V 森林の整備・保全と国際貢献

1 地球温暖化防止に向けた動き

○ 森林による二酸化炭素吸収目標3.9%の達成にむけ、「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」の着実な実行が必要である。このため、森林の整備・保全の重点的な実施や労働力の確保・育成、吸収量の報告・検証体制の整備、木材の新しい流通加工システムの推進、国民参加の森林づくりの推進等を実施している。

○ しかし、現状の森林整備量では目標の3.9%を大きく下回るおそれがあり、温暖化対策税が導入された場合の活用を含めた財源の確保により、森林整備のさらなる推進が重要である。

○ 平成15年12月に内閣府が行った世論調査では、地球温暖化防止のための森林整備に対する費用負担について、「国民全体で負担する」とするものが41%、「排出割合に応じて企業や国民が負担する」とするものが40%であり、費用負担への一定の理解が見られる。

○ 日本学術会議の答申において、民間研究所が森林の多面的機能を定量評価した結果によると、二酸化炭素吸収機能は年間1兆2千億円である。


2 我が国の森林整備・保全の動き

○ 我が国の人工林蓄積は、各地域で増加している。間伐等の適切な手入れが必要な45年生以下の森林は人工林面積の8割を占め、中には過密化し、土砂の流出等の公益的機能が著しく低下した森林がみられる。

○ このため、緊急間伐5カ年対策により、年間30万haの間伐を実施している。また、造林や保育だけでなく、森林の保全に係わる主要施策である治山事業を併せて推進することが重要であり、「森林整備保全事業計画」を策定する予定である。森林面積の4割を占める保安林では、指定目的を果たすことのできる恒久的な整備対策が必要である。さらに、上下流の連携が盛んになる中で、地方では独自課税を導入する動きがみられる。

○ こうした森林の整備・保全を適切に進めるに当たって、森林に関する情報を整備する必要があり、森林GISの導入や二酸化炭素吸収の観測等を行っている。


図V−1 地球温暖化防止のための森林整備の費用負担はどうあるべきか

資料:内閣府「森林と生活に関する世論調査」(平成15年12月調査)
注:回答は複数回答可

表V−1 森林の有する多面的機能の貨幣評価

図V−2 地域別人工林蓄積の推移


○ 里山林等の身近な森林は森林環境教育の場だけでなく、療養・福祉面からも注目されており、多様な森林利用を通じて整備を進めることが重要である。また、花粉発生量の多いスギの抜き伐りや花粉の少ないスギの供給を進めるなどの花粉症対策を推進している。

○ 近年横這いで推移している松くい虫の被害量は、東北地域では全国の2割まで拡大した。被害状況の監視や的確な防除等が重要である。また、鳥獣による被害は農林業にとって深刻な問題であり、防護柵の設置と併せ、広葉樹林の造成等といった総合的な対策を実施している。


3 ボランティアによる森林づくりのひろがり

○ 森林ボランティア団体は、平成15年には1,165となり、平成9年の約4倍に増加した。これらの活動は、伐採技術を要する間伐、松くい虫の被害防止や、林野火災跡地の復旧等さまざまなものに拡大している。漁業関係者による森林整備も全国的に展開されている。

○ 安全性の確保や、林業技術を持った指導者の育成等が課題である。行政も森林ボランティア活動が広がるよう支援のあり方についての検討が必要である。国民参加の森林づくりを推進していくためには、森林環境教育におけるボランティア活動の推進等も重要である。


4 森林の多面的機能の持続的発揮に向けた世界の動き

○ 「持続可能な森林経営」の状況を把握・評価するための基準・指標の作成が世界的に進展している。我が国は、平成15年に、モントリオールプロセスに基づく森林の状況を公表した。

○ 世界有数の木材輸入国である我が国は、平成15年、インドネシアとの間で違法伐採問題に取り組むべく、両国間の協力を促進することを確認した「共同発表」及び、「アクションプラン」を策定し、公表した。

○ 森林認証・ラベリングが世界的に進展している。我が国でも、平成15年6月に発足した「緑の循環認証会議」(SGEC)が、人工林率の高さや小規模零細な所有形態を踏まえた独自の森林認証制度を創設した。

○ 我が国は、地球温暖化防止のために新規植林・再植林に取り組むクリーン開発メカニズム(CDM)植林について、気候変動枠組条約第9回締約国会合(COP9)で合意されたルールに基づき、積極的に支援を行っている。

図V−3 全国の松くい虫被害量と東北地方の占める割合
図V−4 森林ボランティア団体数の変化

表V−2 地域通貨で森林吸収源買取制度(事例)

平成15年8月、地球温暖化を防止する森林ボランティア活動を支援するため、大分県は森林ボランティア団体の森林づくり(植栽・下刈り)活動に対し、活動内容に応じた二酸化炭素吸量を計算し、その評価額に応じた金額を「緑のボランティア支援券」として支払う制度を創設した。支払われた支援券は県内の森林組合で金券として苗木や作業用具を購入できる。

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