区  分:都市と山村の交流
タイトル:学校の裏山で大冒険! 〜学校教育での森林の活用〜
都道府県:新潟県 市町村名:上越市(市立飯小学校)
1 地域の概要

 上越市は、その総面積のうちの45.6%である11,371haが森林となっており、おもに市の西部(名立町境)南部(新井市境)に存在している。
 交通は、市の北部に国道8号線と、中央に国道18号がのびており、北陸自動車道と上信越自動車道が交差する要所である。鉄道もJR北陸本線・信越線が乗り入れ、新潟県第3の都市となっている。
 上越市飯小学校は、金谷山・春日山を擁する市西部丘陵山麓の自然環境に恵まれた地域に位置している。全校生徒395名、近年宅地造成が進み新興住宅地が付近に出来たことから生徒数は増加傾向にあり、校区の住民は多様化している。 しかし、学校教育に対する関心は高く協力的であり学校に大きな期待を寄せている。
2 事業(取組)の背景と経緯

(1)事業(取組)の背景
 住民は地域内の「観音池」を昔から大切にしてきている。近くの観音堂(宝陀羅神社)には、市指定文化財の千手観音坐像が安置されている。ちょうど学校の裏手にある観音池は夏にハスの花が咲き美しい。しかし、それを囲むように存在する手入れされていないスギ林が池の景観を損ねていた。林内はハチや枯れ枝が多く容易に立ち入れない状態で、粗大ゴミも多く投棄されているため、学校ではスギ林への立ち入りを禁止していた。また森林の荒廃は地域の人々との関係も分断されていた。
(2)事業(取組)の経緯
 学校の裏にあるスギ林は、平均50年生以上であるが手入れが悪いことから、要間伐林を調査していた林業事務所Agの目にとまることになった。町内会長に聞き取り調査をしたところ不在地主であった。そこで、森林の手入れをすることによって環境学習の場として活用することができると学校に提案した。学校側も今後環境教育を総合学習の一環として取り組み始めたいと考えており、森林整備を実施することにした。

3 事業(取組)の概要

<所有者の承諾> 森林の所有者を上越市に調べてもらったところスギ林の所有は市外の寺であった。事情を説明し、森林整備を実施すること・学習の場所として使用することについて快諾していただいた。実施の内容については一任されている。
<13年4月12日> 森林環境教育を行うにあたり、教師が森林を知ることから始める必要があるため、環境教育に詳しい上越教育大学の濁川助教授をまねき、教師に対しての研修を学校で行った。また、事務所からは人工林の保育体系、手入れの仕方を指導した。
<13年4月21日> 親子奉仕活動の一環として、裏山の森林整備を3・4年生とその保護者総 勢120名で実施。@ゴミの片付け班A歩道開設整備班B枝払い、伐採班C伐採材の搬出班、林内整理班の4つの班にわけ、約1時間半にわたり作業を行った。荒れたスギ林がよみがえり、枝の一つも落ちていないきれいな林になった。事務所・森林組合は、チェーンソーでの伐倒・玉切り、高枝打ちなどの実演と指導を行った。
<13年6月12日> 3年生に対し、森林内での学習の講師としての依頼があり、森林の話や環境の話をし、森林の重要性を教えた。
<13年6月16日> 4月と同様に、6年生と保護者約100名で、@森林の整備班A道の階段作り班B間伐材ベンチ作成班C危険箇所ロープ張班などに別れ、2時間半程度作業に汗を流した。
<13年6月21日> 学校の児童会で、整備された裏山を「ドリームパーク飯」と命名し、森開きを開催。林業事務所も招待された。手書きの招待状には、「森がきれいになってみんな喜んでいます」と書かれており、非常にうれしいものであった。
<13年9月> 3年生に対する木工教室を開催し、スギ丸太やケヤキ丸太の切断を体験してもらった。切った円盤は文化祭へ出品するクラフト材料にする。このあとも、10月に5年生と保護者の森林整備活動に対する手伝いが予定されており、総合学習に向けて、森林をフィールドとした学習計画が立案されてきている。

4 事業(取組)の成果(効果)

<学校> 身近な自然(スギ林)で体験できるフィールドができたことで、児童に森林・環境・林業について教えたり、感じてもらう機会が増えた。実際、理科の授業以外にも社会や 図工などの際に活用している。休み時間には児童が森林内で楽しそうに遊ぶ姿がみられる。
<地域> 学校の森林整備作業の際には住民も参加し、観音池の周りの整備を行っている。また、地域住民で観音堂の周りの整備が行われ、歩道の整備や近くのスギ林の間伐・枝打ち(森林林業教育が間接的に間伐推進につながった珍しいケース)が行われるなど、学校の森林整備活動に影響され地域全体の森林も一体となってレベルアップしており、学校の森林整備活動が波紋を広げているようである。 また、こうした活動には、地域の人々の専門知識も生かされており、新たな人材の発掘にもつながっている。
5 今後の課題

 現在は総合学習への試行段階で、学校側も林業事務所側も手探りの状態であるため、両者の関わりも高い。しかし、総合学習のテーマに森林や環境を選ぶ小学校は他にも存在することから、理想的な形としては簡単な森林の学習や体験程度なら教師が独自に実施できるようになってもらうことが必要である。また、地域の森林組合や森林管理署などの組織も同様に総合学習へ協力していくような体制も構築していかなければならない。


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