区分:都市と山村の交流
タイトル:清流と緑の自然公園の村づくり    
都道府県名:佐賀県 市町村名:七山村
1 地域の概要

 七山村は佐賀県の北西部に位置し、総面積は63km2で、その73%が森林で占められている緑豊かな山村である。村内には、この森林から湧き出るせせらぎによって多くの沢が形成され、村中央部で合流し玉島川となって唐津湾(玄界灘)に注いでいる。
 村の中央部を東西に国道323号線が横断しており、自動車の交通の便を見ると、県庁所在地の佐賀市まで50分、唐津市までは30分、100万都市である福岡市へは1時間10分の距離と山村でありながら距離的には都市圏から近い環境にある。
 村の人口は、戦前の社会情勢が安定していた昭和初期の4千人台から、昭和30年の5,231人(840世帯)をピークにその後減少を続け、平成7年には3,000人を割り、現在では2,803人となっている。
2 事業の背景と経緯

(1) 事業(取組)の背景
 村の主な産業は、林業であり農業であったことから、過疎化、高齢化が進行し人口がピーク時の約6割以下になった。一方で、豊かな自然や農林産物があること。加えて地理的にも福岡市や佐賀市から近いことなどから、村の活性化のため自然と資源を活かした村づくりに10数年前から取り組んでいる。
(2) 事業(取組)の経緯
 村の人口の減少対策として、外部からの人を呼び込み、見てもらい、知ってもらうことにより七山村ファンを増やし、村民の交流の輪(七山村ネットワーク)を強く太く広げていく取組を推進してきている。このため「清流と緑の自然公園の村づくり」をテーマに、村の自然と風土が作り上げてきた文化と資源を最大限に生かした、農産物直売所の設置、各種イベントの開催、都市住民との交流施設の整備などを行ってきた。

 3 事業(取組)の概要

(1)特産品展示販売所「鳴神の庄」
 七山を語る上で今や欠かせない存在となった感のある特産品展示即売所「鳴神の庄」を昭和61年にオープン、村外からの入れ込み客をねらって七山村の新鮮な野菜、果物、わさび漬けなどの加工特産品等を1つ1つに生産者の名前を付けて販売する戦略を展開した。その結果、新鮮な野菜が安く買えるということが口コミで伝わり、佐賀都市圏はもとより福岡都市圏からも多数訪れるようになり今では、年間30万にのぼる集客力を持つ施設となった。この「鳴神の庄」の買い物客は、観光面への波及効果も大きく、各種イベントや自然を生かした「グリーンツーリズム」のための施設が順次整えられていった。
(2)グリーンツーリズム施設
 村内を流れる滝川川の上流には「観音の滝」があり、その上流には九州の尾瀬といわれサギ草で有名な「樫原湿原」などの県外にも知られた有数の観光資源を持っている。
 平成7年から10「観音の滝」周辺を公園として整備。また、平成7年に七つの木橋と散策道を配した「セブンブリッジロード」の整備や滞在型観光農園施設「おいでな菜園」の開園、平成8年に交流キャンプ施設「ロフティー七山」の開設など山村の自然と資源を活かした交流のための施設等を整備した。
(3)にぎわいをもたらすイベント
 以上のような、観光資源と施設を有機的に結びつけて「にぎわいをもたらす」来訪者と村民の交流を通した活性化の試みがなされている。
 「観音の滝」と滝川川を活用した「国際渓流滝登りinななやま」や「ニジマス釣り大会」、森林を活用した「親林交流隊活動」、樫原湿原を活用した「樫原まつり」、「七山村産業祭」の開催など各種イベントを通して都市との交流の輪を広げている。

鳴神の庄

親林交流隊活動
4 事業(取組)の成果(効果)

 こうしたイベントや施設の整備により、七山村には数多くの人々が訪れるようになった。例えば、特産物展示販売所「鳴神の庄」は年間30万人を超える入り込み客が見られ、農山村の地域づくりの先進的な取り組み事例として紹介されている。そのほかにも、整備された村内の観光スポットに観光客を誘引することにより年間50万人が村外から訪れるようになった。
 また、村外から居住に関する問い合わせも見られるようになるなど、村のイメージは確実に高まっている。
 なお、地場の産業である農林業については、七山村の土地柄を生かした農産物や林産物の生産が「鳴神の庄」で直接販売するということで活性化され、新たに施設園芸もはじまるなど確実に進展している。農業所得は、県平均の127%の水準に達し農山村振興のモデルとして脚光を浴びることになった。
5 今後の課題

 都市との交流による村の活性化はこの十年で大きく進展した。平成13年度から第三次七山村総合計画では「村に伝わる文化資源を生かした産業おこしとにぎわいづくり」を大きなテーマとして実行されている。この中で、先の来訪者を「にぎわいをもたらす人口」として積極的にとらえて「居住+にぎわい」で4千人規模の村民人口の獲得を目指こととしている。今後Iターンなど都市地域からの定住者の促進のための施設等の整備とともに村内で働く場の提供を図っていくことが課題である。


もどる