森林の多様な機能の持続的な発揮を図る観点からの山村の
活性化方策と集落整備に関する検討会報告の概要

平成13年12月14日
林    野    庁

T 検討会の趣旨と経緯

 山村を取り巻く状況は、人口の減少や高齢化の進行とともに、主要な産業である林業の採算性の悪化等から森林所有者の林業生産活動意欲が減退し、管理の不十分な森林が増加するなど、山村地域の森林が果たしてきた国土の保全、清浄な水や空気の提供等多様な機能の発揮に支障が生じることが懸念。
 このため、各方面の有識者からなる林野庁長官の私的検討会として、本年4月から7回にわたり、新たな森林・林業政策の展開方向を踏まえつつ、森林の多様な機能の持続的な発揮を図る観点から将来的な山村の果たすべき役割や今後の山村の活性化方策について検討。

U 検討結果の要旨

1 山村振興の意義と必要性

(1) 山村が担ってきた役割

 山村は少ない人口で広大な地域を管理し、木材等林産物の安定的な供給、安全で快適な国土の形成等に寄与するなど、20世紀における我が国経済・社会の発展を様々な面から支えてきた。

(2) 森林整備の現状と山村振興の必要性

 これまで山村振興については、昭和40年の山村振興法の制定以来、35年にわたり、都市との格差是正を目的に生活環境及び産業基盤の整備を推進。
しかしながら、依然として人口の減少・高齢化の進行に加え、主要産業である林業の収益性の悪化等から手入れの不十分な森林の増加が懸念される状況。
 一方、21世紀に入り、国民の価値観が多様化する中で、森林・山村に対する国民の期待は、これまでの役割に加え、森林環境教育や様々な体験活動の場、野生動植物の生息の場、二酸化炭素の吸収・固定の場などの期待が高まっており、これら機能を発揮させる上で、森林の整備とその活動拠点となる山村の振興は重要な課題。
 今後の山村振興のあり方を考える場合、こうした山村の果たしている役割について都市住民等の理解を深めるとともに、都市住民等の外部の人達との開放的な交流の中で、多様な価値観を反映した地域振興を進めることが重要。
 このため、次のような視点からの取組が必要。

2 地域資源を活かした多様な産業の育成

(1) 森林に根ざした「森(もり)業」を核とする多様な活動の展開

 山村の豊富な森林資源を活かした「森(もり)業」の育成など地域資源を活かした多様な就業機会の創出とともに、森林整備とともに、特用林産物の生産・加工や農業等他産業を担う複合事業体(「山(やま)業」)の育成による就業の安定的確保が必要。

(2) 都市住民等の理解と協力による地域産業の振興

 山村で営まれている農業や林業は、国土保全を図る上で重要な役割を果たしており、その負担等について下流の都市住民等の理解を深めることが重要。このため、「地産地消」や都市住民等の理解と協力による産業振興の取組が必要。

3 魅力あふれる山村社会の構築

(1) 資源循環型社会モデルとしての山村

 山村に豊富な木質バイオマス資源を活用した先進的なモデルとしての資源循環型社会を創設し、新たな就業機会の確保、都市との共生関係の構築に向けた積極的な取組を推進。

(2) 新たなライフスタイル実現の場としての山村

i  将来の山村を支える若者等の定住拠点集落の整備

 利便性に優れた中心集落及びその周辺へのUターン者等の定住拠点の整備や活用が可能な空き家等の利用を進め、UJIターン者等の積極的な受入体制を整備。また、地域の実情に応じた計画的な集落機能の再編・強化が必要。

ii  Iターン者等と地域住民との交流

 Iターン者等が地域に溶け込みやすくするため、地元住民との交流活動の実施や管理放棄された森林等の斡旋による地域との主体的な結びつきを強化。

(3) 自然と人との共生の場としての山村

i  体験型ツーリズム、森林環境教育等の推進体制の整備

 都市住民との交流促進を図るため、地域の自然や文化を案内できる人材の養成、プログラムの開発、情報提供等森林・山村体験型ツーリズムの推進体制の整備。ワーキングホリデーの推進。

ii  医療・福祉産業との連携による森林空間の新たな活用

 自然や森林の中での運動療法、森林浴等による自然治癒力を最大限活用する医療、福祉産業との連携方策の検討が必要。

iii  都市住民との共生・対流の促進による地域活動の推進

 都市住民と一体となった山村の魅力を最大限発揮する取組の推進。例えば、山村固有の自然、生活文化等を博物館に見立てた「村まるごとミュージアム」のような取組の推進。


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