葉樹の大木と天然の八郎スギが混在する豊富な天然林が残っている。
 村の中央部には百万都市広島の水源になっている太田川水系源流の中津谷川が流れている。
 交通網は、南北に国道、東西に中国自動車道が走っており、広島市から60分と比較的交通の便には恵まれている。
 人口は、昭和40年代には1,700人余りであったが、若者の村離れとあいまって現在では、900人を下回り県下では一番人口の少ない村である。
2 事業(取組)の背景と経緯

 昭和50年代には、四季を通じて変化に富んだ自然の美しさを満喫するため、広島市をはじめとした都市住民が毎年10万人程度村を訪れていた。昭和59年に400ヘクタールの広大な森林の中に運動広場、テニスコート、サイクリングロード、キャンプ場などの施設を完備した県立もみのき森林公園がオープンし、家族連れをはじめとして多くの若者が村を訪れるようになった。しかしながら、これらの来園者は村民との交流はほとんどなく、村の活性化につながっているとは言い難い状況であった。
 こうした背景のなかで、村の活性化を図るべく森の中で「見る」「食べる」「体験する」など多彩な森の遊びをとおして、都市住民と山村の交流ができる滞在型施設として「魅惑の里」を整備することとなった。

3 事業(取組)の概要

 都市との交流・連携を進めるために、「魅惑の里」では30ヘクタールの森の中に野外施設として、林間広場、オートキャンプ場、ハーブガーデン、渓流釣り場を配し、建物はバーベキューハウス、レストラン、温泉館、ケビン、林産物展示施設、ギャラリー、木工陶芸館、音楽ホールが整備されている。これらは子供からお年寄りまで、家族連れやグループで思い思いのアウトドアライフを楽しむことができる施設である。
 特に木工陶芸館では、「見る」「触れる」「学ぶ」「遊ぶ」の手作り体験ができ、地元スタッフによる指導で、吉和村の主要産業である林業の間伐材を利用して、いろいろな製品づくりにチャレンジしている。
 また、都市と山村の交流の一環として、創作の館に若い芸術家(絵画、書、彫刻など)が2年間滞在して創作活動に取り組んでおり、ギャラリーで作品の発表も行っている。
 このほか、「魅惑の里」を拠点に広島市在住の森林インストラクターが、吉和村全域をフィールドとして、都市山村青少年自然体験交流、青少年育成団体の指導者研修、地元小中学校の「総合的学習」などを実施し、都市と山村の交流を図っている。

ツリーハウス作りを体験した子供達

林間広場と関連施設

4 事業(取組)の成果(効果)

 「魅惑の里」は、平成6年のオープン以来、年間約6万人の人々が訪れている。特にこの施設の特色として一般公募による女性交流スタッフ(1年間)が、ハーブガーデンの管理、各種ハーブを材料にしたアイスクリーム、ハーブクッキー、ハーブせんべいなどの「魅惑の里」独自の特産品製造に携わるとともに、年間を通じたイベント(30回)のスタッフとして、来園の人々との交流を図っている。
 また、林産物販売施設では、地元の林業家が間伐材を利用して表札、花台、ラックなどを製作販売し、「木の良さ」をPRしている。さらに施設内で栽培している原木マイタケの販売なども行っており、特色ある施設運営が来園者に理解されつつある。
 施設の管理は、第3セクターに委託し行っているが、経営状態も良好で、18名の雇用を生み出すなど、村の活性化に大きく寄与している。
5 今後の課題

 吉和村には、春の山菜取り、夏の渓流釣り、秋の紅葉狩り、冬のスキーと四季を通じて約40万人の来村者があるが、「魅惑の里」については、まだまだ訪れる人は少ない。
 今後は特色あるイベントの検討を行うとともに、宿泊施設を充実させることにより、入込み客の増加を図る必要がある。


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